アニメ音楽丸かじり(60)
『緋弾のアリア』『スイートプリキュア♪』サントラが登場!

和田 穣

 わりと最近になってから知ったのだけれど、MOSAIC.WAVがイベントで限定発売していたミニアルバムについて、音楽配信サイトでの取り扱いが開始されたようだ。「こどもざいく・やみもざいく」「おとこの娘のトビラ」「全世界的タッチパネル」の3作。iTunes、Amazon、moraなどで入手可能だ。CD形態での販売はなく、いまのところ配信のみとなっている。入手できなかった人にとってはありがたい話である。

 4月から放映中の『緋弾のアリア』は、破天荒で荒唐無稽な設定が目白押しの楽しい作品。第1話からして、UZIを乱射しながら追いかけてくるセグウェイとか、防弾仕様の跳び箱とか、生徒全員に拳銃携行を義務づけとか、ありえない設定ばかりで大いに笑わせてもらった。これは友人を集めてワイワイ言いながら見ると盛り上がるタイプのアニメだ。
 その『アリア』のサウンドトラック盤が6月22日リリースされる。全39曲を収録して、CDの収録時間を目一杯使った約73分のボリューム。オープニング主題歌「Scarlet Ballet」とエンディング主題歌「カメリアの瞳」も、それぞれTVサイズで収録している。音楽担当の尾澤拓実は、GANASIAでの活動で知られるアーティスト畑の出身。アニメの劇伴は昨年放映された『おおかみかくし』に続いての2作目となる。
 1曲目「事件勃発」、5曲目「暴走セグウェイ」、16曲目「武器強奪作戦」といったアクションシーンの音楽と、3曲目「平和な朝」、4曲目「今日から二年生」、11曲目「キンジに春が来た!」などの日常シーンを彩る音楽を柱とし、他にも爽やかシーン、コメディシーンなど、音だけを聴いても各場面をイメージできるような「分かりやすさ」が特徴だ。31曲目「アリアを守る!」は往年のスパイ映画や刑事ドラマのいいとこどりのような曲調で、この作品を象徴する楽曲。
 尾澤拓実はGANASIAでもシンセを派手に使ったサウンドを得意としていたが、本盤でも全編にわたってシンセをフル活用。ギター以外の生楽器はあまり使われていないが、シンセの音作りが巧みなので、充分にカラフルでバラエティ豊かなサウンドを楽しめる。

『緋弾のアリア』教養学部 音楽教材 ORIGINAL SOUNDTRACK

VTCL-60261/3,045円/フライングドッグ
6月22日発売予定
[Amazon]

 6月1日に発売された『スイートプリキュア♪』のサウンドトラック盤を紹介していなかったので、今回取り上げてみたい。高梨康治の手による『プリキュア』劇伴も、『フレッシュプリキュア!』『ハートキャッチプリキュア!』に続いてこれが3作目。当初は彼の勇壮でロック色の強い作風と、女児を主なターゲットとした『プリキュア』との相性に疑問を持つ人も多かったかもしれないが、『プリキュア』の特徴である格闘中心のアクションシーンにはぴったりで、今やすっかりシリーズに欠かせない要素となった。一部のファンからは、この音楽性を評した「キュアメタル」なる言葉まで生まれた。
 『スイートプリキュア♪』は音楽をテーマのひとつとしており、舞台、登場人物、敵キャラクターなどの多くが音楽にちなんだ用語から名づけられている。したがって劇伴が重要なカギを握るのは、言うまでもないだろう。劇中で描かれる正義と悪、心の強さと弱さといった対立軸を象徴するのが、4曲目「幸福(しあわせ)のメロディ」と26曲目「不幸のメロディ」という2曲。共に女声ボーカリーズを使った楽曲だが、その曲調はおよそ正反対。聞き比べてみると面白いだろう。ちなみに後者をメタル調にアレンジしたのが6曲目「出でよ!ネガトーン」。レインボーの「バビロンの城門」のようなアラビア風音階を奏でる妖しげなギターは、とても日曜朝8時半のアニメとは思えない(笑)。
 9曲目「プリキュア大活躍」は、ジャーマンメタルを思わせる疾走感あるリズム隊に、オーケストラと女声コーラスまで加わった壮大なロックチューン。聴いていると思わずガッツポーズしたくなるような、テンションの上がる1曲だ。一方で18曲目「あこがれの音楽王子隊 〜ピアノと弦楽四重奏による〜」は、クラシック音楽の中でも難しいとされるカルテットに挑戦しており、高梨サウンドがロックだけではない事を証明してくれる。
 2011年ベストサントラの候補となるであろう、充実の1枚だ。

『スイートプリキュア♪』 オリジナル・サウンドトラック1

MJSA-1007/3,150円/マーベラスエンターテイメント
発売中
[Amazon]

(価格はすべて税込)

(11.06.07)