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アニメの作画を語ろう
animator interview
ガイナックス若手アニメーター紹介(2)



PROFILE


錦織敦史(NISHIGORI ATSUSHI)

1978年9月14日生まれ。鳥取県出身。血液型B型。東映アニメーション研究所を経て、ガイナックスへ。初原画が『まほろまてぃっく automatic Maiden』の1話。その後、『アベノ橋魔法☆商店街』に参加。『ぷちぷり*ユーシィ』7話で初作画監督を経験。
―― 錦織さんも最近、版権で名前を見る機会が増えましたよね。
錦織 版権はわりと好きというか。なんでしょうか、やっぱりアニメーターは原画がメインだと思っているんですけど。アニメーターをやってると画のフォルムとか、そういうものに関する考え方が淡泊になっていくんで、そういう中で版権をやる事によって突き詰めて考えられる、というか。
平松 真面目だ。
今石 真面目だなあ。
錦織 あれ、真面目ですか? やばい、俺はこんなキャラじゃない。尻が大好きとか言わないといけないか(笑)。
平松 いや、それは後にとっておくとして(笑)。
―― 錦織さんは、最初からガイナックスなんですか?
錦織 そうですね。専門学校を3ヶ月くらいで出て、そのまんまガイナに入れてもらった感じなんです。冷やかし半分で試験を受けたので、1次を受かった時点で「やった。これでちょっと自慢できる。もういいや」と思ったんだけど。なんかあれよあれよという間に……。
佐藤(てんちょ) で、これが平松さんがご指定された版権です(と言いつつ、版権をとり出す)。
錦織 こんな古いの持ち出すなんて(笑)。
平松 これを見た時はちょっと衝撃だったよね。
錦織 平松さんは、しばらく「うーん……」という顔で見てましたよね。
平松 それで、また別の画で「おおっ!」と(と言いつつ、別の版権[Newtype2002年5月号]を取り出す)。
錦織 ……まあ、よくも悪くも俺らしいなと思って描いた1枚じゃないですかね。
平松 やるじゃん。
今石 色の感覚とか面白いよね。
錦織 そうですね。最初、こういう配色が怖かったんでノーマルでやろうかなと思ってたんですけど。それを鶴巻さんが、やってみろと後押ししてくれたというか。
今石 鶴巻さんは、昔『セイバーマリオネット(R)』で、似たような色遣いやってたんだよね。
―― では、平松さんから紹介を。
平松 最初はわりと地味な人かなと思っていたんだけど、喋っているうちにアニメ好きというか、作画好きなのが分かってきたというか。
錦織 ……うーん、やっぱり今石さんみたいに作画アニメを見てきた人間じゃないんですよ。わりとキャラクターが好きで、元々『ナディア』の本田さんとか、『ああっ女神さまっ』の松原(秀典)さんの画が好きで入ってきたんで。版権が好きっていうのもその辺の人の影響があるんです。でも仕事を始めてみると、動かすのも面白くて、最近はかなりそっちの方に興味がいっています。
―― 今石さんはどうですか。
今石 錦織とは『アベノ』ではじめて組んだんだよね。新人の中でいちばんインテリというと大袈裟だけど、考えて描くタイプかな。
―― 感覚で描くタイプではないんですね。
錦織 それが僕にとってはコンプレックスでもあるんですけどね。本能みたいなもので描いてる人にはかなわねえなあというのが、やっぱりあって。
―― 本能で描いている人って言うと、誰なんですか。
錦織 アニメ界的に言うとやっぱり、大平(晋也)さんとか、磯(光雄)さんとか。ビデオでコマ送りした時に、その気持ちよさが分かっても、自分が描く時にそれを再生できないというか、紙に焼き付けられないというか。やっぱり理屈で描いちゃう感じがあるんですよ。なんか本能的に描けるようになりたいなと思いますよ。
―― 平松さんからすると、錦織さんはどうですか。
平松 彼は結構話しかけてくれるんですよ。若い人だと、こっちが最初どう話せばいいかなって緊張する事が多いんだけど、まあ、わりとこの子は話しやすいなあという感じで。
―― そのあたり、てんちょさんはどうですか。 
佐藤 若い人って、生返事系とちゃんとリアクションできる系に分かれてくるよね。やっぱりリアクションが少ないとコミュニケーションがどんどんとれなくなってくる……。普通はコミュニケーションがとれないと、どんどんしんどなってくるよな。
平松 彼は仕事に関するリアクションもあるし、作品の感想もちゃんと話してくれるしね。
錦織 やっぱりある程度信頼関係みたいなものは、アニメでも必要だと思うんですよ。原画にしても……なんか俺、真面目? こんなキャラじゃない?
