アニメ音楽丸かじり(74)
年の瀬に満を持して『化物語』の音楽集が登場!
和田 穣
2011年の「アニメ音楽丸かじり」は今回の更新で最後となる。今年1年でサントラ24作、コンピレーション・企画盤13作、主題歌13作、その他3作で合計53作のCDを紹介することができた。来年も沢山の素晴らしいアニメ音楽と出会いたいものだ。
前回の記事では紹介できなかったが、僕は「~俺の妹がこんなに可愛いわけがないComplete Collection+~俺妹コンプ+!」を購入している。主に早見沙織の歌う「白いココロ」(第4話ED)を聴くためだが、フルサイズでは初収録となる「星くず☆うぃっちメルル」主題歌「めてお☆インパクト」も、田村ゆかりの声にぴったりで大いに楽しめた。
『俺妹』は、ご存知のとおりニコニコ動画で主題歌を公募した事で話題となった作品だが、いずれの楽曲も明確にキャラソンとしての方向性を打ち出しており、田中公平が言う「主題歌のキャラソン化」という近年のトレンドの最終形態だったのかもしれない。
2009年を代表する大ヒット作でありながら、これまでサントラが未発売だった『化物語』の音楽集がついに12月21日に登場だ。作品の放映開始から2年半と時間は空いたものの、同日にBlu-ray Disc Boxが発売され、来年1月からはTVアニメ『偽物語』の放映、そして時期はまだ未定だが劇場『傷物語』の公開も控えており、またこのシリーズが盛り上がるのは間違いないだろう。
僕も購入した本作のBD版「つばさキャット(上)」「同(下)」には、それぞれサントラを収録した特典CDが付属していたが、今回の音楽集ではそこに含まれていない初出のBGMも多数収録している。曲数で言うと初出の方がずっと多いくらいだ。もちろん「staple stable」「帰り道」「ambivalent world」「恋愛サーキュレーション」「sugar sweet nightmare」「君の知らない物語」と主題歌もきっちり全曲を網羅しているので、まさにコンプリート盤と言えるだろう。2枚組に153分を収録しながら、価格は3500円とお手頃なのも嬉しいところ。
ちょっとややこしくなるが、僕と同じようにBDをすでに持っている方のため、各ディスク収録曲の詳細を見ていこう。まずディスク1は全31曲中、主題歌が6曲、「つばさキャット(上)」収録BGMから「序章」「街談巷説」「観念」「戦争」「廃墟」「修験道」「神域」「以下、回想」の8曲、「同(下)」収録BGMから「素敵滅法」「毒舌」「表裏」の3曲、そして初出が14曲だ。
ディスク2は全39曲中、「つばさキャット(上)」から「人畜」「戯言」の2曲、「同(下)」から「散歩」「放浪者」「思案中」「バカロリート」「輔翼」「色ボケ猫」「お人よし」の7曲、そして初出が30曲とたっぷり。特に「つばさキャット」では多くの新曲が使われていたのに、BD版特典CDでは大半が漏れていた。今回の完全収録はファンにとっては嬉しいところだろう。
現在、残念ながら体調不良のため仕事を控えている神前暁だが、本作ではミニマルミュージックを多用した作風を用いて、アニメ劇伴に新しい一歩を記した事は特筆されるべきだろう。それまでもミニマルの手法を取り入れた劇伴はあったが、『化物語』ほど全編にわたってフィーチャーされたケースは、過去になかったはずだ。主題歌5曲でも各ヒロインのキャラクター性を表現しつつ、良質のポップスに仕上げる仕事ぶり。今まさに創作の絶頂期にある作曲家だと思うので、健康を取り戻してまた良質な音楽を生みだしてほしいと切に願う。
1993年に東芝EMIより発売された、『ふしぎの海ナディア』の11枚組CD-BOX「コンプリート・サウンド・コレクション」が、装いも新たに12月21日にリリース。発売元がキングレコードに変わったが、内容面では旧盤とほぼ同様だ。変更点としては、旧盤のブックレットをデータ化してDVD-ROMに収録したこと。これによって1枚ディスクが増えている。そして価格は13860円と旧盤のほぼ半分になり、手に入れやすくなった。
ディスク構成を見ていこう。まず最初の2枚が主題歌・挿入歌集の「ヴォーカル編1」「ヴォーカル編2」で、「カラオケ編1」「カラオケ2&ミックスト・アップ・ナディア」と続く。カラオケ編は文字どおり主題歌・挿入歌のカラオケで、「ミックスト・アップ・ナディア」は、主要キャラクターのセリフを取り入れたハウス風ミックスだ。
そして「BGM編1」「BGM編2」「BGM編3」「BGM編4」と鷺巣詩郎によるBGM集が続く。「フックト・オン・ナディア」は劇中の使用曲や挿入歌をメドレー形式に再構成した企画盤だ。「バイ・バイ・ブルー・ウォーター」「グッド・ラック・ナディア~バイ・バイ・ブルー・ウォーター・パート2」は庵野秀明監督自らが原作を担当したドラマCDとなっている。文字どおり、このBOXだけで『ナディア』関連CDをほぼコンプリートできる内容だ。
鷺巣詩郎がガイナックス作品に音楽を提供するのは本作から。本放送から20年以上が経過した作品だが、今でも音楽のクオリティとサウンドは、まったく古さを感じさせない。ストリングスの派手で攻撃的なアレンジは、近年のアニメサントラ以上と思わせる部分も多い。また随所に特撮作品を思わせる金管楽器・打楽器の用法があり、まさに庵野監督好みの音楽だと言えるだろう。後の『新世紀エヴァンゲリオン』との類似点も多く、聞き比べてみるとより一層楽しめるはずだ。
(価格はすべて税込)
(11.12.20)