アニメ音楽丸かじり(16)
いよいよ『イデオン』総音楽集発売!
和田 穣
まず22日・23日に行われた「Animelo Summer Live 2009-RE:BRIDGE-」に参加した方にはお疲れ様と言いたい。僕は事情により会場には行けず、ニコニコ動画の生中継で22日のステージを視聴した。6時間を超える長丁場の中、ほとんど待ち時間を作らずに目まぐるしく出演者が入れ替わる、とても内容の濃いライブだったように思う。会場で2日間の全ステージを応援し続けた人達は、大いなる充実感と心地よい疲れを感じて帰路に就いたのではないか。
これだけの大イベントともなると正直言って語りたいポイントが多すぎるので、22日の公演の中から今回はアニサマ恒例となっているコラボレーションに的を絞ってコメントしてみたい。
まずは初っ端の石川智晶とangelaによる「残酷な天使のテーゼ」(『新世紀エヴァンゲリオン』OP)から意表をつかれた。現在、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版・破』が公開中であり、タイミング的にもバッチリの選曲だ。そして今回が初参加となるmanzoと桃井はるこのデュエット「マイペース大王」(『げんしけん』OP)はノリノリのロックチューンで、客席との掛け合いも楽しいナンバー。
堀江由衣と茅原実里のデュエットによる「ハッピー☆マテリアル」(『魔法先生ネギま!』OP)は可愛らしく、会場にコールの嵐とサイリウムの花咲くアイドル的な雰囲気に。「ミラクル・アッパーWL」(『おんたま』OP)はオリジナルどおり奥井雅美とMay'nによるデュエット。熱く歌い上げる唱法といい伸びのあるハイトーンといい、2人のスタイルはよく似ていて抜群の相性を見せる。
そして今回のサプライズだったのが「What's Up Guys?」(『爆れつハンター』OP)。アニメソングでは数少ない男女デュエットによる主題歌で、オリジナルは同作にて主役を演じた古本新之輔と林原めぐみによるもの。今回は谷山紀章と栗林みな実によって歌われたが、2人の歌唱も堂々たるもので改めてライブ映えする格好いい曲だと実感させられた。
その他、全47曲にアンコール2曲という圧巻のステージの全容については、公式サイトにてセットリストが公開されているので未見の方はチェックしてみていただきたい。今からDVD/BDのリリース、そして早くも来年の公演が楽しみである!
そしてアニサマの話題をもうひとつ。初音ミクの登場時に発表されたのが、「ブラック★ロックシューター」アニメ化プロジェクトだ。会場ではいち早くパイロット版映像が流されたが、派手なパースとダイナミックな動きが魅力的なフィルムに仕上がっていた。同作は元々ニコニコ動画に投稿された初音ミクのオリジナル楽曲で、hukeのイラストとsupercellの楽曲による印象的なプロモーションビデオが好評を博した。再生数200万を超え、キャラクターグッズも数多く発売された人気作品だ。この映像を原作に、吉岡忍監督、山本寛監修、アニメーション制作Ordetという布陣で2010年春にアニメ版の公開を予定しているという。なおこのパイロット版映像は9月30日にCDとの同梱でBD/DVDがリリースされる予定だ。
『BLACK★ROCK SHOOTER - Pilot Animation - 』
【DVD】SDP-D-001/1,260円/B★RS Project
9月30日発売予定
[Amazon]
【BD】SDP-D-002/1,890円/B★RS Project
9月30日発売予定
[Amazon]
さて、今回のCD紹介は期待のビッグタイトルだ。8月26日に「伝説巨神イデオン総音楽集」と題した『伝説巨神イデオン』の4枚組BGM集がリリースされる。過去に発売されたサントラの大半を網羅しているほか、初CD化の音源も含まれており個人的にも待望のリリースだ。価格が4800円とお手頃なのも魅力的。
LP/カセット時代も含めて過去に『イデオン』関連音源は数多くリリースされたが、CD化された事があるのはTV版「伝説巨神イデオン BGM集」「伝説巨神イデオン2 BGM集」の2枚、そして劇場では「映画 伝説巨神イデオン 接触篇 BGMオリジナル・サウンドトラック」「映画 伝説巨神イデオン 発動篇 BGMオリジナル・サウンドトラック」の2枚、そして企画アルバムの「交響曲イデオン」という合計5枚となっている(再編集盤を除く)。
これらの中ではTV版サントラの1作目にあたる「BGM集」のみが現在でも流通しているが、他のタイトルはすでに入手困難となっており、以前からファンの間では再発が待ち望まれていた。「たのみこむ」サイトでもリリースを期待する声が多く寄せられていた事をご存じの方もいるかと思う。
今回の「総音楽集」はこれら5枚の音源を網羅しているほか、過去にLPでリリースされた「伝説巨神イデオン TV版 ドラマ編」「映画 伝説巨神イデオン 未収録BGMコレクションシリーズ3」からの音源を初めてCD化。これらを盛り込んだのが大きなトピックと言えるだろう。
4枚組ディスクの内容だが、DISC1がTV版「BGM集」全曲と「BGM集2」の大半をまとめたもの、DISC2が劇場『接触篇』サントラと「未収録BGM」「ドラマ編」からの音源を収録。DISC3が劇場『発動篇』サントラと「未収録BGM」および「BGM集2」の残り、そしてDISC4が「交響曲イデオン」となっている。詳しい内訳については公式サイトを参照していただきたい。
音楽担当はすぎやまこういち。1986年の「ドラゴンクエスト」以降はゲーム音楽へと活動の主軸を移したため、大ベテランながらTVアニメの劇伴は10作にも満たない。そういった意味でも『イデオン』の音楽には希少価値があると言えるだろう。またOP「復活のイデオン」とED「コスモスに君と」の作曲も自ら行っており、両曲とも現在に至るまで長く愛されるアニメソングの定番となっているのはご存じのとおりだ。
楽曲はオーケストラにリズムセクションを加えたポップスオケのものと、放映当時流行していたフュージョン系のスタイルによるもの、そして小編成の室内楽的なものが主軸となっている。全編をつうじて「ラ・ソ・ド・ラ」という音列の「イデのテーマ」を用いているほか、OPとEDのメロディも様々なバリエーションで変奏されている。同じメロディを千変万化に表現していく、すぎやまこういちの編曲能力の高さが印象的だ。
またサントラとして見ても、オリジナルの「BGM集」自体がアルバムをED曲「コスモスに君と」から始める構成といい、組曲風のアレンジといい、LP(当時)のA・B面をアイキャッチ(有名な「イーデオーン」というコーラス)で繋げるアイディアといい、様々な意欲的な試みが行われていた。単なるBGMの音源集にとどまらず、アルバムとして楽しめる構成を制作者側がよく考えてくれていたと思う。今回の「総音楽集」でもこのオリジナル盤のマインドは継承されているようで、曲順や構成は過去のサントラに準じたものが多い。このあたりも個人的に嬉しいところだ。
(価格はすべて税込)
(09.08.24)