―― いや、真面目でいいと思います(笑)。
錦織 やっぱり信頼してもらってなんぼだと思うんで。やっぱり作監さんや演出さんに気持ちよく仕事してもらいたいというか。集団作業でありながら、アニメって机の上だけで全てが完結してしまう感じがあると思うんで。その辺のコミュニケーションとか、仕事内容とかもうちょっと話せる環境にしたいなというのがあって、わりと僕は平松さんとか、今石さんとか、高村さんとなるべく仲よくなりたいと思って喋ってるんです。フランクに喋っているようでも、実は結構距離感を大切にしてはいるんですけど。
平松 時々思うよね。「あ、気を遣ってるな、こいつ」って。
今石 自然なフランクじゃなくて、設定されたフランク(笑)。
平松 唐突に「こないだのアレはよかったですよ」とか言い始めたりして、「あれ?」と思ったり。
錦織 (笑)ぎこちない親父と子供の会話みたいな。
平松 それを言わせるために、最近では彼が仕事をしている後ろに立つようになった。
錦織 それを楽しみに(笑)。
今石 それはかなりイジワルな。
平松 ガイナの中では僕は、そういう意地悪おじさんですから。
錦織 全然作画の話にならなくてすいません。
―― 「俺はこういうの描きたいぜ」みたいな方向で行きましょう。
錦織 今の時代の流行りとしては、なんかリアル方向に行っている感じがあると思うんですよね。それはそれでアニメの可能性としていいと思うんですけど、もうちょっとなんか漫画的な部分を残したのをやっていきたいと思ってて。動きもぬめぬめよりはパカパカしている方が好きだし。そうですね、うーん。
平松 美少女好きだよね。
錦織 はい?
平松 美少女好きだよね。
錦織 えーと、はい。
平松 凄いまじめな顔で「はい」と言ってる(笑)。
錦織 それはあまり否定する事ではないと思うので。
平松 彼は、よく「漫画リアル」という言葉を口にするんだよね。
錦織 それは平松さんの刷り込みです。平松さんの目指す方向が「漫画リアル」だと……。
平松 そうなの。俺、その言葉知らんかったので。そういうカテゴリがあるっていうのは、彼が言ってくれて、初めて知った。
―― 漫画っぽい画なんだけど、芝居でリアルを感じさせる、という事ですね。
錦織 そうなんですよ。マンガ画でも、ポイントポイントでハッとさせる動きとか画が入ってるって事です。平松さんの場合は、画が立体というよりは漫画的にべたっとしているんだけど、レイアウトがリアルだからリアルに、映画的に見られるんだと思うんです。そういうのを自分なりに作りたいなって。平松さんは平松さんなんで、やっぱり僕は平松さんにはなれない。自分なりの画の描き方っていうのを考えていきたいな、と。
―― なんだかインタビューらしい話になってきましたね。
平松 うん。
錦織 あ、そうなんですか。
今石 やっぱり凄いインテリかもしれない。
―― インテリですよね。
佐藤 昨日から予習してたんやろ。
錦織 いや、そんな事はないです。その場のノリで言っているんで、明日になると忘れてます(笑)。
―― 錦織さんの印象的な仕事というと?
