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animator interview
中村豊(3)
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小黒 (笑)。その後の作品だと『ポポロ(クロイス物語)』があって、『BLOOD(THE
LAST VAMPIRE)』があって。
中村 あっ、『BLOOD』。はい。
小黒 『BLOOD』はどこやったんですか?
中村 『BLOOD』は、肥った警官が木の上に隠れてたヴァンパイアにガッて、引き上げられて。
小黒 警官って、校医さんに「おー、それはあんたがチャーミングだから、ナントカだぜ」とか言う人ですか。
中村 そうですそうです。20数カットやりました。
小黒 IGの仕事はあまり無いんですか。
中村 『(爆炎CAMPUS)ガードレス』をやりました。それ以外は無いと思います。
小黒 『ポポロ』にも名前が出ているようですが。
中村 『ポポロ』はお手伝いで数カットやっただけです。
小黒 2000年には劇場版『エスカフローネ』もありましたね。これは冒頭のアクションシーンを担当ですね。
中村 ええ、そうです。最初にコンテが上がったシーンだったので、たっぷり時間をかける事ができたんですよ。監督の了解を得つつ、コンテの内容を膨らませながら作画しました。
小黒 なるほど。
中村 画作りやアクションに関して、自分で色々と案を出して。やりすぎにならないように、演出の武井(良幸)君にチェックしてもらいながらやった感じです。
小黒 見応えのある仕上がりで、当時、誰が描いたんだろうと思いました。
中村 音楽に助けられている部分もありますね。最初から最後までを1人でじっくりできたし、アイデアを出したり、相談しながら進められたという事もあって、映画の中の1シーンではあるんですが、自分の中での1本を作れた気がします。
ただ、仕上がったフィルムを観たら画面が暗くて、何が描かれているのかあまり見えないんですよ(笑)。背動のカットとか、動画の人が頑張ってくれたんですけど。それは残念でした。プラス、時間をかけすぎたという点で、反省させられた1本でした。
小黒 『メダロット』はやってないんですか?
中村 『メダロット』は2回やってます。安藤(真裕)さんの演出の回と、最終回を5カットぐらい。
小黒 最終回はどんなところをやったんですか?
中村 敵の赤ちゃんロボかなんかが出てくるところかな。本当に数カットだから、あんまり記憶に残ってないんですよ。すいません(笑)。
小黒 いえいえ。
中村 どちらかと言うと、もう1本の方が。
小黒 それはどの話になるんですか。
中村 トーナメントの話の決勝だと思います(第49話『世界大会決勝』)。アクションを20カットぐらいやりました。
小黒 劇場版『ビバップ』は、一連のアクションの集大成という形になるんでしょうか。
中村 そんな大それたものでは……。
小黒 アクション絵コンテと、アクション作画監督の役職での参加でしたよね。コンテはどことどこを描いてるんですか。
中村 コンテは、病院のモップで暴れるシーン、モノレールのシーン、それとアルバタワー。
小黒 病院のモップのシーンも、コンテをお描きなんですね。あそこの原画は馬越(嘉彦)さんですよね。
中村 そうです。馬越さんと鈴木典光さんが原画を描いてます。僕は絵コンテ描くのが初めてだったんで、ラフでもいいから、土台にするコンテが欲しかったんですけど(苦笑)。
小黒 なるほど。
中村 最初は監督が(コンテを)用意するって言ってたんですよね。じゃあ、大丈夫かなって。ところが打ち合わせに行ったら、テーブルの上にシナリオが3枚置かれてて、泣きそーな顔してそこから見上げたところに監督がいて。「こ、これは……」って尋ねたら、「まあ、よろしくね」と言われて。「あの……、はい」と(笑)。
小黒 なるほど。でもモノレールのとことかは、監督だったら描かないような、凄いパースの構図が(笑)。
中村 コンテである程度の構図は抑えてたつもりだったんですけど。伊藤岳史さんが原画をやられてて、モノレールのモデリングを御自分でやられたんですよ。
小黒 自分の作画のためにCGでレイアウトを組んだわけですね。
中村 ええ、そうですそうです。画面の正確性に乏しいところを随分抑えていただきました。
小黒 大変そうなカットでしたものね。モノレールのシーンは、丸々伊藤さんが原画を?
中村 伊藤さんと、玉川(達文)さん。後半は斎藤久さんと。あと何人かいたと思います。
小黒 はあはあ。御自身であそこは原画を描いてないんですね?
