アニメ音楽丸かじり(20)
『絶望先生』3期サントラ、手塚治虫関連の2作品が発売!
和田 穣
11月26日にキングレコードより「サンライズ ロボットアニメ大鑑」「ロボットアニメ大鑑 上巻」「ロボットアニメ大鑑 下巻」と一挙に3種類の主題歌コンピレーションアルバムが発売されることになった。劇場作品を含まずTVアニメに特化しているのが特徴で、『熱血最強ゴウザウラー』『サイコアーマー ゴーバリアン』『六神合体ゴッドマーズ』のように現在では入手が困難な主題歌を収録しているのが目玉だろう。
その他にも、多くのコンピレーションやアーティストのベスト盤をかき集めないと揃わなかった主題歌がまとまっており、今のところキングレコード関係のロボットアニメ主題歌CDとしては、決定盤に最も近いのではないかと思う。サンライズ盤がCD3枚組で他は2枚組となっており、お値段も手頃なところだ。
このCDについては、試聴レポートも含めて発売前後にまた改めて特集したいと思っている。
先ごろ放映が終了した『懺・さよなら絶望先生』のサントラ『懺・絶望劇伴撰集』が10月21日にリリースされたので紹介しよう。個人的にも第1期、第2期に引き続き毎週楽しませてもらったシリーズだったので、聴取できる事を楽しみにしていたのだ。
音楽は長谷川智樹。レトロ趣味と耽美的なセンスがたっぷり詰まったテーマ曲に、女性ヴォーカル版があるのもお馴染みの作り。ブックレットで本人が語っているとおり、すでに「絶望サウンド」がしっかりと確立されており、ひとつのスタイルを築いたと言ってもいいだろう。
第3期の特徴として、作風が明朗で分かりやすい(あくまで『絶望先生』にしては、だが)という傾向があるように思うが、音楽面でもかつてないほどに陽気で軽快な「いかにもBGM」という曲がいくつか収録されており、それがかえって新鮮に感じるのが『絶望先生』ならでは。
そして本作の音楽といえば欠かせないのがパロディ。今回も「それはキミツ」「ウルトラZ」「月光のアナタ」「知らない街へ」など実にギリギリな曲名が並んでいる。もちろん曲調もモロにそれらしく作られており、期待を裏切らない仕上がりだ。
OP「林檎もぎれビーム!」とED「絶望レストラン」「暗闇心中相思相愛」、そして挿入歌「プライベエト・レッスン」もそれぞれTVサイズで収録している。トータル65分で全34曲という構成だ。
今年は手塚治虫の生誕80周年という事もあり、様々な関連作品がリリースされている。これもその一環だろうか、10月21日に『鉄腕アトム』(1980年版)のサウンドトラック盤がリマスターで再発されることになった。
音楽担当はかの三枝成彰。ストリングスを配した軽快なフュージョンサウンドを基調としており、さらにテクノポップ全盛の時代という事もあってか随所にアナログシンセが取り入れられている。「スクランブル・ロケット」なんてYMOを思わせる格好よさではないだろうか。
高音質なSHM-CD仕様という事もあってサウンドは実にクリアで、30年近く前の作品とは思えないほど。『アトム』の世界観にはこの時代ならではのレトロフューチャー的な明るいサウンドが一番しっくりくるように思う。
主題歌「鉄腕アトム」はゴダイゴ風の垢抜けたアレンジが、アニメ第1作の1963年版以上に『アトム』の作風にぴったり。三枝自身のペンによるED「未来に向かって」も、OPに比べると知名度では劣るが、アトムの7つの能力を織り込んだ歌詞といい、シンプルで覚えやすいメロディといい、アニメ主題歌の教科書的な楽曲だ。
残念なのは全11曲と収録曲数が少ない事で、これは過去の盤も同様なのだが、いずれは完全版が登場することを期待したいものだ。
手塚治虫関連でもうひとつ、同じく10月21日にコロムビアより「交響詩 ジャングル大帝 〜白いライオンの物語〜《2009年改訂版》」が発売されたので紹介したい。これは1966年にリリースされた「子どものための交響詩 ジャングル大帝」の新録音バージョンとなる。アニメ音楽の交響楽アレンジとしては最初期の作品であり、後世に与えた影響も大きいものがあるように思う。
元々が文部省(当時)の指導要領に沿ったかたちで、子供達にオーケストラの楽器を紹介する、という教材としての側面を持った作品であり、今回もそのスタイルは踏襲している。解説のナレーションを担当するのはジャズシンガーの綾戸智恵だ。
商品の構成は、高音質のHQCDとDVDの2枚組となっており、DVDは5.1chサラウンドと2chステレオを選べる仕様だ。トミタサウンドといえば優れた音響でも知られ、本作もまた音にこだわる人でも満足できるだろう。DVD版はナレーションのオン/オフも選べるので、じっくりと音楽だけを鑑賞したい方にはこちらがおすすめ。
(価格はすべて税込)
(09.10.27)