アニメ音楽丸かじり(18)
『東のエデン』サントラ、『ARIA』CD-BOXが発売!

和田 穣

 まずは26日、27日に開催された「ランティス祭り」に参加した方々には「本当にお疲れ様」と言っておきたい。2日間にわたって計12時間近くの長丁場となったが、大きな混乱もなく盛況のうちに終わった事は実に喜ばしい。僕は2日間フルに参加したが、やはり野外の大会場におけるライブの開放感や爽快感は格別であり、これを1回限りで終わらせてしまうのはもったいないと強く感じた。今後このイベントの成功に触発されて、アニソン関連の野外フェスが定期的に開催されるようになってくれればどれだけ素晴らしい事だろうか。

 さて、その「ランティス祭り」の内容だが、なにしろ合計42組ものアーティストが登場した一大イベント。そのレビューを全て書くといくら字数があっても足りなくなってしまう。よってごく一部ではあるが、個人的に強く印象に残ったアーティストについて書いてみたい。
 まずは1日目の中盤16番目に登場したRey。「本気のアニソンバンド」を標榜する若手ロックバンドで、昨年11月にメジャーデビューしたばかり。彼らのライブを観たのは初めてだったが、歌も演奏も骨太かつダイナミックで、大会場がよく似合うスケールの大きさを感じた。持ち歌で「トミカヒーロー レスキューファイアー」のED曲「BURNING HERO」のほか、遠藤正明とのセッションで「環境超人エコガインダー」主題歌も披露。遠藤にも負けない声量の原田謙太(Vo.)と、6弦ベースを自在に操る坂本尭之(Ba.)のテクニックに感心させられた。
 続いては1日目のトリに抜擢された平野綾。最近の歌唱力の上昇には目を見張るものがあり、トリの大役に恥じないパワフルなパフォーマンスを見せてくれた。特にラス前に披露した『涼宮ハルヒの憂鬱』OP曲の「Super Driver」は観客から1日目最大のリアクションを得ていたように思う。随所にキメや掛け声が入り、サビでは倍テンになるという「これで盛り上がらないわけがない!」曲調で、まさにライブで披露するためにあるような楽曲だ。
 2日目では5番目に登場した飛蘭にインパクトがあった。まずは影山ヒロノブとのデュエットで美しいバラード曲「I'm in You.」を歌ったのだが、影山がMCで「とにかく歌が巧い」と語ったとおり、滑らかな発声と自由自在のビブラートで表現力抜群。そしてメジャーデビュー曲で『CANAAN』OP曲の「mind as Judgment」を披露。猛スピードで畳みかけるような曲調と、この難しい楽曲をライブで完璧に歌いこなす歌唱力には完全に参ってしまった。本当に今後が楽しみなアーティストだ。
 そしてその影山が率いるLAZYが後ろから3番目に登場し、まずはDeep Pupleのカバー「BURN」を披露。続いてJAM Projectのメンバーをサポートに迎え、最新作で『真マジンガー 衝撃!Z編』OP主題歌の「感じてKnight」を演奏した。わずか2曲の出番ではあったが、色々と感じるところの多いパフォーマンスだった。
 影山はMCで天を指さし「きっと2人も聴いていると思います!」と語っている。2人とは勿論、近年相次いで亡くなった田中宏幸(Ba.)と樋口宗孝(Dr.)のこと。LAZYは残念ながら3人になってしまったわけだが、その3人にもLAZY解散(1981年)から再結成(1998年)までの間に様々な紆余曲折があった。影山ヒロノブ(Vo.)はご存じのとおりアニメソングの第一人者となり、高崎晃(Gt.)は樋口と共にLOUDNESSを結成して1980年代半ばには世界進出を果たした。そして井上俊次(Key.)はプロデュース業に転身し、ランティスを設立して社長に就任したというわけだ。それぞれ全く異なった道を歩んだ3人がこうして集い「ランティス祭り」で演奏したこと、個人的にはそれ自体が深い感慨を覚える出来事だった。

