アニメ音楽丸かじり(34)
大杉久美子40周年記念BOXが発売!

和田 穣

 5月3日にNHK大阪ホールで収録が行われた「アニソンのど自慢〜2nd IMPACT〜」は昨年に引き続いての開催だ。第1部が一般参加者による、いわゆる「のど自慢」のパート、第2部がゲスト歌手によるスペシャルコンサートという構成なのは昨年と同じ。第1部のみ、NHK総合の近畿ブロック限定で5月5日に放送されている。
 そしていよいよ5月30日(日)の15時30分から、NHK-BS2にて第2部を含めた完全版が放送される。視聴環境のある方は是非チェックしていただきたい。ゲスト歌手は、ささきいさお、堀江美都子、HIMEKAの予定。
 コンサートが楽しみなのは言うまでもないが、のど自慢の方もなかなか侮りがたい。昨年の参加者達も、ネタに走った選曲で笑いをとったり、手の込んだコスプレで楽しませてくれた。審査員には神谷明、三石琴乃、そして田中公平も名を連ねており、こちらも期待が持てる。

 大杉久美子のアニメソング・デビュー40周年を記念したCD-BOX「燦(きらめき)のとき やさしさの歌」が5月19日に発売された。CD4枚組で106曲、収録時間は300分を超えるという大ボリュームで、彼女個人のベスト盤としてはもちろん過去最大級のもの。お馴染みの有名曲の数々を中心に、初CD化となるレアなトラックやカバー曲までを収録した興味深いボックスとなっている。各ディスクの内容をざっと紹介していこう

DISC-1 アニメソング名曲コレクション

 1曲目を飾るのは勿論「アタックNo.1」だ。1970年にリリースされた、大杉久美子の記念すべきアニメソング・デビュー曲。彼女は中学生の時に歌謡曲歌手としてデビューしたが、数年間ヒット曲に恵まれなかった。この曲によって、その後のアニメソング歌手としてのキャリアがスタートしたわけだ。
 以下、『エースをねらえ!』からOP「エースをねらえ!」、挿入歌「ひとりぽっちのコート」、ED「白いテニスコートで」を、『アルプスの少女ハイジ』からはED「まっててごらん」と挿入歌3曲を収録している。「エースをねらえ!」の歌詞はかなり重く暗いものだが、大杉久美子の突き抜けるようなハイトーンが曲に力強さを与えていたのが印象的。
 その他、1970年代中頃の作品として『草原の少女ローラ』からOP・EDと挿入歌2曲を、『ピコリーノの冒険』も同じくOP・EDと挿入歌2曲、『ポールのミラクル大作戦』からはOP・EDを収録している。

DISC-2 世界の名作コレクション

 1970年代後半、初期「名作劇場」の主題歌・挿入歌はまさに大杉久美子の独擅場だったと言えるだろう。『フランダースの犬』『母をたずねて三千里』『あらいぐまラスカル』『ペリーヌ物語』といずれも現在まで幅広く知られる有名曲揃いだ。
 『三千里』のOP主題歌「草原のマルコ」は、フォルクローレ調のアンサンブルに美しいメロディが乗り、大杉久美子の情感に溢れた歌唱が哀愁をかき立てる。日本のアニメ史に残る名OPではないだろうか。同じく『三千里』からは挿入歌も4曲が採用されている。いずれも劇中で印象的に使われていたもので、「ペッピーノ一座のうた」ではペッピーノ役・永井一郎の歌唱も聴ける。
 『あらいぐまラスカル』OP「ロックリバーへ」はカントリー調の軽快なナンバー。初期の「名作劇場」では、このように作品の舞台となる国の音楽を、分かりやすいかたちで主題歌に取り入れていく手法が特徴的だった。

DISC-3 永遠の友だちコレクション

 1曲目「ドラえもんのうた」は、大杉久美子の代表曲であるだけでなく、日本のアニメ主題歌の中でも最も有名な曲のひとつだろう。可愛らしく瑞々しい歌唱が完璧なら、フルートやミュート・トランペットをフィーチャーした菊池俊輔のアレンジも完璧。あの3連符のイントロを聴いただけで童心に返ってしまう、という人も多いのではないだろうか。ED「青い空はポケットさ」と挿入歌6曲も、心温まる和やかな曲調のものばかりだ。
 同じ藤子不二雄作品でも異色作と言えるのが「ジャングル黒べえ」だろう。OP「ジャングル黒べえの歌」ED「ウラウラ タムタム ベッカンコ」では、ハイトーンの美声を持ち味とする大杉久美子にしては珍しく、怒鳴るような発声で土俗的なムードを演出している。
 タツノコプロの『風船少女 テンプルちゃん』は、挿入歌5曲が初CD化。過去のコンピレーションやベスト盤でも収録がなく、貴重なトラックだ。いずれもメルヘンチックでオンナノコ全開の、大杉久美子の本領発揮と言える佳曲揃いである。埋もれたままにならなくて本当によかった。

DISC-4 レアトラックコレクション

 まずは『ドンチャック物語』からOP・EDが2曲ずつ。第2期ED「星の川」はこれが初CD化となる。『まんがこども文庫』からはEDが3曲。初CD化の「ゆきがふる」はヴィブラフォンの伴奏による童謡調のノスタルジックなナンバー。童謡歌手としても豊富なキャリアを持つ、大杉久美子らしい楽曲だ。
 カバー曲は『未来少年コナン』OP「いま、地球が目覚める」、『赤毛のアン』OP「きこえるかしら」、『家族ロビンソン漂流記 ふしぎな島のフローネ』OP「裸足のフローネ」、『南の虹のルーシー』OP「虹になりたい」、『トム・ソーヤーの冒険』OP「誰よりも遠くへ」、『ニルスのふしぎな旅』OP「ニルスのふしぎな旅」と、やはり「世界名作劇場」関連が多めの選曲となっている。そして意表を突くのがラストで初CD化の「ストップ!!ひばりくん!」。1980年代らしい軽めのポップスに大杉久美子のヴォーカルという、あまり聴くことのできない組み合わせが楽しめる。

 このBOXには、記事中にて紹介した以外にもたくさんの楽曲が含まれている。興味のある方はコロムビア公式サイトにて収録曲の全容を確認していただきたい。

40th Anniversary 燦(きらめき)のとき やさしさの歌/大杉久美子

COCX-36193〜6/7,560円/コロムビアミュージックエンタテインメント
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(価格はすべて税込)

(10.05.25)