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【情報局】浦沢義雄脚本の実写映画
「ゲルマニウムの夜」作品紹介&祝賀会ルポ


(C)2005 Arato Film Inc.
 WEBアニメスタイルにて好評連載中の「練馬大根日記」でもおなじみ、浦沢義雄が脚本を手がけた実写映画「ゲルマニウムの夜」が、東京・上野の一角座にて公開中だ。原作は芥川賞を受賞した花村萬月の同名小説。監督をつとめる大森立嗣は、これが長編デビュー作となる。
 舞台は、広大な雪原と森に囲まれた教会の教護院。主人公の朧(ろう)は人を殺し、ほとぼりを冷ますため、この地に舞い戻ってきた。彼はそこで、暴力、姦淫など、冒涜の限りを尽くし、宗教と神を挑発する。その一方で、彼の前に次々と立ち現れる、不条理な狂気や欲望。だが不思議と彼は傷つかない。やがて奇妙なカリスマとなっていく朧。「あいつがいちばん、神に近い」――かつて老神父が遺した言葉どおり、朧はその境地へと辿り着くのか?
 あらすじだけ見ると深刻な内容を想像するかもしれないが、本作はとても黒い心で純粋なものを見つめた映画なので(誉めてます)、思わず吹き出してしまうような意地悪なユーモアがそこら中に仕掛けられている。特に、教え子に性行為を強要する変態院長の末路など、爆笑ものだ。脚本を書いた浦沢義雄も、「この映画は笑いながら観てほしい」と語っている。
 主演の新井浩文は、「青い春」「ジョゼと虎と魚たち」「血と骨」などの作品で、強烈な存在感を示してきた若手俳優。待望の初主演作となる本作では、主人公・朧のカリスマ性を見事に体現した。脇を固める広田レオナ、佐藤慶、早良めぐみ、山本政志といった多彩なキャスト陣の演技も見逃せない。
 大森監督は、力強さと繊細さが混在する演出で、近年まれに見る個性的な作品を作り上げた。暴力とセックス、血や内臓といった刺激的な描写よりも、冷たく澄みきった映像と、音響の美しさが印象に残る。劇中には、監督の父で舞踏家・俳優の麿赤兒、「殺し屋1」の主演で知られる実弟の大森南朋も出演している。
 上映劇場となる一角座は、東京国立博物館の敷地内に建てられた特設劇場。「ゲルマニウムの夜」はこの一角座でしか上映されず、半年以上に及ぶ長期興行を予定している。生ぬるいメジャー作品に飽きて、新鮮な映画体験がしたい人には、ぴったりの作品だ。

 去る12月17日には、映画の公開と一角座のオープンを記念し、祝賀パーティが催された。会場となった法隆寺宝物館には、本作のキャストやスタッフの他、著名なスターや映画人達も多数出席し、実に華やかなムードが漂っていた。その模様がこちら。

↑多くの関係者やゲストが集まった会場。 ↑本誌連載でもおなじみ、脚本の浦沢義雄。

↑堂々の主演をつとめたスター、新井浩文。 ↑修道女テレジアを熱演した広田レオナ。

↑教子役の早良めぐみは、本作で映画デビュー。 ↑小宮院長役で強烈な印象を残す石橋蓮司。

↑赤羽修道士を好演した山本政志。本業は映画監督。 ↑朧を慕うトオル少年役の木村啓太。

↑製作総指揮の荒戸源次郎。 ↑パーティではキャストと監督による挨拶も行われた。

 映画「ゲルマニウムの夜」は、上記のとおり東京国立博物館内の特設映画館・一角座にて、現在公開中。入場料金は当日2000円と、一見やや高めだが、博物館の観覧料(420円)も込みである。博物館が休館となる年末年始も、一角座は通常どおり開館。土日祝には、ゲストによる舞台挨拶とサイン会が行われる。また、毎週金曜日はインターナショナル・デイとして、英語字幕版を上映。その他の詳細に関しては、下記公式サイトを参考にしてほしい。

「ゲルマニウムの夜」

●キャスト
朧/新井浩文
テレジア/広田レオナ
教子/早良めぐみ
トオル/木村啓太
宇川/大森南朋
北/津和孝行
隊長/大楽源太
赤羽修道士/山本政志
荒川/三浦哲郁
老店主/麿赤兒
小宮院長/石橋蓮司
戸川神父/佐藤慶

●スタッフ
原作/花村萬月 (文藝春秋刊)
監督/大森立嗣
脚本/浦沢義雄
撮影/大塚亮
音楽/千野秀一
製作総指揮/荒戸源次郎
プロデューサー/村岡伸一郎
製作/ネオプレックス、荒戸映画事務所

●公式サイト
http://www.aratofilm.com/

●関連サイト
東京国立博物館
http://www.tnm.jp/

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(05.12.27)

 
 
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