平松 『アベノ』の1話だと。久保田君の後。
錦織 雅ジイが落ちるあたりですね。アルミとサッシがアオリで走ってくるところからアルミの回転TB(トラック・バック)で最後倒れてくるまでが、担当しているところです。
平松 彼の場合、どうしてもロジカルなところがあるので、自分としては、ロジカルから、いかに抜けさせて感覚を引っ張り出すか。そういう感じで1話を振ってみました。
今石 3話は、アベノエンジェルがポーズとるところ。あの辺は、こいつは美少女好きだからカッコイイの描くかなーと(笑)。
佐藤 でも、錦織君は「美少女得意」という印象を払拭させたいんじゃないの。
錦織 どうですかね。でも、ほんとに女の子を女の子らしく描くっていうのは高村さんなんかにはかなわないと思ったんで、もうちょっと何か違う抜け道というか、ポップな方向とかに行きたいなと思っています。
―― ポップ?
錦織 本田さんの『ナディア』とか、『女神(ああっ女神さまっ)』の版権とか。『女神』はポップじゃないかもしれないけれど、本田さんの描いたやつは『女神』の中ではポップですよね。情報量的にはやっぱあのぐらいがベストですね。見て「はっ」とするものが版権だと、俺なんかは思ってるんで、見て流しちゃうような画はあまり描きたくない。まあ、画力はともかくとして、描く時にそう考えたりして。いかに目立つかみたいな感じなんですよ。
―― なるほど。
錦織 一個一個のフォルムがしっかりしてれば影の量が少なくても華やかに見えるし、かと言って少なすぎると情報量も少なくなって、見た目が物足りない。その辺の足し引きっていうのは結構考えたいなと思ってやってるんですけど。
今石 考えた上で、何を描くのかが見たいね。
錦織 ある程度、画力的な劣等感があるので、技法でなんとかしたいという方向に行っちゃうんですね。いけないとは思いつつも。
平松 ゴリ(錦織)君は、そういうロジカルなところを持ちながら、感覚的なところをすっと筆に定着できるような原画マンになれたら最高だなと思います。
―― 今石さんから最後に一言。
今石 そうですね。頭いいから、ほっといてもいいや、っていうのはあるんですけどね。自分で考えてやる人間だから。
錦織 そうですね。自分の道は自分で切り開く。あんま他人におんぶで抱っこは嫌だな、と。
今石 キター!(笑) そういう人間だから場を与えるだけでいいかな。後は考えてくれと。
錦織 やっぱ上に色んなタイプの巧い人とか、仕事のベクトルとして好きな仕事の仕方をしてる人がたくさんいるので、この会社にいていいなというのは、多々感じますね。他の会社にも多分、巧い人はたくさんいると思うんですよ。でも、やっぱりうちの……あ、止めときましょう。
一同 (笑)。
錦織 これ言うと会社自慢みたいになってしまう。ああ、そうだ。僕のインタビューは、載せる時に、全部語尾に「にょ」をつけといて下さい(笑)。
一同 (笑)。
―― 次の柴田さんの取材にも、錦織さんに同席してもらいましょう。


PROFILE


柴田由香(SHIBATA YUKA)

1979年11月3日生まれ。山形県出身。マルチメディア・アート学園卒。テレコム・アニメーションフィルムを経てガイナックスに。血液型AB型。初原画は『まほろまてぃっく automatic Maiden』の1話。同作品のエンディングアニメーションも担当。最近では絵コンテ・演出・作画監督を務めた『シスター・プリンセス 〜リピュア〜』6話Bパートが評判となった。
―― 平松さん、取材前に言っていた「やばかった」という話からお願いします。
今石 ああ、衝撃の版権ですね。
平松 その前に、彼女が募集の時に持ってきたファイルも結構やばかった。
柴田 (笑)。
今石 その時点で結構やばかった。巧すぎてやばかったんですね。
佐藤 これがその版権ですね(アニメージュ2002年2月号)。
柴田 これが最初に描いた版権でしたっけ?
