アニメ音楽丸かじり(83)
今年の春は菅野よう子楽曲の大豊作!(1)
和田 穣
4月から放送が始まったNHKの連続テレビ小説「梅ちゃん先生」の主題歌は、SMAPが歌う「さかさまの空」だ。作曲・編曲は菅野よう子で、彼女らしくハイブロウな1曲に仕上がっている。相手が朝ドラだろうがSMAPだろうが、一切手加減をしないのが菅野らしい。Aメロは分散和音を多用した難しいラインだし、サビでもメイン唱者が声を延ばしている間に、対旋律が入り込んでくる複雑な構成。これをカラオケで歌うのは難しそうだ。幅広い視聴層が見る時間帯だけに、朝ドラの主題歌は比較的平易なものが多かったように思うが、「さかさまの空」はそれを覆す挑戦的な楽曲だと感じた。
軽やかなバイオリンの前奏・間奏や、ピアノとアコギによるオーガニックなリズムは、坂本真綾の初期楽曲を思わせる。普段SMAPの楽曲を聴かない層や、アニメソングのファンにもアピールする内容ではないだろうか。
その菅野よう子が音楽を担当する『坂道のアポロン』オープニング主題歌で、元JUDY AND MARYのYUKIが歌う「坂道のメロディ」のシングルCDが、5月2日にリリースされた。新曲「プレイボール」との両A面扱いで、初回生産限定盤には「プレイボール」のPVを収録したDVDが付属する。
YUKIが高校時代にバンドで演奏する喜びを知って感じたという「初めての恋のようなときめき」を、そのまま封じ込めた歌詞はまさに『坂道のアポロン』のテーマそのもの。薫や千太郎が感じたであろう音楽への強い初期衝動を、余すところなく表現している。
サウンド面では、曲中ずっと鳴り続けているスネアドラムがポイント。オープニング映像における千太郎のカットでも、カメラがちゃんとスネアドラムを中心に追っているので、そのあたりに注目してほしい。映像と音がきちんとシンクロしているのだ。
『坂道のアポロン』オープニング主題歌
「坂道のメロディ」
初回生産限定盤:ESCL-3895〜3896/1,500円/
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通常盤:ESCL-3897/1,020円/
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最後に、5月2日に発売となった『かんなぎ』のサントラ+キャラクターソング集「なぎおと+なぎうた 完全盤」を紹介したい。TVシリーズ放映終了から3年以上経っての発売となったが、待たされた甲斐のある内容となっている。ディスク2枚組の構成で、1枚目に劇伴39トラックと主題歌「motto☆派手にね!」「産巣日の時」を収録。2枚目に劇伴の残り18トラックと、キャラクターソングをそれぞれ3バージョンで収録している。
『かんなぎ』のサントラは、DVD3巻および7巻の特典としてのリリースのみだったので、これが単体CDとしては初の商品化となる。今回のCD化にあわせて、特典CDには未収録だったトラックが追加されている。
同様にキャラクターソングも、DVD5巻の特典となっていたものだ。主に第10話の「カラオケ戦士 マイク貴子」で使用されたもので、各キャラクターがカラオケで歌ったという設定の劇中歌だ。楽曲クレジットは劇中では変名になっていたが、実際はもちろん神前暁の作曲によるもので、作詞は山本寛(監督)、倉田英之(脚本)、武梨えり(原作)が担当。それぞれTV放映バージョン、カラオケバージョン、そしてオリジナル(フル)バージョンの3種類を収録している。
特に花澤香菜の絶妙に調子っ外れな歌が楽しい「Delicateにラブ・ミー・プリーズ」や、スタッフの悪ノリの極地と言える「しりげやのテーマ」、そして戸松遙の名歌唱によって爆笑のトラックに仕上がった「ハロー大豆の歌」は、このCDのハイライト。『かんなぎ』を代表する音源と言えるだろう。
(価格はすべて税込)
(12.04.17)