アニメ音楽丸かじり(21)
『CANAAN』OST発売、『アタックNo.1』初CD化!
和田 穣
遅まきながら新型PS3を購入したので、我が家もようやくBlu-rayの恩恵を受けられる事になった。さっそく、先行して購入しておいた『化物語』を観てみると、やはりDVDとは次元の違う画質。地デジは勿論のこと、BSデジタルよりも綺麗なようだ。
ただその分、作画の線がよりハッキリと見えてしまうので誤魔化しが利かない。そしてあまりに鮮明であるため、キャラクターが「生きて動いている存在」ではなく「人間が手で描いたモノ」であると認識されやすいように感じた(『化物語』の作品性という部分もあるのかもしれないが)。
高画質化という事自体は喜ばしいのだが、一方でそれを活かした作品づくりというのは色々と大変だろうと思う。市場ではすでにTVアニメソフトの売上上位にBD作品が数多く登場しており、高画質に耐えうる作画や演出の追求は避けて通れない道だ。今後リリースされるBD作品にも注目していきたい。
そろそろ10月スタート番組の主題歌がいくつかリリースされ始めている。その中でも注目されているのが11月6日付のオリコンデイリーランキングで3位に食い込んだ『とある科学の超電磁砲』OP「only my railgun」だ。初回限定盤にはPVを収録したDVDが付属する。
前シリーズの『とある魔術の禁書目録』とアーティストは異なるが、トランス風のバックトラックにキャッチーなメロディを乗せた作風は健在。祝日の影響もあり、秋葉原のいくつかのショップでは発売日前からすでに完売という珍現象も見られた。ちなみに担当アーティストfripSideの2代目ヴォーカルに起用された南條愛乃は、泡浮万彬役で番組にも出演中の声優だ。
その南條愛乃がメインキャラクターの1人である大沢マリアを演じた『CANAAN』のサントラ盤が11月25日にリリースされる予定だ。3枚組という大ボリュームになったのには理由があって、本作のBGMは各話の内容に合わせてフィルム・スコアリングされたため。このため楽曲の使い回しが少なく、曲数が膨大になっている。
現在多くの作品で主流となっている溜め録り方式に比べて手間と時間がかかるため、TVアニメでは滅多に用いられない手法だ。
番組を視聴した方には分かっていただけると思うが、各シーンのドラマの内容にぴったり寄り添うように作られた音楽は、一般的なTVアニメの劇伴とは全く違う雰囲気を持っている。分かりやすくキャッチーなメロディやリズムで作劇を引っ張るのではなく、サウンドスケープのように全体を包み込んで深みを増す役割だ。楽曲から醸し出されるニュアンスはまさに「映画的」と言っていいだろう。
音楽を担当した七瀬光は、伊藤真澄の名義で歌手としても活躍するアーティスト。9月に行われた「ランティス祭り」にも出演し、『うみものがたり』ED「透明な祈り」、『あずまんが大王』OP「空耳ケーキ」を披露した。劇伴の分野で名前を見かけるようになったのは2000年前後からだと思うが、10年に満たない活動歴の中でサントラアルバムだけでもすでに40作以上をリリースしている多作の作曲家だ。
最後に紹介するのは驚きの1枚。1969年の放映開始から40年を経て、これが初のサントラ発売となる『アタックNo.1』だ。発売元となるソリッドレコードは、近年『はじめ人間ギャートルズ』『ガンバの冒険』『じゃりン子チエ』『キャッツ・アイ』など東京ムービー関連の音源を相次いで発掘してきた事が記憶に新しい。
この作品は前年の『巨人の星』に続いて渡辺岳夫が音楽を担当。作品・主題歌ともによく知られているものの、劇伴に関してはLP時代からレコード化の機会に恵まれていない。1996年のEMIミュージック盤「懐かしのミュージッククリップ5」(TOCT-9360)でOP「アタックNo.1」、ED「バン・ボ・ボン」そして「鮎原こずえのハミング」など歌ものはほぼ網羅されているが、劇伴に関してはこれまで手つかずだった。
このたび劇伴テープの一部が発掘されたとの事で、未発表音源を発掘してCD化する「TVエイジシリーズ」の一環として、マスタリングを施した上でリリースされる運びとなった。トータルで42トラック、58分を収録する。
まだ手元にCDがないため劇伴についての詳細は不明だが、曲数から分かるとおりきちんとトラックごとに分かれて収録されているようだ。主題歌についてはTVサイズ、TVサイズSE入り、レコードバージョン、カラオケの4種類を収録するなど、上記のEMI盤と同じく一通り網羅している。
(価格はすべて税込)
(09.11.10)