アニメ音楽丸かじり（30）
Kalafinaの新作、『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』サントラが発売！
和田 穣
３月12日に発売された『機動戦士ガンダムＵＣ』のＢＤ版が56000枚を売り上げ、アニメＢＤで歴代１位と好調な出だしとなった。久々の宇宙世紀もの、福井晴敏がストーリーを担当ということで注目度が高い作品だったが、映像面のクオリティも高く今後がますます楽しみだ。
音楽を担当したのは1980年生まれの若き作曲家、澤野弘之。2006年にＴＶドラマ「医龍-Team Medical Dragon-」の劇伴を担当し、ロックとオーケストラを融合したダイナミックなサウンドで話題となった。アニメでは『機神大戦ギガンティック・フォーミュラ』『ZOMBIE-LOAN』『戦国BASARA』などで音楽を担当している。
彼の持ち味は複数のジャンルを融合させた創作スタイルと、ハリウッド映画的なスケールの大きさ。『ガンダムＵＣ』でも随所に雄大なメロディとダイナミックな音響を用いて、作品のスケール感を大いに引き上げている。サントラは３月10日に発売ずみなので、作品を見て音楽に興味を持った方はチェックしていただきたい。なお本盤はアニメサントラでは初めて、高音質のBlu-spec CDによるリリースとなっている。
梶浦由記プロデュースによる女性ヴォーカルユニット・Kalafinaの１年ぶりとなるアルバムが３月17日にリリースされた。64分に全13曲を収録している。アニメのタイアップ曲としては『黒執事』ＥＤ曲「Lacrimosa」、現在放映中の『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』よりＯＰ「光の旋律」、３月６日からテアトル新宿、池袋テアトルダイヤで劇場公開された『イヴの時間』主題歌「I have a dream」など。梶浦由記が音楽を担当したＮＨＫのドキュメンタリー番組「歴史秘話ヒストリア」の主題歌をアレンジした「storia」も含まれる。発売日にはオリコンのデイリーランキングで４位を記録し、なかなかのヒットとなりそうな勢いだ。
前作「Seventh Heaven」は劇場『空の境界』の主題歌７曲を中心に構成されており、ある種の統一感があった。比べると「Red Moon」は新録曲も多く、よりバラエティ豊かな仕上がりとなっている。特に前作ではWakanaのリードヴォーカルが多かったが、本作はKeikoとHikaruの比重が増しており、よりバランスのとれた内容と言えるだろう。
梶浦由記による楽曲のクオリティ、３人のコーラスワークの素晴らしさについては、私見だが日本のポピュラー音楽シーンの中でもトップクラスだと思う。初回限定盤にはＤＶＤが付属しており、「Lacrimosa」「storia」「progressive」「光の旋律」というシングル４曲のライブ演奏が収録されている。３人の歌唱・コーラスはライブとは思えないほど完璧なもので、スタジオ版を上回るほどの説得力がある。個人的には現在の日本でもっともライブを見たいと思わせるグループのひとつだ。
５月・６月に東京・横浜・名古屋・大阪の４ヶ所でライブツアーが行われる予定で、これまでのライブと同様にチケットは即日完売になるのではないだろうか。
そのKalafinaが主題歌を担当した『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』のサウンドトラック盤が３月24日にリリースされる。ＯＰ・ＥＤのＴＶサイズを含む全27曲を収録予定だ。音楽担当はご存じ大島ミチル。我が国を代表する女性作曲家であり、すでにＴＶアニメ20作以上、ＴＶドラマや劇場作品もそれぞれ数十本を担当しているベテランだ。
作品の設定では、美術がスペイン、敵国の言葉はドイツ語、ヘルベチアの記述言語はフランス語といったように、ヨーロッパ各地に取材しているのが特徴。サントラも楽曲名がフランス語、スペイン語などで記されているあたり、神戸守監督作品らしいこだわりを感じさせる。
楽曲の傾向は、リリカルという言葉では物足りないほどの詩情が迸っており、お洒落でムーディなヨーロッパの薫りに満ちたもの。リュートの使用やフランス人ヴォーカリストの起用など、全編にわたって「ヨーロッパ的であること」が徹底している。
作曲者によれば、劇中で主人公・カナタが演奏するトランペットが重要な意味を持つだけに、逆に劇伴ではトランペットの使いどころに苦慮したとか。そのあたりにも注目して聴いてみると面白いだろう。
（価格はすべて税込）
（10.03.23）