アニメ音楽丸かじり(43)
『オオカミさん』『Colorful』サントラを紹介!
和田 穣
この連載ではあまりキャラクターソングを取り上げないのだが、興味深いCDがあるので紹介したい。10月6日発売の『オオカミさんと七人の仲間たち』キャラクターソング集「オトギソングス BEST10」だ。正確にはキャラソン集というよりカバー集で、ジャケットイラストのように、各キャラクターがカラオケに行ってそれぞれ好きな歌を歌っている、というような趣向だろう。
選曲は1970年代を中心にやや古めのヒット曲が多く、ニコニコ動画で言うところの「オッサンホイホイ」な内容だ。竜宮乙姫の歌う「まちぶせ」、浦島太郎の「愛は勝つ」あたりはキャラクター性そのまんまで笑ってしまう。
注目すべきは冒頭の3曲で、伊藤かな恵(赤井林檎役)が「狼なんか怖くない」、釘宮理恵(宇佐見美々役)が「ミニモニ。ジャンケンぴょん!」、こやまきみこ(マジョーリカ・ル・フェイ役)が「ルージュの伝言」を歌うという企画だろう。いずれも特徴的なロリータボイスを持つ声優3名が、よく知られるこの3曲をどのように料理するのか楽しみだ。
その『オオカミさん』だが、サウンドトラック盤も9月22日にリリースされている。40曲収録で各曲が1分半〜2分という、実に劇伴らしい収録内容だ。
May'nが歌うOP「Ready Go!」と、OToGi8によるED「赤頭巾ちゃん御用心」は、それぞれTVサイズでの収録。ED曲はレイジー1978年のヒット曲のカバー。今でこそロックユニットとして知られるレイジーだが、初期はこの曲のようにアイドル色が強かった。
音楽担当は大橋恵。『機動戦士ガンダム MS IGLOO』『夢色パティシエール』などで知られる女性作曲家だ。本作では学園ものらしい、オーソドックスな劇伴スタイルを貫いていると言えるだろう。ホンキートンクピアノによる5曲目「いつもの日常」、マリンバによる7曲目「散歩道」など、日常描写のお手本とも言えるサウンドだ。ハチャトゥリアンの「剣の舞」を思わせる11曲目「負けるか!」は、3話終盤のミスコンテストを、コミカルに盛り上げていたのが印象的だった。
全般的には、木管やマリンバの音色を中心にした、柔らかで普遍的なサウンド。大橋恵にとって作曲の師匠である、池辺晋一郎が手がけた『未来少年コナン』に通じるものがあると感じた。
取り上げるのが遅くなってしまい、そろそろ上映が終了する劇場も出てきてはいるが、やはり『Coloful』のサウンドトラックは紹介しておこう。WEBアニメスタイルでも原恵一監督へのインタビューを行っているので、そちらも併せてご覧いただきたい。
サントラ盤は8月18日にリリースされており、全38曲を収録。曲数こそ多いが、未使用曲が3曲含まれており、その他の楽曲も同じテーマを使った変奏が多い。全体的な音楽のパターンは少なめという印象だ。音楽担当は大谷幸。アニメでは1990年代に『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』『新機動戦記ガンダムW』といった人気シリーズを手がけ、近年では『灼眼のシャナ』や『薄桜鬼』で知られるほか、実写映画も数多く担当しているベテランだ。
『Colorful』は原恵一監督らしい、抑制の効いた丁寧な演出が光る作品だけに、音楽の使い方も実に控え目で、奇をてらったところがない。使われる楽器も、ピアノとストリングスを軸にしたオーソドックスなもの。特に前半では、主人公・小林真の心象風景を反映するような、アンニュイなピアノ曲が大半を占める。エリック・サティの「夜想曲」、吉松隆の「プレイアデス舞曲集」を思わせるような、淡々としたクールで現代的なピアノサウンドだ。
終盤ではストリングスでしっかり盛り上げて感動させてくれるが、やはり抑制が効いており、押しつけがましいところがない。監督と作曲者との間で、きちんと意思統一が図られていた事が想像できる。
作中でのアクセントになっているのが、真の想い人・桑原ひろかの登場シーン。エレキギターが大胆に使用されたロック調の音楽を使用しており、彼女の奔放なキャラクターによくマッチしている。ひろかの私服が革ジャンというのも音楽にぴったりだ。
(価格はすべて税込)
(10.10.06)