佐藤 これとカレンダーがほぼ同時期だね。
平松 募集の時に持ってきたファイルを見た時も、これを見た時も、僕が自分が描きたい画と同じ方向の人だと思った。で、なおかつそれをサクッとやっちゃってる。
柴田 いえ、そんな……。
―― 今石さんはどうですか。
今石 彼女は、最初から巧いですよ。敵わんですよ。
―― 柴田さんは、最初からガイナなんですか。
柴田 テレコム・アニメーションフィルムに動画で1年半いたんですけど。
平松 そこでもう俺的にやばい。テレコム出身というだけで、もう敵わない気がする(笑)。
今石 テレコムっていうと、名門って気がしますよね。
―― 柴田さんは、なぜアニメーターになりたいと思ったの。
平松 それは俺も聞いた事がないな。
錦織 俺もないな。
柴田 そうですね。見られる時間に放映しているアニメはほとんど見てたんですけど。そんなにマニアックに入りこんで見てたわけではないんです。
佐藤 コマ送りとはかしてない?
平松 そういう国の人ではなかったのね。
柴田 そうですね。
平松 どんなアニメが好きでしたか。
柴田 なんでも好きだった。そういう意味では幅が広かったのかもしれないけれど、劣等感もあるんです。やっぱりコマ送りとかしてみたり、昔から動きをつけて描いてきたわけじゃなかったんで。実際に、やってみて面白さが分かってきたという感じです。
平松 ファンとして見てる間は、動きを見るとか、キャラを見るとか。かっこいいお兄さん萌え〜、みたいな感じだったのか。
佐藤 声優が好きだったとか。
柴田 そういうピンポイントではなくて。
平松 作品自体が好きだったのね。
柴田 そうですね。
今石 普通のアニメファンだったんだ。正常なんですね。
佐藤 アニメ清純派という事で。
―― 今までで、一番異様なキャラクターですね(笑)。
一同 (笑)。
―― ガイナにこようと思ったのは、どういう?
柴田 これはまだ言った事がなかったんですが、元々貞本さんの画とかが好きだったんです。それでちょっと興味を持ってテレコムに行ったんです。
―― 貞本さんがきっかけでテレコム受けてるわけ?
柴田 うん。それもないとは言えないと。
佐藤 貞本さんが描く『ナディア』とかが好きだったの。
柴田 『ナディア』とか好きですね。専門学校時代に、大塚康生さんが講師できて下さった事があって、貞本さんいた頃のテレコム研修生の作品のビデオを。
―― あれですね。キャラクターが走るアニメ。
今石 伝説のあれですね。
柴田 それを見せられまして。こんな濃い事をやる会社なんだと思って、興味を持ってテレコムの試験を受けたんです。
―― その後にガイナにきたのは、貞本さんがいたから?
柴田 それもそうですけど、平松さんの仕事もやっぱり好きな方向性だったから。
平松 !!
今石 ああ〜。
錦織 平松さん、ほんとに嬉しそう(笑)。
―― 照れ照れですね。
平松 いや〜(照れ)。
佐藤 もう真っ赤っかになってるね。
平松 あ〜、そういう事を言われるの苦手だから(照れ)。……はいはい、どうぞ、先を続けてください。
柴田 それとガイナックスは、やってる作品がやっぱり素直に見てて面白いかなって。
―― 『カレカノ』とか。
柴田 そうですね。
今石 あれ素直に面白いかな?
柴田 面白いです。
―― いや、きっと彼女が言っているのは劇メーションの事ではないよ。
柴田 平松さんとか貞本さんとかの画の雰囲気が好きなんですけど、でも、実際やってみて、いちばん面白かったのは、やっばり今石さんの回だったりするんです。
今石 おっ!
―― 急に振られて。今石さんが、びっくりしています!
一同 (笑)。
今石 「ありえねー」とか思った。
―― 照れてます。
柴田 (今石さんの仕事って)自分の中にない面白さがあって。
平松 うんうん。
錦織 (彼女は)なんでもやりたがりだよね。全て自分のものにしようとする。そういうところが俺は怖い! 最初は分野的に違うから大丈夫かなと思ったんだけど、だんだんこっちにきて、あ、おっかねえ。くるなよ! みたいな(笑)。
佐藤 こっちって何?