中村 原画は描いてないですけど、直したところはあります。全部描き直したカットも。
小黒 途中で、スパイクとヴィンセントが銃を向け合って。その後に、殴り合いになるじゃないですか。あの殴り合いは中村さんの画じゃないんですか。
中村 えーと、そうですね。全部直してますね。
小黒 さっきのモップの所は、馬越さんの画が残っているんですか。
中村 ほとんど馬越さんの原画のままですね。
小黒 馬越さんは『ビバップ』は初めてだと思うんですが、形の取り方が、ちゃんと『ビバップ』流というか。
中村 例えば、アクションの途中の画や締めのところで「この画を足して下さい」とか、「もうちょっとこうして下さい」というのは、ちょこちょこっと出しています。あとは馬越さんのオリジナルで、ガーッと描いてくれて。
小黒 御本人に話を聞いたら、ハードルが高い仕事で、他のところに比べると自分のところは……なんておっしゃってましたよ。
中村 ええー!? あんな事やっててそんな! バツグンでしたよ。モップをクルクル回してるあたりとか、コンテ段階ではどう処理したものかと思ってたんですが、馬越さんが描いてある以上に意図を拾って描いてくれたんです。
小黒 タワーのシーンはどなたですか。
中村 タワーのシーンは前半を江口寿志さんに、中盤を伊藤さん、後半を安藤さんにやっていただきました。
小黒 自分では描いてないんですか?
中村 修正を入れた部分もありますが、後半の安藤さんのところに関してはほとんど手を入れてないですね。ただ、やっているうちに欲が出てきて。特に安藤さんみたいに、すごい芝居やられると。それで、コンテ内容にプラスアルファして(しかもレイアウトが上がっている段階で)、「このカットをこれぐらい膨らませてくれませんか」とラフ入れて作業していただきました。
小黒 なるほど。それは演出家っぽいですね。作監というよりは(笑)。
中村 やっちゃいけないなと思いながら、そういうズルは、やりましたね。
小黒 アクション作画監督と言いつつも「バリバリ直しまくったぜ」というわけではないんですね。
中村 ではないですね。コンテの段階で、かなり決め込んでたつもりだったんで。コンテで描かれた内容を拾いきれるスーパーな作画マンの方に支えられた感じですね。
小黒 その後、『Rahxephon』に入るわけですね。
中村 ですね。はい。
小黒 (南PDに)そういえば『Rahxephon』は二原制をとっていたそうですが、これはどういうシステムだったんですか。
南 シリーズを通じて見た時に、例えば、中村豊というアニメーターが10人いれば便利なんだけど、彼は1人しかいないわけですよ。
中村 (笑)。
南 でも、彼は1人しかいない。だけど彼のようなアニメーターの仕事をもっとシリーズ通じて出したい、と。
小黒 その担当量を増やすための二原制なんだったんですね(編注。第一原画の描いたラフな原画を、第二原画が清書してフィニッシュするシステム)。
南 そうです。
中村 僕はあんまり早くないので、カット数はこなせないんですが、一原のラフなら、いっぱいできる。それを、動画から原画に上がりたての人とかにまいて。まあ、ちょっとおこがましいんですけど、原画の練習みたいにもなるし。
南 今の若いアニーターって、すごく悩んで原画を描くんですよ。若い頃にガツガツ描くという事があまりできなくなってきている。今、TVで100カットやってる人ってほとんどいないでしょう。
小黒 まずいないでしょうね。
中村 僕が若かった頃のアニメは、1人で100カット出来る内容だったから。今のアニメでは、ちょっと難しいですよね。
南 二原のシステムならば、若い人でも一原が描いたラフな原画を元に、原画を描く事ができる。
小黒 なるほど。それもあっての『Rahxephon』の完成度だったわけですね。
南 いや、全体としてはバラつきがあったと思いますよ。ただ、そういったバラつきも、シリーズとしてはいいんじゃないかと思います。
小黒 中村さん自身は『Rahxephon』で、メカアニメーターに戻った感じですか。
中村 そうですね。最初はやっぱり感覚を掴むのに時間がかかりましたね。佐野さんの画もパワーアップしてたし。
小黒 単に勉強不足かもしれませんが、僕らみたいに『ビバップ』からファンになった者からすると、『Rahxephon』は、中村さんがどこやっているのかがちょっと分かりづらくて残念でした。
中村 そうですか?
