小黒 「C.C.Lemon」のコマーシャルのように、桜沢エリカなら、桜沢エリカの画にならないといけない(注6)。
小原 そうです。桜沢エリカさんが右側を向いた画も、左側を向いた画も描いたかのように描かなければいけない。それが上手くいったかどうかは、別にして(笑)。
小黒 なるほど。資生堂のコマーシャルで「SLAM DUNK」のキャラクターを使ったもの(注7)を見て、これは凄いと思ったんですが、ある意味、そっくりに描けて当然なんですね。
小原 そうです。原作者の井上(雄彦)さんのチェックも入りますしね。厳しい時は、動画を1枚ずつチェックされましたから。
小黒 へえ。
小原 あのCMでは、物量が多かったから、動画を外部にお願いしたんです。それで仕上がった動画をパラパラとめくってみて、おかしなところがなければ、僕はOKを出したんですけどね。
小黒 あれは動撮ですよね。セル画だと1枚1枚チェックするのは難しいけど、動画ならチェックできちゃいますもんね。
小原 ええ。
小黒 逆に言うと、動画1枚単位のチェックに耐えられるぐらいのクオリティが要求される、という事でしょうね。ところで、最近では3Dを使ったコマーシャルも手がけられていますよね。例えば「ごはんがススムくん」の場合、どこからどこまでの部分をやられているんですか(注8)。
小原 あれは、冒頭のアニメーションの部分――まあ、箸の上げ下げだけの画がアニメーションと言っていいのか分からないけど。でも、あれはセンスがいるんですよ(苦笑)――と、あとつるんと回って怖い顔になる時の、3D用のサンプルの画を起こしています。つまり、下からフットライトが当たったらこんな感じになる、という画をね。そういう変わった注文もこなすんですよ。
●「animator interview 小原秀一(2)」へ続く
(02.05.23)
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(注6)C.C.Lemonのコマーシャル サントリーの清涼飲料水「C.C.Lemon」のCM。彼は少し前に放映されていた、イラスト調のキャラクターが商品名を連呼するパターンのものの作画を担当。桜沢エリカ他、様々なキャラクターのバージョンがあった。
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(注7)「SLAM DUNK」のキャラクターを使ったコマーシャル 井上雄彦原作「SLAM DUNK」の主要キャラクターが登場する「Aleph(資生堂)」のCMは、鉛筆タッチを活かした、迫力のペーパーアニメ。しりとりアニメ形式で、全編合わせると90秒だが、TV放映時はそれが分割されて放映された。
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(注8)ごはんがススムくん いかにも漫画的なキャラクターが、くるりと一回転するとリアルな3Dのキャラクターになる、話題のCM。様々なバージョンがあるが、全て彼の手によるもの。
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