 さて今回のCD紹介はまず『東のエデン』のサントラから。6月に放映は終了したが、今月26日からテアトル新宿など3館にてTVシリーズの総集編映画が公開中である。また『東のエデン 劇場版I The King of Eden』は11月28日より、『東のエデン 劇場版II Paradise Lost』は来年1月に公開予定ということで、未完だったストーリーの顛末を含めて今後も気になるタイトルだ。
 サントラのリリースに際しては発売日が5月27日→7月29日→9月23日と大幅に遅れファンは随分と待たされたが、まずは無事に発売され、主題歌もフルバージョンで収録された事を喜びたい。特にOP曲はOASISという海外の大物だけに、権利関係の調整も大変だったのではないかと想像できるからだ。
 ライナーノーツによれば、作曲を担当した川井憲次は神山監督からの「明るくしたい」というオーダーに当初は困惑したという。確かに1曲目「密やかなたくらみ —咲のテーマ—」、7曲目「憂鬱を吹き飛ばせ!」などはなんとも明るく朗らかで、近年の川井憲次としてはあまりなかったタイプの曲調だ。OP・EDのほかTV版最終話となった第11話で使用された挿入歌「Reveal the World」も収録している。

『東のエデン』OST(音楽:川井憲次)

ESCL-3258/3,059円/エピックレコード
発売中
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 先頃放映が終了した『シャングリ・ラ』のOST2が9月23日に発売された。音楽を担当した黒石ひとみは、歌手hitomiとして『LAST EXILE』『プラネテス』『コードギアス 反逆のルルーシュ』などに多くの楽曲を提供してきただけに、このサントラも歌ものがなかなか豊富なのが特徴だ。
 まずmidoriが歌うED曲「月に隠せし蝶の夢」をフルバージョンで収録。May'nによるOP曲「キミシニタモウコトナカレ」のバラードバージョンも入っている。12話は妙にアキバテイストの濃い話数だったが、ここで登場したマジカル・ギーナ(劇中の人気キャラ)の「オレンジかんだら」も収録。歌う松元環季は弱冠10歳の子役だ
 最終話に使用された楽曲も多く収録している。雅楽器の笙をフィーチャーした25曲目「神の目覚め」、教会風のコーラスが荘厳な雰囲気の27曲目「最後の聖戦」などは、黒石ひとみと共に仕事をする機会の多い中川幸太郎にも通じるスケールの大きさ。クライマックスを飾った挿入歌「天への祈り」「シャングリ・ラを目指して」の2曲は「これぞhitomi!」という感じの多重録音によるコーラスが美しい楽曲で、彼女のファンにはお薦めだ。

『シャングリ・ラ』OST2(音楽:黒石ひとみ)

VTCL-60145/2,940円/フライングドッグ
発売中
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 9月23日に『ARIA』シリーズの3枚組CD-BOX「ARIA The BOX」が発売された。Choro Club feat.Senooや窪田ミナ、河井英里の起用など音楽面でも独特の個性を放っていた本作だが、このBOXはTVアニメ第1期の放映から4年を経て、いわばこれまでの集大成といった感じの内容となっている。
 まずDisc1は、佐藤順一監督自らが劇伴の中から25曲をセレクトする「佐藤順一監修 サントラBEST25」という面白い試み。結果的に代表的な曲をうまく網羅しているように思う。1曲目がTVシリーズのアバンタイトルに使用された「ゴンドラの夢」から始まるのは、既発のサントラでもお馴染みの構成だ。
 Disc2は「主題歌&挿入歌コレクション」で、牧野由依が歌う「ウンディーネ」「ユーフォリア」「スピラーレ」のTVシリーズOP曲を中心に、ROUND TABLE feat.NinoによるEDや、OVAの関連曲も収録されている。勿論、人気の高い「バルカローレ」「コッコロ」という挿入歌2曲も入っている。
 Disc3はファンには嬉しい「サントラ未発表曲コレクション」だ。『ARIA』はサントラを含め音楽CDのリリースにはかなり恵まれたシリーズだったと思うが、それでも15曲の未発表曲があったというのは驚きである。
 ちなみに外装は半透明スリーブケースに紙ジャケのスリムケース、ピクチャーレーベルといった仕様。佐藤順一監督の全曲解説がついた32ページのブックレットが付属する。なかなかにコレクション性も高いアイテムだ。

「ARIA The BOX」

VTCL-60114〜6/6,300円/フライングドッグ
発売中
[Amazon]

(価格はすべて税込)

(09.09.29)