―― ギャル萌えですか。
錦織 そういうのも平気で描きますから。
今石 そう。そういうのあっさり描くのが凄い。
錦織 しかもさわやかに描く。俺がやるとちょっとくどくなる。
一同 (笑)。
平松 彼女は最初に原画として名前が出た仕事が『まほろ』のエンディングなんですよ。
―― あれは、いい感じでしたね。
佐藤 山賀さんがエンディングを1人に任せたいと言い出したので、柴田君なら適任かな、と思って平松さんに相談したら「彼女なら、もうできるからすぐやらそう」という事で。
平松 可愛いタイプの内容だったからね。
佐藤 一応、山賀さんがコンテで振りつけを描いて、これでやりなさいと。あとは全部お任せ。
平松 男が描くと、チビキャラでもちょっと違うものになったかな。
今石 違いますね。もうちょい濃いものが入っちゃう。
平松 ほんわか爽やかという感じがよかった。
佐藤 山賀さんに内緒で、彼女に任せることにを決めちゃってですね。「この子でやりますから」と言ったら、「えっ……うん。まあいいでしょう」って。
柴田 あたしも、なんか上に呼ばれた時、なんで呼ばれたんだろうって。
一同 (笑)。
―― その時、初原画からどのくらい経っていたんですか。
佐藤 『まほろ』が初原画。『まほろ』の1話が初原画だっけ。
柴田 ええ。
―― それは凄い。『まほろ』はいかがですか。
柴田 印象的だったのは、やっぱりエンディングですか。後で佐伯さんに「あの時がいちばん疲れた顔をしていた」って言われました。
佐藤 プレッシャーで?
柴田 ええ。「私がやっていいんですか」っていう感じで。
錦織 期間も結構短かったもんね。
柴田 QAR(クイック・アクション・レコーダー)にかけながら、ちまちまやってたんですけど。
平松 あれ、かなりこだわってやってたよ。
柴田 最後まで「この動きが変とか」言って直してました。
―― 錦織さんが、柴田さんの事を「姫」と呼んでいるそうですけど、それはなぜ?
錦織 きっかけは特にないんですよ。「姫」「姫」と言っていたら、ちょっと嫌がってるのが面白いなあって。同人誌に「姫」と書いたら「姫とか書くな!」とか言われて、怒られちゃいました。
平松 怒られたい君なんだ(笑)。
―― 姫と呼ぶところがすでに、叱られたがっている感じがするよね。
今石 そうそう。
佐藤 いじめられっ子。
錦織 (彼女は)ガイナで寵愛されてるようなポジションで……。
佐藤 なんで、そんな憎々しげに語るんだよ。
錦織 いや、俺はいじめられ役ですから(笑)。
佐藤 「待ってくださーい、おやびーん」「ええい。うるさい」みたいな関係。
錦織 色んな意味で(彼女を)尊敬してます……と言っておこう。
柴田 嫌みなのかなー。
錦織 そんな事はないよ。
佐藤 でも、錦織君の方が年上でしょ?
錦織 そうですね。
平松 今回の取材では、彼女がいちばん若い。
佐藤 81年生まれ?
