アニメ音楽丸かじり(28)
145曲収録の『ガンダム』CD-BOXが登場!
和田 穣
今月24日にいよいよBlu-ray BOXとDVD-BOXが発売になる『機動戦艦ナデシコ Martian Successor Nadesico』。新たに主題歌3曲をパッケージしたシングルCDもリリースされたので早速買ってみた。TV版OP「YOU GET TO BURNING」とED「私らしく」、そして劇場版主題歌「Dearest」の3曲を収録したものだ。
これらの曲を聴くのは数年ぶりになるが、改めて思うのはTVシリーズと劇場の作風の違いが、きちんと主題歌の曲調として表現されているということだ。「YOU GET TO BURNING」の方はノリのいいリズムとドライなサウンドで、メロディは少し歌謡曲的な哀愁のあるもの、バックのシンセはSFっぽい音色、という感じでTVシリーズを構成する要素がちゃんと主題歌にも反映されている。
「Dearest」の方は改めていうまでもないだろう。このもどかしくも切ない曲調こそ、劇場『ナデシコ』のテイストそのままではなかったか。僕が公開当時に映画館で観た時も、やはりラストでこの曲が流れた時に感情が最も動かされたことを思い出す。いやあ、本当に作品にマッチしたいい曲である。
さて、昨年は『機動戦士ガンダム』放映開始から30周年という事で、様々な記念イベントが行われ、関連商品も色々とリリースされてきた。年はすでに明けてしまったが、2月24日にその集大成ともいうべき豪華なCD-BOXがリリースされる。『ガンダム』シリーズの主題歌・挿入歌145曲を余すところなく全て収録したCD-BOX「GUNDAM SONGS 145」の登場だ。
初代『機動戦士ガンダム』から最新の『機動戦士ガンダム00』までのTVシリーズ全11作、『逆襲のシャア』『F91』などの劇場作品、『0080』『0083』『第08MS小隊』『MS IGLOO』などのOVA作品、そして『SDガンダム』までをも含んだ、まさにコンプリート盤というべき内容となっている。(たださすがに2月20日に公開されたばかりの『ガンダムUC』の主題歌は収録されていない)
当然ながらオリジナル盤をリリースしたレコード会社はバラバラだから、レーベルの垣根を越えた一大コラボレーションということになる。これまで多くの『ガンダム』音源をリリースしてきたキングレコードではなく、近年の『ガンダムSEED』以降を担当してきたソニー・ミュージックエンタテインメントでもなく、ビクター系列のflyingDOGからのリリースだ。
CD10枚組に145曲を収録。ディスクを上下2段に収納した5面仕様の特殊トレイを、安彦良和描き下ろしのボックスに収納するという作り。トレイを全て横に広げると1mを超えるという。お値段も3万円となかなかのものだが、それに見合った豪華な仕様になっていると言えるだろう。実際の商品イメージに興味のある方はこちらの公式ブログに多くの写真が掲載されているので、参照していただきたい。
■楽曲構成
『ガンダム』ほどの長大なシリーズ、そしてこれだけ大規模なCD-BOXとなると、どのように楽曲を構成するのかも重要だろう。素直に作品の発表年代順に並べるのか、あるいはTVシリーズ、劇場作品、OVAというカテゴリ別にまとめるのか、いくつかのパターンが考えられる。
実際に今回のBOXで採用されたのは、とりわけ大胆で作品内容を重視した構成だった。つまり各作品で設定されている時間軸に沿った並び順となっているのである。例えばDisc 1は〈宇宙世紀0079年〉でまとめられているため、初代『ガンダム』とその劇場作品3本、そして同じ時間帯に設定されているOVA『機動戦士ガンダム MS IGLOO』の楽曲が並ぶ。初代『ガンダム』は1979年の作品、そして『MS IGLOO』は最新話が昨年リリースされたばかりの新作だから、主題歌の音楽スタイルには30年分の開きがある。当然ながら聴覚上の違和感を感じさせないための努力が必要になるわけで、CD制作スタッフは苦労したのではないかと想像する。