小黒 『Rahxephon』って、それまでのロボットものとかと違って、仕上がりのトーンが全体に均等だったじゃないですか。
中村 ああ、そうですね。佐野さんがかなり部分に関して「こうしよう」というプランを出していたので、個々の個性は抑えて抑えてという感じだったかもしれない。(編注。佐野浩敏は『Rahxephon』ではアニメーションディレクター)
小黒 2話の終わりの方で敵が出てきて、ちょっとドタバタってした芝居があったじゃないですか。あそこが中村さんだろうという事は分かったんですが。
中村 ああ、そうです(笑)。2話は60カットぐらいやってましたね。
小黒 担当したのは基本的にはメカアクションになるんですか。
中村 そうですね。キャラやったっていうのは、数カットですけど、5話ぐらいですかね。
小黒 各話は何カットくらいを?
中村 後半は1話あたり10〜20カットぐらいかな(苦笑)。僕は手が遅いんで、スケジュールぎりぎりまで行っちゃって(笑)、自分でフィニッシュまで持っていかないと間に合わない事が多くて。エンディングには「第一原画」として名前が出ていますが、ほとんど第二原画までやってました(笑)。
小黒 じゃあ、中村さんのところは普通に原画なんですね。
中村 ええ、普通に原画ですね。意味ないですね(苦笑)。
小黒 原画までやってるという事は、画の質感の統一はどうしているんですか。佐野さんの修正?
中村 画の統一は、ラーゼフォン、ドーレム関係は佐野さん、戦闘機などは竹内(志保)君担当での作業で。2人で全話数チェックという恐ろしい作業量なので、中に入っている作画としては、迷惑かけられないんで、自分ではカッチリ描いてたと思います。
小黒 最近だと、作画マニアの間で話題になった『オーバーマン キングゲイナー』の「変化!ドミネーター」(第14話)も、忘れてはいけないお仕事だと思いますけども。
中村 やっぱり『Rahxephon』は縛られていたところがあるので、なんかここで、吐き出したのかなあという感じはありました。楽しい仕事ができてよかったです。
小黒 担当は、どこからどこまでなんですか。Bパートですよね。Aパートのドミネーターとゴレームの戦闘のところが寺田(嘉一郎)さんですよね。
中村 そうですね。僕の所はすしおさんが終わった後で、ゲイナーがいて、手前にドミネーターがいて、ドミネーターがクルクルクルと回って変形する背動のカットです。
小黒 なるほどBパートの戦闘の最初がすしおさんで、その後が中村さん。メカが中村さんになってからも、シンシアのコクピット芝居に関しては、すしおさんのカットがありますよね。
中村 ええ。
小黒 ドミネーターの足が伸びてるとこも中村さんですね。
中村 そうです。足が伸びて、ダダダダダッて行く所も。で、プリンが出てくるカットが最後ですね。
小黒 プリンはインパクトありましたよね。
中村 吉田(健一)君の方から「キングゲイナーのアクションは、かなり幅が広いので、何をやっても大丈夫ですよ」と言われていたんですよ。コンテだと、スライム化したドミネーターがただ盛り上がって、キングゲイナーを吸い込んでいくというカットで。「これをやったら吉田君はどう返してくるかなあ」と思って一応二通りのラフを出してみたら、「いや、プリンの方でバリバリやって下さい」みたいな感じで返ってきたんで(笑)。「お、ホントにいいのかよ」と思って。
小黒 おおー、素晴らしいですね。足が伸びるのはコンテ通りなんですかね。
中村 足が伸びるのは、大体コンテ通りです。発想は演出の横山さんじゃないですかね
小黒 いやあ、『キングゲイナー』の14話って、久々のアニメーターアニメでしたよね。
中村 (笑)。面白かったですねえ、あれは。「やっていいのかなあ」って感じでしたよね。若者の熱いパワーが。
小黒 若者なんですか(笑)。
中村 いや、僕以外は、結構若い人達がやってたんで。
小黒 だって吉田さんは同い年くらいでしょ。
中村 吉田君は僕より一つ下なんですけど、寺田君は24歳位じゃないですかねえ。
小黒 そんなにお若いんですか。ロングショットで、おっさんが乗ってるゴレームを走りながら蹴りを入れているカットは、相当にイケてましたよね。
中村 ええ。彼がレイアウト作業で煮詰まってて、「どうやったら面白くなるんですかねえ」と質問されたんで、「いや、お笑いにすればいいんだよ。見て笑える芝居にすれば」って答えたんですよ。その一言でああなったんで。「恐ろしいやつだなあ」と、思いましたね(笑)。
