アニメ音楽丸かじり(64)
『かってに改蔵』サントラ、ヒャダイン新曲を紹介!
和田 穣
キングレコードからOVA『かってに改蔵』エンディング主題歌「ナニがナニでナニなの…」と、BGMの両方を1枚に収録したCDが7月27日にリリースされた。
エンディングを歌うのは新☆谷良子。CDのオビには「魅惑の新星」とまで書いてある。もはやどこから突っ込めばいいのか分からないが、ネット上のスラングが『【俗・】さよなら絶望先生』の黒板ネタで公式となり、ついにはアーティスト名義までなってしまった珍しいパターン。アニメの声優クレジットでもこの名義が使用されている。新谷良子もよくOKしたものである(笑)。
オープニング主題歌は往年の特撮ヒーローを意識したと思われる作風(なにしろ演奏しているバンドも「特撮」だ)だが、エンディングの方は、『アタックNo.1』『キューティーハニー』『聖戦士ダンバイン』など、様々なアニメソングへのオマージュが垣間見える。作詞作曲は先頃『日常』の主題歌をヒットさせた、ヒャダインこと前山田健一。「おにゃにゃのこ…だもんっ!!」「心がふにふにするだもんっ」などの恥ずかしいセリフ満載の歌詞は、きっと突っ込んだら負けなのだろう。
劇伴を担当したのは川田瑠夏。『絶望先生』シリーズでは「強引niマイYeah〜」「オマモリ」「暗闇心中相思相愛」といった主題歌や、キャラクターソングを数多く手がけた作曲家。これまで主に歌ものを手がけてきたが、本作では全ての劇伴を担当。ちなみに彼女は、『絶望先生』の劇伴を手がけた長谷川智樹と同じ事務所に所属している。
楽曲の方向性としては、全般的にレトロさが持ち味。トランペットを活かした昭和歌謡風のテーマメロディを、5曲目「ゆけ!改蔵!」6曲目「イケテル日常」34曲目「それでも戦うんだ!」と変奏しながら多用している。音数の少なさもポイントで、セリフが矢継ぎ早に繰り出される『改蔵』の作風への配慮だろう。また、8曲目「幼き日々」の重厚なストリングや、11曲目「宇宙人ついに飛来!?」などの、ユーモラスながらどこか耽美的な曲調は、『絶望先生』との共通性も感じさせる。
さてその「ナニがナニでナニなの…」を手がけた前山田健一だが、ヒャダイン名義でのCD第2弾も8月3日にリリース予定だ。TVアニメ『日常』の後期オープニング主題歌「ヒャダインのじょーじょーゆーじょー」である。ヒャダインによれば、おもちゃ箱をひっくり返したようなアップダウンの激しい曲調は、製作側のオーダーによるものだという。楽曲の良さを最大限に引き出す、オープニングフィルムの出来はさすが京都アニメーションだ。カップリング曲「リア充ってこんなもんだっけ?」は前作「ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C」の続編となる内容で、今度は両想いについて歌ったもの。COCOのイラストによるPVがストーリー性も高くて秀逸。ゲストとしてニコニコ動画でのコンテストに勝ち抜いた、「ディスクン星人」が参加。トーキングモジュレーターを巧みに操り、シンセの音を口腔内で変化させて、まるでボーカルのように聴かせる技を披露している。
プロ/アマの垣根を越えたコラボレーション、PVの公開、視聴者を巻き込んだコンテストなど、ヒャダインはさすが出身者だけあってニコニコ動画の使い方がうまい。こういったスタイルが、2010年代型アーティストプロモーションのモデルケースになるのかもしれない。
(価格はすべて税込)
(11.08.02)