アニメ音楽丸かじり(53)
劇場『ファフナー』OST、勇者シリーズのコンピが発売!

和田 穣

 昨年12月25日から劇場公開された『蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』は、小規模の公開ながら、今月まで続くロングランとなった。これから公開される地域もあるようだ。TVシリーズの放映終了からすでに6年が過ぎているが、まだまだ根強い人気を感じさせる。ファンに、そしてスタッフに愛されている作品なのだろう。

 その劇場『ファフナー』のサウンドトラック盤が、2月23日にキングレコードから発売になる。全29曲収録の60分で、曲長は劇場作のためまちまちだが、おおむね1分半〜3分ほど。主題歌「蒼穹」は含まれていない。本編カットを印刷したカード10枚、12ページのブックレットが付属する仕様で、『ファフナー』らしく空と雲の柄をあしらったPPケースに入った、なかなか美しいパッケージだ。
 音楽を担当する斉藤恒芳は、クライズラー&カンパニーでの活躍で知られる作曲家。アカデミックな教育を受け、クラシックの編曲経験も豊富な、正統派の音楽家と言えるだろう。ところどころで見せる現代音楽的なアプローチも魅力だ。アニメの劇伴では、2007年の話題作『電脳コイル』を手がけたほか、『天地無用! in LOVE2 遙かなる想い』や、『劇場版XXXHOLiC 真夏ノ夜ノ夢』などの劇場作品も印象深い。
 TVシリーズ『ファフナー』の劇伴と言えば、ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団を起用した、壮大なオーケストラサウンドが特徴だった。今回のサントラは国内収録の新録だが、楽曲のクオリティでは見劣りしていない。「乙姫—ワルキューレ—」など、TVシリーズのBGMをまったく違うアレンジで再録音しているトラックもあるので、聴き比べてみるのも面白いだろう。
 楽曲はオーソドックスな劇伴のスタイルとはやや異なり、近現代のクラシック音楽に近い印象だ。メロディを大仰に歌い上げる場面は控えめで、知性を刺激するような緻密な音楽の数々が楽しめる。ショスタコービチのごとく、複雑にうねるアンサンブルの24曲目「作戦開始」や、流れるようなフルートやピアノのパッセージで天空を表現した27曲目「空上での選択」、ストラビンスキーのようにカラフルで刺激的なアレンジが光る28曲目「人類軍の火」など、いずれも斉藤恒芳の技術と才能が際だった内容となっている。

『蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』オリジナルサウンドトラック

『蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』オリジナルサウンドトラック(音楽:斉藤恒芳)

KICA-3137/3,000円/キングレコード
2月23日発売予定
[Amazon]

 1990年放映の『勇者 エクスカイザー』を皮切りに、毎年続けてTVシリーズ8本が制作されたのが、いわゆる「勇者シリーズ」だ。そのスタートから20年が経過した事を記念して、2月23日に3種類のCDがリリースされる。まずは主題歌ベストアルバムである「More BRAVEST」、主題歌カバーアルバム「HARVEST」、そして2作のセット商品である「GREATEST」だ。
 まず「More BRAVEST」だが、こちらは1997年に発売された「BRAVEST」の後継商品とでもいうべき位置づけ。同作から漏れていた『エクスカイザー』と『勇者王ガオガイガー』の主題歌を追加し、さらにノンテロップOP・ED集を収めたDVDをつけた2枚組の内容だ。
 CD・DVDとも、『エクスカイザー』『太陽の勇者 ファイバード』『伝説の勇者 ダ・ガーン』……と放映順どおりで、それぞれのオープニング曲とエンディング曲を時系列で並べた構成となっている。DVDで久しぶりに各作品のOP・EDを視聴したが、懐かしさがこみ上げてきた。勇者シリーズのOPといえばロックのイメージが強いし、実際ロック調の楽曲は多いのだが、唯一『勇者司令 ダグオン』は、古典的なアニメソングに接近した作風で異彩を放っており、個人的には印象深い。
 ラストに収められた楽曲「Always」は「BRAVEST」からの再録。エレピを活かした心地いいロッカバラードだ。歌うは速水奨、松本梨香、伊倉一恵、檜山修之、渡辺久美子、南央美といった、各シリーズでメインキャストを務めた声優たちだ。「忘れないで その笑顔 ときめきを」と繰り返されるリフレインには、各シリーズの思い出が甦り、思わず目頭が熱くなった。

勇者シリーズ20周年記念「More BRAVEST」

VTZL-27/3,045円/フライングドッグ
2月23日発売予定
[Amazon]

 続いて主題歌カバーアルバム「HARVEST」を紹介。こちらは8作のオープニング曲をカバーしたトラックと、それぞれのカラオケ版を収録した全16曲で70分の内容だ。
 のっけからアコギとパーカッションのみ、というシンプルな編成による「勇者王誕生!」(『ガオガイガー』)に驚かされるが、歌っているのがZIGGYのボーカリスト、MORISHIGE, JUICHI(森重樹一)というのも驚き。もちろん曲との相性もばっちりだ。2曲目「輝け!!ダグオン」を担当したのは、川添智久と鵜島仁文によるユニットTOPGUNで、彼らはアルバム全体のサウンドプロデュースも担当している。スピードメタル風のド派手なアレンジが痛快だ。
 「僕らの冒険」(『ゴルドラン』)の田村直美、「HEART TO HEART」(『ジェイデッカー』)を歌った米倉千尋あたりは、得意とするポップロック調のアレンジのため、まったく違和感のない仕上がり。南里侑香の「嵐の勇者(ヒーロー)」(『マイトガイン』)は、これまで彼女が歌ってきた梶浦由記の楽曲に近い、ミステリアスなアレンジが楽曲にハマっている。
 トリを飾るのはFictionJunctionによる「Gatherway」(『エクスカイザー』)。アレンジは是永巧一と梶浦由記の共作だ。聖歌隊のようなコーラスとロックの組み合わせ、ヴァイオリンの導入などは近年の梶浦ソングの王道的なサウンド。原曲のメロディのよさを活かしながら、スケール感を大幅に引き上げた名カバーだと感じた。

勇者シリーズ20周年記念「HARVEST」

VTCL-60242/2,730円/フライングドッグ
2月23日発売予定
[Amazon]

 最後に、「More BRAVEST」「HARVEST」2作品がセットとなったパッケージ「GREATEST」も簡単に紹介しよう。これは両作をまとめて外箱をつけたもので、内容は同じ。もちろんOP・EDを収めたDVDも付属する。両方を買うよりも価格が安いので、熱心ならファンならこちらがおすすめだ。

勇者シリーズ20周年記念「GREATEST」

VTZL-26/5,250円/フライングドッグ
2月23日発売予定
[Amazon]

(価格はすべて税込)

(11.02.22)