以下に各ディスクの名称と、どの作品の楽曲を収録しているかを大まかに記してみた。
Disc 1 宇宙世紀 Part I [U.C.0079] |
TV『機動戦士ガンダム』、劇場『機動戦士ガンダム(I〜III)』、 |
Disc 2 宇宙世紀 Part II [U.C.0079〜0083] |
OVA『第08MS小隊』『0080』『0083』、劇場『0083』 |
Disc 3 宇宙世紀 Part III [U.C.0087〜0093] |
TV『Zガンダム』、劇場『Zガンダム(I〜III)』、OVA『GUNDAM EVOLVE../A』、TV『ガンダムZZ』、劇場『逆襲のシャア』 |
Disc 4 宇宙世紀 Part IV [U.C.0123〜0153] |
劇場『F91』、TV『Vガンダム』 |
Disc 5 未来世紀 [F.C.60]、アフターコロニー [A.C.195〜196] |
TV『Gガンダム』、TV『ガンダムW』、 |
Disc 6 アフターウォー [A.W.15]、正暦[C.C.2343〜2345] |
TV『ガンダムX』、TV『∀ガンダム』、劇場『∀ガンダム』 |
Disc 7 コズミック・イラ Part I [C.E.70] |
TV『ガンダムSEED』、OVA『GUNDAM EVOLVE../Ω』 |
Disc 8 コズミック・イラ PART II [C.E.73] |
TV『ガンダムSDESTINY』、OVA『ガンダムSEED』 |
Disc 9 西暦 [A.D.2307〜2312] |
TV『ガンダム00』 |
Disc 10 アナザーヒストリー |
OVA『SDガンダム』、OVA『GUNDAM EVOLVE../A』 |
全楽曲の一覧については、ナタリーの紹介ページが見やすくまとまっているので参考にしていただきたい。
■ブックレット
今回のBOXの中でもマニアに訴求しそうなのが、272ページにも及ぶブックレットの内容だろう。僕もまだ実物は見ていないのだが、大きく分けて「HISTORY」「ARTISTS」「COLUMN」「CHRONICLE」の4部から構成されているという。
まず「HISTORY」はいわゆる年表で、CDの方とは異なり現実の西暦に即したもの。例えば初代『機動戦士ガンダム』が放映された1979年はどういった年だったのかを振り返りながら、『ガンダム』シリーズの遍歴を辿るというものだ。
「ARTISTS」は各楽曲を担当したアーティストのコメントとインタビューのページ。鮎川麻弥、GACKTには新規のインタビューを行っているそうだ。他には麻倉あきら、石川智晶、井上大輔、鵜島仁文、宇都宮隆、梶浦由記、川添智久、高山みなみ、戸田恵子、MIQ、森口博子、米倉千尋、渡辺岳夫など。故人も含まれており、一部のコメントは再録であるとのこと。富野由悠季監督からのメッセージもある。
「COLUMN」はアニメ評論家の氷川竜介によるコラム、そして田中公平と腹巻猫の対談による『ガンダム』の音楽を分析するコーナーがあって、なかなか期待できそうだ。田中公平は「BS熱中夜話 アニメソングナイト」でもアニメ主題歌の分析に卓越したところを見せており、評論家としてのポテンシャルの高さも感じる。
「CHRONICLE」は2008年にサンライズ30周年を記念して、関係者のみに配布された「サンライズクロニクル」からの内容。これはサンライズの全作品を発表順に記録した非売品の書籍で、一部がサンライズステーションのサイト上で公開されているものの、これまでほとんど一般のファンの目には触れる機会がなかったのではないだろうか。今回はこの中から『ガンダム』シリーズに関する部分を抜粋して収録している。
(価格はすべて税込)
(10.02.23)