アニメ音楽丸かじり(40)
コロムビアから充実の主題歌コンピレーションが登場!
和田 穣
先月から、趣味として木遣りの練習を始めた。木遣りは元々、土木作業の呼吸を合わせるために歌われた労働歌だが、最近では消防団の出初め式や、祭りに参加して練り歩く姿の方がよく知られる。法被姿の男達が、一斉に声を揃えて力強く歌うところを目撃した方もいるだろう。
木遣りは、「音頭」と呼ばれるソロパートと、「側」と呼ばれる斉唱パートに分かれて歌う。もちろん音頭は花形であり、達者な歌い手が声を出せば、周辺の空気がビリビリ震えるような迫力を感じる。元々が野外で歌われたものだから、鼻に掛けた甲高い声で、遠くまで声が届くように歌う。僕が木遣りを学ぼうと思ったのも、その独特の発声をなんとかモノにして、自分の歌に活かそうと思ったのがきっかけだ。
木遣りには音程やリズムを示すような譜面はなく、歌い回しは団体や個人によって異なるし、同じメンツでも毎回微妙にニュアンスが違ったりする。側の歌い手は呼吸を合わせるのが難しいから、それがピタッと揃った時にはなんとも気持ちがいい。
「コロムビア アニメ・特撮主題歌全集」「みんなアニメが好きだった」など、近年アニメ主題歌のコンピレーションを続々とリリースしているコロムビアから、また新たなシリーズが登場だ。コロムビア創立100周年を記念した企画として、8月18日に「アニメソング史(ヒストリー)」が3作同時にリリースされる。
それぞれ2枚組の構成に、レーベルを問わずに主題歌50曲前後を収め、ボリューム感は十分。楽曲はすべてオリジナル音源を使用し、フルサイズで収録している。「I」には1963年〜73年の作品より53曲、「II」は1973年〜77年の作品から50曲、「III」は1977年〜81年の作品から46曲という年代順の構成となっている。各タイトルの主な収録曲は以下のとおり。
「アニメソング史(ヒストリー)I」主な収録曲 |
『鉄腕アトム』OP |
「アニメソング史(ヒストリー)II」主な収録曲 |
『新造人間キャシャーン』OP/ED |
「アニメソング史(ヒストリー)II」主な収録曲 |
『ルパン三世(TV第2シリーズ)』OP/ED |
まさに日本のアニメ史、アニメソング史を振り返るような、名作・有名作が目白押しの豪華なラインナップ。3作すべてを購入すれば、1960〜70年代アニメの主要な主題歌は、ほとんどが網羅できてしまうのではないか。これからアニソンの古典を聴き始めるという方には、うってつけのタイトルだ。
有名曲中心の構成であるから、ほとんどの収録曲が既発のコンピレーションに収録されており、入手しにくいと思われるのは『原始少年リュウ』くらい。すでに同種のCDを多数所有している方のニーズには、あまりそぐわないかもしれない。ただ、選曲が良いこと、高音質のブルースペックCD規格であること、オリジナル音源である事などから一定のコレクション性があり、マニア層にアピールしても不思議ではない。
次々に新しいタイトルが登場するレコード業界で「決定盤」という言葉はあまり使いたくないが、この「アニメソング史」3作は、1960〜70年代アニメ主題歌の分野において、かなりそれに近い内容ではないかと思う。
また、同じく18日に「特撮ソング史(ヒストリー)I」「特撮ソング史(ヒストリー)II」も併せてリリースされる。こちらも充実した収録内容となっているため、興味のある方はチェックしてみるといいだろう。
(価格はすべて税込)
(10.08.17)