アニメ音楽丸かじり(44)
『HEROMAN』『チャージマン研!』サントラが登場!
和田 穣
元々ゲームはそこそこ嗜む方で、最近でも「ライオットアクト2」「レッド・デッド・リデンプション」「モダン・ウォーフェア2」「ロロナのアトリエ」「アルトネリコ3」、そして輸入版の「PROTOTYPE」をプレイしている僕だが、へそ曲がりなので、これまで敢えて売れ筋の任天堂ハードには手を出さずにいた。
それが遂にNintendoDSの購入を決意させられたのは、10月28日に「Solatorobo〜それからCODAへ〜」という作品がリリースされるためだ。このゲームは、PlayStation時代の隠れた名作「テイルコンチェルト」の続編にあたるもので、『名探偵ホームズ』を思わせる可愛らしい獣人キャラクターと、ほのぼのとした世界観が特徴。
主題歌「For LITTLE TAIL」はKOKIAがデビュー前に吹き込んだもので、長らくCD化されずにいた(今年になってようやくマキシ「Road to Glory〜long journey〜」に収録された)。当時からすでにあのシャーマニックな歌唱スタイルは確立されており、TVCMでその声を聴いた時には衝撃を受けたものだ。
9月に放映を終了したTVアニメ『HEROMAN』のサントラ盤「HEROMAN MUSIC COLLECTION」が、10月27日にリリースされる。第1期OP「Roulette/TETSUYA」、第1期ED「Calling/FLOW」、第2期OP「missing/Kylee」、第2期ED「僕の手は君の為に/Mass Alert」の4曲すべてをフルサイズで収録した全31曲。73分を超えるボリュームたっぷりの1枚となっている。
通常TVアニメの劇伴は、職業作曲家が1人で手がける事が多いが、『HEROMAN』の場合はちょっと変わった作り方をしている。合計15組ものミュージシャンが起用され、しかも自らも演奏活動を行うアーティストタイプが多いのだ。サウンドの傾向としては概ねロック色が強く、ほとんどの曲にギターが使用されているところが特徴と言えるだろう。
アメリカ西海岸を舞台にした作品だけに、第1話でフィーチャーされた3曲目「FRIEND」は、BOSTONやVAN HALENを思わせる爽やかなアメリカンロック風。22曲目「INSOLENCE」はガレージロック風の痛快なナンバーだ。29曲目「HEROES」は最終話のクライマックスでもアレンジバージョンが流れ、作品全体の中でも重要な楽曲となっている。これら3曲を手がけた内山肇は、CM音楽の作曲家としてこれまで多くのCM制作に携わってきた売れっ子。ギタリストとしても国内外の有名アーティストと多数の共演を果たしている。
スクラッグ登場シーンに使用された6曲目「THE THEME OF SKRUGG」や、ヒーローマン起動シーンで流れる8曲目「RISE,FIGHT,PEACE」など、印象的な楽曲を提供したのがMETALCHICKS。Buffalo Daughterのシュガー吉永によるユニットだ。ヘヴィメタルに派手なシンセを加えたサウンドは、『HEROMAN』の世界観にほどよくSF的なニュアンスを加えている。
その他のアーティストについても、ブックレットにプロフィールが記されているので、興味のある方はチェックしてみてほしい。『HEROMAN』サントラの楽曲は、ロックミュージックとして完成度が高く、長さも2分を超えているものが多い。作品のお供としては勿論のこと、単体でも楽しめるのではないかと思う。特にロック好きの人にはおすすめだ。
近年ネットの一部で妙な盛り上がりを見せている『チャージマン研!』。1970年代に放映されたナック制作の10分枠アニメだ。駆け足すぎるシュールな展開と、不条理なほどあっけらかんと突き放したセリフ回しなどが、一部で大ウケ。2ちゃんねるやニコニコ動画などでカルト的な人気を得るに至った。2007年には全話を収録したDVD-BOX上下巻もリリースされている。
そしてこの度、10月27日に初のサウンドトラック盤「チャージマン研!Tribute to Soundtracks vol.1」が発売となる。ディスク2枚組の構成で、1枚目が音楽ディスク、2枚目はCD-ROMとなっている。CD-ROMには全話の画コンテが収録されており、コアなファンにとっては嬉しい特典だろう。コンテの内容については、公式サイトにサンプルが掲載されているので、チェックしてみていただきたい。
音楽ディスクの内容は、主題歌「チャージマン研!」、挿入歌「研とキャロンの歌」、そしてBGM21曲が収録されているほか、注目点としては、豊富なアレンジ&トリビュートの数々が収録されていること。まず主題歌「チャージマン研!」を、大槻ケンヂfeat.後藤沙緒里がNARASAKIプロデュースによってカバー。「大槻ケンヂと絶望少女達」のような激しいロックではなく、つぶやくように歌うオーケンと、ウィスパーボイスの後藤のハーモニーによる癒し系サウンドで、これが見事にはまっている。挿入歌「研とキャロンの歌」はロリータ18号によるカバー。普段の作風どおりに、元気でパンキッシュな疾走チューンに仕上がっている。
そのほか、JAGUAR、掟ポルシェ、COOL&CREATE、磯田収、諸田英慈といった面々が、『チャー研』にインスピレーションを受けた楽曲や、本編中の音素材を用いた楽曲を提供している。磯田収による「大回転皆殺し」は、第16話「殺人レコード 恐怖のメロディ」でフィーチャーされたBGMのアレンジ曲だ。一部で有名なあの曲が、さらに狂気を増したバージョンになっている。
ブックレットは全48ページという充実のボリューム。主題歌の歌詞カードがあるのは勿論、BGMについては使用シーン例まで記してある親切さだ。見どころはスタッフへのインタビューで、企画担当でナック(現ICHI)社長の西野聖市や、プロデュースの茂垣弘道が放映当時を振り返って、『チャー研』制作の舞台裏をたっぷりと語ってくれている。
(価格はすべて税込)
(10.10.19)