アニメ音楽丸かじり(57)
『これはゾンビですか?』サントラ2作を紹介!
和田 穣
意表を突く主題歌とフィルムで、これまで何度も僕らを驚かせてきた京都アニメーション×ランティスがまたやってくれた。春の新番組『日常』のオープニング曲「ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ−C」である。京アニ制作のTVアニメで初の男性歌手、しかもニコニコ動画出身のアーティスト、おまけにデビュー曲という異例づくしの主題歌だ。
ヒャダインは、最近『みつどもえ』の主題歌・キャラソン等で注目を集めている作曲家・前山田健一の別名義で、ニコニコ動画への投稿を中心に活動してきたアーティスト。ゲーム音楽等のパロディを中心に、自らピッチシフトで女声パートまでをも歌う。今回のデビュー曲もその持ち味を活かして、1人多重録音でドゥーワップ風のコーラスをやっている。彼には以前からCDデビューのオファーがいくつもあったそうだが、全て断ってきたとか。今回満を持して、京アニ作品のオープニング曲という絶好の位置でのデビューとなった。
京アニ×ランティスは、『涼宮ハルヒの憂鬱』『らき☆すた』等で、主演女性声優をフィーチャーしたヒット曲をいくつも世に送り出してきたが、今回はそういった過去のヒット路線を踏襲しなかったところに意義があると思う。
先頃放映を終了した『これはゾンビですか?』のサントラ盤「めっちゃサントラ」が3月9日に発売された。そしてこのディスクに収録されなかったテイクを集めた「めっちゃ挿入歌&めっちゃサントラ番外編」のリリースが4月20日に控えている。今回はこの2枚を併せて紹介したい。 音楽担当は柿島伸次。どちらかと言えば歌手としての活動が多く、劇伴は『天体戦士サンレッド』に続いて本作が2作目となる。歌手としては、『The Soul Taker』エンディング主題歌「MEMORY」、『機動戦士ガンダム MS IGLOO 2 重力戦線』エンディングテーマ曲「PLACES IN THE HEART」などで知られる。近年では、かっきー&アッシュポテトの一員として歌った『エレメントハンター』のエンディング主題歌「スイヘイリーベ 〜魔法の呪文〜」が話題になった。
まず「めっちゃサントラ」の内容だが、3月9日にリリースされており、全41曲収録で51分。曲数からも分かるとおり、各曲は1分前後の短いものが中心だ。manzo作のオープニング主題歌「魔・カ・セ・テ Tonight」と、エンディング主題歌「気づいてゾンビさま、私はクラスメイトです」のTVサイズも収録されている。ブックレットには作曲の柿島伸次による解説つき。楽しんで作曲した様子が伝わってくる。
劇伴の世界では、あまりメロディを前面に押し出さない作風も多いが、本作は短くてキャッチーなフレーズによるライトモチーフを使ったスタイル。例えば6、12、15、18曲目は同じメロディのアレンジバージョンだ。
また、主人公・歩の自宅でのシーンが多い作品だけに、日常場面の音楽が豊富なのも大きな特徴。2、4、7、8、19、38曲目等がそれで、これだけのバリエーションをよく作り出したものだと感心してしまった(日常音楽は、シンプルなだけにバリエーションを作るのが難しく、よく作曲家泣かせだと言われる)。
続いては「めっちゃ挿入歌&めっちゃサントラ番外編」だ。こちらは4月20日リリース予定で、全28曲で68分。曲数の割りに時間が長いのは、挿入歌4曲とそのカラオケ版、そして長尺のBGMを多く収録しているため。
その挿入歌だが、最終話でのアイドルデビュー、キャラソン合戦という予想外の展開が話題になったのは記憶に新しいところ。ハルナ、セラ&サラス、サラス、ユーそれぞれの楽曲が収録されている。ハルナのキャラソン「そりゃ魔装でしょ!Rock'nRoll」は曲名からして駄洒落で、作詞・作曲を担当したmanzoらしいコミカルなロックナンバー。劇中で「ひどい歌」と形容されたように、歌詞も歌い方も八方破れだが、ハルナの可愛い声とも相まってガールズパンクのような痛快な仕上がり。他の3曲はいずれも、昨年デビューした歌手・中野愛子が作詞を担当しており、こちらも要チェックだ。
BGMでは「4話スペシャルBGM」「9話スペシャルBGM」などを収録。サントラ1作目に含まれていた定番の楽曲以外の、各話におけるスペシャル曲だ。3分〜7分台とまとまった長さで収録されており、それぞれをたっぷりと楽しめる。
(価格はすべて税込)
(11.04.19)