アニメ音楽丸かじり(35)
渡辺岳夫の没後20周年企画ベスト盤が発売!
和田 穣
我が家にtorne(PS3用の地デジチューナー)がやってきてから、2ヶ月が経った。torneはDVD等のディスクに番組をバックアップする機能を持たないが、代わりにPSPへと転送する事ができるのが特徴。そしてPSPで視聴する地デジの画質は、高画質(1Mbps)に設定した場合、かなり満足のいくものだった。これまで僕は、外出時に東芝のgigabeatを使用してワンセグを視聴していたが、さすがに解像度やビットレートに差があるだけあって、PSPで見る地デジの美しさは別次元だ。
今まで僕は、メインはあくまで自宅TVでの視聴であり、携帯用端末での視聴は補助的なものと考えていたが、torneとPSPの組み合わせには、それを覆すだけのポテンシャルを感じる。逆に、PSPがなければtorneの魅力も半減してしまうだろう。ソニーの戦略に踊らされている気もするが、出先で高画質の映像を見る楽しみは、一度覚えてしまうと止められない。
渡辺岳夫の命日である6月2日に、「One Man's Music 作曲家・渡辺岳夫の世界 [アニメ・特撮編]」と題した主題歌ベスト集が発売された。CD2枚にDVD1枚が付属する構成で、CDには主題歌がそれぞれ18曲ずつ、DVDにはオープニング映像を19本収録している。
渡辺岳夫ほどの大御所でも、個人名義のベスト集は少ない。どうしても作品のサントラやコンピレーションが多くなるのは、劇伴作家の宿命と言えるだろう。1995年にコロムビアからリリースされた渡辺岳夫 テレビ映画・アニメ主題歌集も現在では入手困難となっている。よって、ファンには本盤も早めに確保していく事をお勧めする。
Disc1の内容は、『鉄人28号』OP「鉄人28号の歌」、『巨人の星』OP「ゆけゆけ飛雄馬」、『アルプスの少女ハイジ』OP「おしえて」、そして「アタックNo.1」「キューティーハニー」と、誰もが知っているであろう定番曲を中心とした構成だ。
Disc2は、『無敵超人ザンボット3』OP「行け!ザンボット3」、『無敵鋼人ダイターン3』OP「カムヒア!ダイターン3 」、『機動戦士ガンダム』OP「翔べ!ガンダム」といったサンライズ制作・富野由悠季監督のロボットものが一方の柱。もう一方は、『あらいぐまラスカル』OP「ロックリバーへ」、『ペリーヌ物語』OP「ペリーヌものがたり」、「魔女っ子チックル」「キャンディ・キャンディ」といった、堀江美都子・大杉久美子の二大女性歌手に提供したナンバーが中心だ。
収録曲はいずれもこれまでにCD化された事があり、中古盤を含めて探せばコンプリートは不可能ではない。しかしこれだけの楽曲が、ひとつのベスト集にまとまっているところに価値があるだろう。例によって収録曲の全容については、キングレコード公式サイトにて確認してほしい。
なお、同日に「One Man's Music 作曲家・渡辺岳夫の世界[ドラマ編]」も発売されている。こちらは「白い巨塔」など初CD化音源がかなり含まれているので、興味のある方は併せてチェックしていただきたい。
これまでに膨大な数が作られてきたロボットアニメに比べると、ロボットマンガのオリジナル作品というのは手薄なジャンルと言えるだろう。5月29日より全国で劇場公開されている『ブレイクブレイド』は、その希少な原作のアニメ化である。現在の連載が「FlexComixブラッド」によるWeb配信というのも異色なら、全6部作を順次劇場公開するというのも異色だ。
音楽面での話題は、OP主題歌がKOKIA、ED主題歌が飛蘭という実力派女性シンガーの競演というところ。両曲とも劇場公開前の5月26日にCDがリリースされている。
OP主題歌「Fate」は、KOKIAの繊細なハイトーンに雄大なオーケストラが絡む、劇場作品らしい壮大なスケールの楽曲に仕上がっている。作詞・作曲はKOKIA本人で、編曲が伊藤真澄。伊藤は個人名義やOranges & Lemonsで主題歌を歌ったり、七瀬光名義で数多くの劇伴を手がけたりと、多彩な活動歴を持つ音楽家だ。
飛蘭が歌うED主題歌「SERIOUS-AGE」は作詞が畑亜貴、作編曲がElements Gardenの藤間仁という布陣。アップテンポのロック調にアグレッシブなストリングスが絡む曲調は、飛蘭の出世作「mind as Judgment 」(『CANAAN』OP)を思わせる。
(価格はすべて税込)
(10.06.08)