アニメ音楽丸かじり(10)
菅野よう子のライブ情報、坂本真綾の初DVD!
和田 穣
NHK-BS2で22日に放送された「BS熱中夜話 アニメソングナイト」は皆さんご覧になっただろうか。今回は全2回のうちの前編で、アニソン界を代表する歌手、水木一郎と堀江美都子の特集だった。2人の生歌がたっぷりと聴けたのは勿論のこと、あの田中公平が堀江の代表曲「キャンディ・キャンディ」の楽曲分析を行い、水木一郎のトレードマークともいえる「雄叫び」の秘密を解き明かすなど実にマニアック。アニソンが好きな人は勿論、音楽家が見ても楽しめる内容だったのではないだろうか。
29日に放送予定の後編では、歌のゲストに福山芳樹、May'nが登場し、田中公平と神前暁による楽曲分析もあるというから、今から期待が高まる。
「BS熱中夜話 アニメソングナイト」 |
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【前編】 |
NHK-BShi 5月25日17:00〜17:44(再放送) |
【後編】 |
NHK-BS2 5月29日20:00〜20:44 |
さて、これから夏にかけてはライブやイベントが多くなる季節だ。アニメ音楽も例外ではなく、いくつもの魅力的な企画が用意されている。今回はこの中から2件を取り上げ、そのライブに関連するCDを紹介してみようと思う。
まずは前回でも紹介したMOSAIC.WAV。今月30日の東京公演を皮切りに、名古屋、大阪の3都市で初のライブツアーを行う。チケットの先行予約は終了し、現在は一般販売を行っているので参加を希望する方はお早めに。ちなみに僕は東京公演を見に行く予定だ。
彼らの楽曲はランティスから発売されるメジャー曲と、それ以外のインディーズ曲とに分かれる。前者は「最強○×計画」(『すもももももも』OP)、「片道きゃっちぼーる」(『ぽてまよ』OP)、「超妻賢母宣言」(『狂乱家族日記』OP)のようなアニメ主題歌が中心で、後者は主にPCゲームの主題歌やノンタイアップの楽曲だ。特に「Love Cheat! 」「ガチャガチャきゅ〜と・ふぃぎゅ@メイト」「洗脳・搾取・虎の巻 」などはいわゆる「電波ソング」として知られており、ネット上にはこれらの楽曲に触発されたMAD作品も数多くアップされている。
今回の公演でもセットリストの中心を占めるであろう最新アルバムが、4月15日に発売されたばかりのインディーズ4作目「Superluminal Ж AKIBA-POP」だ。既に限定盤は入手困難になっており、Amazonでは通常版のみ取り扱っている。「洗脳・搾取・虎の巻」「ぱんちゅありー」「ふたりのKiss」などPCゲームの主題歌を中心に新曲を加えた全13曲。個人的なイチオシは「百合星人ナオコサン」で、これは当初同名のコミックに特典として付属していたもの。MOSAIC.WAVお得意のシューティングゲームを思わせる電子音と、「どんなに世間が厳しくたってアタマの中までは検閲できません」という、オタクなら思わず苦笑いしてしまいそうな歌詞が秀逸だ。
7月7日にさいたまスーパーアリーナで一夜限りのライブ「超時空七夕ソニック」を行うことが決定した菅野よう子。アニメ関連のイベントや歌手のバックアップではなく、本人名義でのライブというのは珍しい。
演奏は『カウボーイビバップ』でお馴染みのシートベルツと、『天空のエスカフローネ』の頃から菅野サウンドを支えてきたワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団が担当。ゲストヴォーカルにはMay'n、中島愛、坂本真綾、山根麻以、ORIGA、Scott Matthew、Steve Conteらの出演が予定されている。つまりほとんどの楽曲をオリジナルの歌手で聴けることになるだろう。菅野は『カウボーイビバップ』『攻殻機動隊Stand Alone Complex』『創聖のアクエリオン』『マクロスFrontier』など数多くのアニメ作品に楽曲を提供してきたが、今回のライブはこれまでの活動の総決算となりそうだ。
そしてこのライブの「予習」として最適なのが、今月27日に発売されるベストアルバム「スペースバイオチャージ」だ。3枚組に本人がセレクトした全49曲を収録し、まさに菅野よう子のベストオブベストというべきボリュームたっぷりの内容となっている。
「なかなかライブには行けなくて…」という方にはこんなアイテムはいかがだろうか。20日にリリースされた坂本真綾初のライブDVD「WE ARE KAZEYOMI!」である。5年振りのライブとなった「坂本真綾LIVE TOUR 2009"かぜよみ"」は彼女にとって初のライブツアーで、名古屋、大阪、東京の3公演を行ったが、その中から最終日の1月24日、東京国際フォーラムでの公演を収録したもの。
DVD2枚組に159分という異例の長時間収録で、ライブの内容をMCまで含めたほぼノーカットで収録している。これは本人の希望によるものだという。メイキングの映像も収録されており、ファンにとっては嬉しいアイテムとなるだろう。
セットリストはデビュー曲「約束はいらない」(『天空のエスカフローネ』OP)から最新ヒット「トライアングラー」(『マクロスFrontier』OP)まで幅広く選曲されており、これまで彼女が歌ってきたアニメ主題歌、「奇跡の海」(『ロードス島戦記ー英雄騎士伝ー』OP)、「プラチナ」(『カードキャプターさくら』OP)、「指輪」(劇場『エスカフローネ』主題歌)、「マメシバ」(『地球少女アルジュナ』主題歌)、「tune the rainbow」(劇場『ラーゼフォン 多元変奏曲』主題歌)、「ループ」(『ツバサ・クロニクル』ED)、「風待ちジェット」(同)なども網羅されている。
真綾本人のコンディションも上々だったようで、1曲目「Get No Satisfaction!」から弾けるような瑞々しい歌声が響き渡る。23曲を最後まで一人で歌いきった姿は堂々たるものだ。バンドメンバーは菅野よう子プロデュース時代と異なるが、いずれも実力者揃いで安心して聴くことができる。ポイントはストリングカルテットが参加していることで、ゴージャスなアレンジを誇る菅野時代の楽曲も、その魅力を損なうことなく再現してくれている。
MCでは本人の口から、これまであまりライブ活動に積極的でなかった理由が語られる。CDデビューから14年を数えた今年、初めて自らの意志で「ライブがやりたい!」と思えるようになったという。そういう意味ではこのライブDVDが「アーティスト・坂本真綾」としての真の出発点となるのかもしれない。
(価格はすべて税込)
(09.05.25)