アニメ音楽丸かじり(36)
『刀語』『宇宙ショー』のサントラが発売!

和田 穣

 今回とりあげる作品は『刀語』だ。僕がこの作品を視聴した時に印象に残ったのは、第1話のアバンなど要所に使われている筆文字。「この特徴的な字体は……」と思って調べると、やはり岩畑剛一によるものだった。
 僕が最初に彼の文字に出会ったのは、今から10年ほど前。富沢ひとしの漫画「エイリアン9」のタイトルロゴを見た時だ。筆文字という古典的な表現手法を用いながらも、モダンなデザイン性を有するその書体には、強烈なインパクトがあった(ちなみに当時は、いんげん、印玄等の筆名を用いていた)。
 その後こちらからアプローチをした結果、ありがたいことに富沢先生が自ら仲介してくださり、岩畑さんは僕の主宰する音楽グループのロゴデザインを手がけてくれる事になった。直接お会いする機会はなく、電話とFAXのみのやり取りだったが、短期間で数十種類もの案を出してくれたのが印象に残っている。彼の生原稿は今でも僕の宝だ。
 その後の活躍については知る人もいることだろう。『破邪巨星Gダンガイオー』『すもももももも』『地獄少女』など、彼の筆文字を効果的に取り入れた作品は数多い。なかでも『刀語』は、時代劇ではあるものの現代用語もどんどん飛び出す世界観で、岩畑さんのモダンな書体との相性はバッチリだ。

 さてその『刀語』のサントラ第1弾が、ランティスより6月23日にリリースされる事となった。曲数は全22曲と少ないものの、ほとんどの曲が3分を超える。そのため収録時間は68分に及ぶ長さだ。通常の劇伴では1分半〜3分くらいの曲が多いから、『刀語』の音楽はTVアニメとしては珍しいスタイル。このあたり、1時間枠という独特の放映形態も影響しているのだと思う。
 音楽担当は岩崎琢。いまアニメ界で最も新作に注目が集まる作曲家の1人だろう。近年の『結界師』『天元突破グレンラガン』『SOUL EATER』『黒執事』では、毎回新しい作風にチャレンジしながらも、高いクオリティを維持し続けている。
 今回の劇伴も色々と新しい試みが詰まっている。まず第1話の冒頭でいきなり意表を突いた民謡コーラス。そして次回予告で流れる、馬子唄やオルティンドーのようなボーカル。姫神や川井憲次、平沢進らの作風との近似性を匂わせるが、そこにラップやオーケストラが絡んでくるのが岩崎琢ならでは。『刀語』が時代劇だからと言って、和楽器を多用した「いかにも和風」の音楽にはしていないところがいい。
 ちなみに作曲者のブログによると、サントラは今のところ全2作の予定だそうだ。『刀語』の劇伴は60曲を超えているらしいので、第2弾をリリースしてもまだ20曲近くがあぶれてしまう。できれば全曲を、なんらかのかたちで世に出してほしいものだ。

『刀語』劇中楽曲集 其ノ壱(音楽:岩崎琢)

LASA-5051/3,000円/ランティス
6月23日発売予定
[Amazon]

 いよいよ公開が今月26日に迫った、舛成孝二監督にとって初めての劇場作品『宇宙ショーへようこそ』。脚本に倉田英之、キャラクターデザインに石浜真史、さらに神宮司訓之、菊田浩巳、落越友則プロデューサーといった『R.O.D THE TV』のスタッフが再集結しており、実に楽しみな作品だ。
 音楽を担当するのは池頼広で、舛成作品では『かみちゅ!』に続いての起用となる。2000年以降アニメの劇伴を10作以上手がけているが、実写映画やTVドラマではさらにその数倍の作品歴を誇るため、どちらかと言えば実写作品の印象の方が強い作曲家だ。
 サントラ盤は6月23日にアニプレックスより発売予定で、CD2枚組に90分を収録予定となっている。興味深いのは、池頼広、舛成監督、落越プロデューサーによる座談会を収録しているところ。『宇宙ショー』の音楽がどのように生まれたのかを解説してくれる予定。もちろん、話題のスーザン・ボイルが歌う主題歌も収録している。

劇場『宇宙ショーへようこそ』オリジナルサウンドトラック

SVWC7690〜1/3,045円/アニプレックス
6月23日発売予定
[Amazon]

(価格はすべて税込)

(10.06.22)