アニメ音楽丸かじり(37)
『名作劇場』OP集、『FAIRY TAIL』サントラが発売!

和田 穣

 7月の新番組の中でも個人的に注目しているのが『みつどもえ』。さっそく視聴してみたが、OP主題歌「みっつ数えて大集合!」がかなりインパクトのある楽曲だったので、少し突っ込んで分析をしてみたい。
 この曲を聴いた人の多くが、恐らくハイテンションで忙しいイメージを持ったのではないか。テンポの速さがその大きな要因だが、その他にも色々と作曲上のテクニックが詰め込まれているため、とても情報量が多いのだ。
 まずはイントロ。「こっちきて〜」と主演声優3人が短いフレーズを歌った後、シンセの前奏が流れるところだ。歌の部分はEマイナーなのに、前奏の部分からはEメジャー。開始早々に同主調へと転調している。さらに譜割りが独特で、3小節という半端な長さであるうえ、歌の終わりが8分音符ひとつ多い(つまり拍子は9/8になる)。
 歌入り後の構成も独特だ。8小節のAメロが2回繰り返されるあたりは普通のポップス的だが、その後はBメロ、Cメロ、Dメロ、Eメロと4小節ごとに次々と新しい要素が出てきて、繰り返しがない。さらにサビでは主調の半音上のF(E♯)マイナーに転調し、最後は平行調のA♭(G♯)メジャーで終わっている。
 ちょっと専門的な話で分かりにくかったかもしれないが、要するにたった1分半のOPの中に、構成・拍子・転調とこれだけ沢山の変化が詰め込まれているため、情報量が多い印象を受けるのは当然というわけだ。もちろんこのOPの作風は、アニメ本編の内容ともぴったりと合っている。作曲当初から、敢えて「忙しさ・慌ただしさ」を狙ったものと見るべきだろう。

『みつどもえ』OP
「みっつ数えて大集合!」

LASM-4058/1,200円/ランティス
8月11日発売予定
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 さて今回は、先月に紹介し損ねた作品から取り上げてみたい。今年で放映開始から35周年を迎えた『名作劇場』シリーズのOP・EDを集めたDVDが、6月25日にバンダイビジュアルから発売されている。
 大杉久美子を起用した『フランダースの犬』『母をたずねて三千里』『あらいぐまラスカル』『ペリーヌ物語』といった初期の諸作から、シリーズ再開後となる近年の『レ・ミゼラブル 少女コゼット』『ポルフィの長い旅』『こんにちはアン〜Before Green Gables』まで全26作品を網羅。OP31曲、ED28曲の映像のほか、OP曲を中心にカラオケ映像も29曲を収録している。
 収録映像は基本的にノンクレジットだが、一部はテロップ入りの素材しかない作品もあるようだ。185分という収録時間でこの価格はお値打ちだろう。

世界名作劇場35周年記念 世界名作劇場 オープニング&エンディング集

BCBA-3874/2,940円/バンダイビジュアル
発売中
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 続いては7月7日の七夕に発売される『FAIRY TAIL』のサントラ VOL.2を紹介。この作品については、1月に発売されたサントラ VOL.1を以前の記事で絶賛しているので、そちらも参照していただきたい。
 サントラは36曲収録で63分の予定。 VOL.1の発売以降に追加で制作された楽曲と、 VOL.1に収録しきれなかったトラックが中心だ。『FAIRY TAIL』もすでに4クール目に突入しているから、新曲が必要になる場面も多いのだろう。
 今回のサントラでも、音楽の中心を占めるのは「ケルト音楽+ヘヴィメタル」の作風。ゴリゴリした激しいギターの上に、民俗的なパッセージを奏でるフルートやフィドルが乗ってくる異色のサウンドだ。冒頭の2曲はまさにその方向性の典型例と言えよう。
 そして VOL.1ではやや少なめだった、オーケストラ用の楽曲が大幅に増補されているのが VOL.2の特徴。特に9曲目「ファンタジア」は VOL.1の冒頭に収録されている「FAIRY TAILメインテーマ」のフレーズが引用されており、ケルト風ロックが見事にオーケストラ曲にアレンジされている。
 作曲の高梨康治は、自らがバンド経験も豊富なミュージシャンであり、本作も近年のアニメサントラでは珍しいほどにロックへのこだわりが光る。音楽が脇役に留まらず、どんどん自らを主張してくる作風は異端かもしれないが、その楽曲の個性とインパクトは、CDでじっくりと楽しみたくなる。普段サントラを聴かない人にも、チェックしていただきたい1枚だ。

『FAIRY TAIL』ORIGINAL SOUNDTRACK VOL.2(音楽:高梨康治)

PCCG-01057/3,150円/ポニーキャニオン
7月7日発売予定
[Amazon]

(価格はすべて税込)

(10.07.06)