小黒 で、中村さんは、今は『WOLF'S RAIN』に全力投球っていう感じですか。
中村 ええ、『WOLF'S RAIN』に全力投球してます(笑)。
小黒 他はやってないんですか? 今は。
中村 他はまあ、ちょこちょこっと。BONESの作品でパイロット的なものがあって、それで1カットとか2カットとかやりながら、『WOLF'S
RAIN』を描いてて。
小黒 ああ、なるほど。どうですか? 『WOLF』は。
中村 いやあ、動物が苦手なんですよ。
小黒 狼も描いているんですね。
中村 描かされてますね。この作品は苦手なものだらけで、メカ作監をやってたくせに車とか描けない、動物も描いた事ない。今までのアニメ人生の中でいちばんハードルが高いTVシリーズになると思ってました。ただ、自分なんかが足下にも及ばないスゴ腕の作画さんがそばで作業されていたので、その方達の作画をお手本にして、今までなんとか奇跡的にこなしています(苦笑)。
小黒 4話「荒野の傷跡」の戦車との戦闘が話題になったみたいですが。
中村 あれは10カットぐらいしかやってないですよ。
小黒 じゃあ、あの回はどこをやったんですか。
中村 カット的には戦車が奥に居て。手前を狼が逃げて。機関銃をダダダダダッと撃って、狼が飛び上がって、つららを刺して。で、メカが落ちていくっていう。そこまでですね。その後の他の方がやったところの方が凄いですよ。
小黒 やっぱり見せ場のところじゃないですか。他に『WOLF'S RAIN』で「ここを描きました」というパートはありますか。
中村 「ここは」ですか。うーん、「描きました」って感じじゃないですけど、11話、16話ですかね。さきほど言ったように動物の芝居に関してはまるっきりダメなんですけど、なんとかコンテの要求するところは、ギリギリ押さえられたかなーって。
小黒 今後はどんな方向に。例えば、1話を丸々やるとか、自分のフィルムを作りたいとか、そういう方向にはいかないんですか。
中村 (笑)いや、そんな事、やれるだけの力無いし、ええ。
小黒 版権イラストもあまり描かないじゃないですか。
中村 版権は回ってこない、ので(苦笑)。
小黒 『Rahxephon』で2枚ぐらいお描きですね。
中村 2枚ぐらいやってますね。『WOLF』だと、版権自体少ないので、川元(利浩)さんがほとんどやられたりとかするんで。僕らには多分回ってこないと思います。
南 やりたいなら描かせるよ。
中村 いいんですか。描いていいんですか(笑)。マジですか?
南 うん。
中村 あ、本当ですか。いや、やらせてもらえるんだったら。ほら、子供も育てないといけないんで(笑)。
小黒 あ、お子さんがいらっしゃるんですね。さっきの話に戻りますが、中村さんくらいスキルとパワーがあると、普通、「監督作品やりたい」とかそういう方向にいくのではないかと。
中村 いや、ないですねえ。
小黒 ないんですか?
中村 ないですよ。まだ作画で何も極めちゃいないし、今はとにかく、与えられた仕事を、どれだけ巧く形にできるか。そこへのこだわりしかないんで。
小黒 それでは「こういうアクションものをやりたい」とか、「こういう作画をやりたい」というのは。
中村 ちょっとないですねえ。
小黒 ないんですね。来てから考える?
中村 今のところ、もらっている仕事の中で、自分の欲求が満たせているので。
小黒 なるほど。
中村 BONESにいると、意外と自分がやりたいものをやれるんですよ。「もうこれ以上、こういう仕事をやるのは嫌だなあ」と思ったら、違う仕事が来るんですよ。「やった事のない仕事」が。それまで描いた事のない人物アクションを描いたり、狼を描く事になったり。それをやっているうちに自分の好みの仕事になるというか、南さんが「お前はこういうのをやった方がいいよ」というのを、分かってくれてるみたいなんです。自分がやりたいと欲求するより前に、そのプレゼントが用意されてるみたいな感じなんです。
南 (笑)。
小黒 南さん、流石ですね。
中村 (誉めたから)何かくれます?
南 今度、焼き肉おごるよ。
中村 最近、焼き肉ネタ、多いっスね(笑)。
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(03.8.08)
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