柴田 いえ。79年です。
佐藤 79年生まれ。『(機動戦士)ガンダム』の年ですよ。
今石 『ガンダム』の年だね。
平松 『カリオストロ』の年だよ。
―― 劇場『エースをねらえ!』の年ですよ。
今石 みんな違う事を言ってる(笑)。
―― もうちょっとガイナックスの事を聞きましょう。ガイナックスはどんな会社ですか。
柴田 ガイナですか……。
佐藤 こっち見んでもええよ(笑)。
―― 気を遣わないでいいですよ。勝手な事を言って大丈夫ですよ。
平松 うん。顔色見なくていい。
柴田 個人の作業ができていいなと思いました。仕事が自由で精神的な負担が少ないというか。
平松 社員ってわけじゃないから、自分で仕事をコントロールできるからね。
柴田 自分で好きな仕事とってやれるし。人の仕事を見て「わー」と思える事も多いし、いいなあ、と。
佐藤 バラエティのある仕事をしているからね。
平松 それぞれが色んな仕事がやってるのを見られるから。吸収する場としてはいいかもしれない。どんどん吸収していって。
柴田 吸収できているか分からないですけど。
―― 今後はどんな方向でいきたいですか。
柴田 メカは、まだあんまり興味が持てないんです。まずは芝居をやってみたいです。それから、エフェクトもまだやったりはしてないんですけども、ちょっとやってみたいな、と。
佐藤 『アベノ』は1話と7話だっけ。
今石 3話もやってますよ。
佐藤 3話はどのへん担当なの?
今石 サッシがユータスのとこに行って、「おっちゃん、のぞきか?」と言うとこ。
―― あの話では、珍しく騒がしくないところですね。
今石 うん。ほにゃほにゃしていて面白かった。僕がやるともうなんかドタバタするから。不思議なタイミングの省略だった。
柴田 なんか直されてないのが痛かった。
今石 ああ、そうなんだ。
柴田 もっと今石さんのテイストにしようと思ったんですけど。
今石 「なんか合わしてるなあ」と思ったけど。別に合わせなくてもいいのに(笑)。
平松 僕の回だと、まあひたすら日常芝居って感じでやってもらってたから。
佐藤 1話は?
平松 1話は、あるみが猫耳をするところ。商店街をずっと歩いてって、グリルペリカンに入る前。あるみがくりくりっとか回りながら歩いて、手前にOUTしてくる。7話は、夢音の一目惚れのところ。阿部を描きたいっておっしゃったので。
柴田 言いましたっけ?
平松 言ってなかったかもしれないけど、なんかコンテ見せたら「この人がいい」とかなんとか言ってたから「じゃあ、そこをあげます」って。言ったもん勝ちって事で。
柴田 あんまり男性を描く機会が少ないから。
今石 ああ、最近、出てくるのはみんな女の子だもんね。
―― なるほどね。今石さんは、柴田さんについては何か。
今石 ないね。言う事ないかな。
―― 冷たい。
柴田 突き放された……。
一同 (笑)。
今石 いまだに全貌が掴めてないんですよね。
平松 全貌。まあ、それを言ったらゴリ君だって、そうだけど。
今石 錦織はなんとなく想像できるんですけど。
平松 僕は、自分がやりたいと思ったところを彼女に振れば、だいたい間違いなくはまる感じがする。ゴリ君の場合は、自分がやりたいところと被るところもあるけど、もっとあなたらしいもの見せてほしいな。俺的にはゴリ君の場合はまだ全貌が見えてない。
今石 錦織はもう、自分でやらないとダメだ。うん。
平松 うーん。彼女の話は、こんなものでいいのかな。
今石 そうですね。
錦織 なんか集団で誉めて終わったみたいな。
―― 錦織さんはどうですか。
錦織 さっき出た『アベノ』1話の作画をする時に、(彼女は)自分でちっちゃいコンテみたいなの描いてましたよ。「とりあえず、ちょっとここで一歩下がって」みたいなの描いてたよね。それを観て「こんな事してやがる。ちくしょー」と思って。
佐藤 そんな事で妬まんでもええやろ(苦笑)。
錦織 でも、正直ちょっと感心しました、というか。ああこういう事をする人なのかと思った。
柴田 そういう日常芝居ばかりやってたんで、今石さんが描くような凄いアクションの原画の楽しさって、あたし自身まだ今ひとつ乗り切れていないというのがあるので。そっちで楽しみたいっていうのもありますね。
平松 じゃあ、今度、思いっ切り、アクションを振ってみたらどう。
柴田 悩むと思うけど。
今石 まあ、悩むのも悪い事じゃないし。

●「ガイナックス若手アニメーター紹介(3)」へ続く

(03.02.07)

 
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