世間では「萌え」「電車男」が流行語となり、「オタク産業」がもてはやされた2005年。アニメ界もまた、そうした世間の流れや期待に絡め取られた1年だったのではなかろうか。
TVアニメの本数は昨年に比べればやや落ち着きをみせたものの、それでもまだまだ数多い。制作的な問題を数多く抱えつつも、ヒット作や秀作もあれば賛否かまびすしい作品もあるという賑やかさだった。一方、劇場作品は、強烈な大作が並んだ昨年に比べ小粒ではあったが、『ONE PIECE』『Zガンダム』『鋼の錬金術師』等が話題を呼び、『NARUTO』『ガッシュベル!!』『×××HOLiC』など、キリッとした佳作が目立った。他に動画配信、音楽配信などで大きな動きがあったのも特徴だ。経済、政治、行政、教育との関連も無視できなくなっている。
果たして2006年はどうなるのか。占うべく、アニメ界2005年のあれこれを年の瀬に振り返ってみよう。
[1月]
▼『ああっ女神さまっ』TV版放映(7日)
人気長寿マンガ「ああっ女神さまっ」が、最初のOVAから12年を経て、初のTVアニメーション化。メインスタッフ&キャストは従来のOVA、劇場版から変わらず。2006年には第2シリーズの放映も予定されている。
▼第59回毎日映画コンクール各賞発表(18日)
2004年の公開作品が対象で、アニメーション関連では、アニメーション映画賞に新海誠監督の『雲のむこう、約束の場所』、大藤信郎賞に湯浅政明監督の『マインド・ゲーム』、日本映画ファン賞に宮崎駿監督の『ハウルの動く城』が選ばれた。
[2月]
▼『サザエさん』放映回数1800回に(13日)
▼『ドラえもん のび太の恐竜2006』発表(15日)
「コロコロコミック」(小学館)誌上にて、来春の劇場新作が発表。2005年は劇場新作は公開されなかった。
▼第8回文化庁メディア芸術祭開催(25日)
3月6日まで。富野由悠季が司会を担当、湯浅政明や大地丙太郎が出席した「アニメーション部門」の受賞者シンポジウムは、立ち見席まで満員になる盛況ぶりだった。
[3月]
▼『ONE PIECE ―オマツリ男爵と秘密の島―』公開(5日)
細田守監督初の劇場長編。異色作とも言える内容にファンの間で賛否両論が起きた。
▼「Newtype」(角川書店)4月号で、20周年を迎える(10日)
▼『機動戦士ガンダムSDESTINY』サブタイトルで誤表記(19日)
22話のサブタイトルが画面では「PHASE-21 蒼天の剣」と表示される。のちに「PHASE-22」であるとの訂正がネット上で告知された。
▼愛・地球博(愛知万博)開幕(25日)
『となりのトトロ』に出てくる住居を模した「サツキとメイの家」が人気を呼ぶ。当初はローソンの端末を使って申し込む方法がとられたが、入館引換券がネットオークションなどで転売される事態が横行し、申し込み方法が変更されるなど、様々なトラブルも。
▼『テニスの王子様』放映終了(30日)
178話「さよなら王子様」で終了。2001年10月より3年半に渡る放映で、女性を中心に人気を集めていた。原作マンガは「週刊少年ジャンプ」(集英社)に今も連載中。
▼東京国際アニメフェア2005開催(31日)
4月3日まで。今年で4回目を迎え、すっかり定着した感がある。コンペティションでは、アニメーションオブザイヤーに『ハウルの動く城』、公募部門グランプリに細川晋『鬼』が選ばれた。
[4月]
▼大阪芸術大学芸術学部キャラクター造形学科開設(1日)
「キャラクター原論」をベースに、マンガ制作、アニメーション制作、ゲームデザインの三分野で構成され、クリエイター養成を目指す、という。京都精華大学に日本初のマンガ学科、東京工芸大学に日本初のアニメーション学科が設立されて以来、美術系大学を中心に、マンガ・アニメ関連の学科設立の動きが相次いでいる。例えば、その京都精華大学は2006年にマンガ学部を新設、中にアニメーション学科を設ける予定で、小川博司、くずおかひろし、中田実紀雄、杉井ギサブロ−、前田庸生らを教授陣に迎えている。また神戸芸術工科大学も同じく2006年にメディア表現学科開設を予定し、安彦良和らを教授に招聘した。大阪、京都、神戸とも、従来アニメーション関連の講座を持っていたが、より商業アニメーションを志向した組織改変を行っているのが特徴だ。
▼『サザエさん』のワカメ役が津村まことに(3日)
1976年より担当していた野村道子から約30年ぶりに交替。津村でワカメ役は3代目となる。
▼『ガラスの仮面』再TVアニメ化(6日)
『ガラスの仮面』が21年ぶりにTVアニメに。1984年版で主役の北島マヤを演じていた勝生真沙子は、ライバル姫川亜弓の母・歌子役で出演。
▼『勇者王 ガオガイガー FINAL GRAND GLORIOUS GATHERING』放映開始(11日)
既存のOVA『勇者王 ガオガイガー FINAL』8本を、一部に新作や取り直し音声などを加えて、12話に構成し直しTV放映した。
▼ノイタミナ枠スタート(15日)
フジテレビが「連ドラのようなアニメ」をキャッチフレーズに、20代の女性層を強く意識した深夜アニメ枠“ノイタミナ”を新設。ANIMATIONを逆さに読んだ言葉で、従来のアニメの常識を覆したいという思いから名づけられたという。第1弾は羽海野チカ原作、カサヰケンイチ監督、黒田洋介脚本の『ハチミツとクローバー』。
▼『ドラえもん』リニューアルスタート(15日)
これまでとキャストを一新、監督に楠葉宏三、キャラクターデザインに渡辺歩など、スタッフも大きく変え、ハイビジョン化し、新シリーズとしてスタート。
▼『クレヨンしんちゃん』ハイビジョン化(22日)。
▼『MUNTO 時の壁を越えて』リリース(23日)
京都アニメーションの自主制作アニメ『MUNTO』の続編。1作目は自主流通であったが、この続編は一般流通での販売がかなった。
▼無料映像配信『GyaO』スタート(25日)
有線ブロードワークスが手がける無料の動画配信事業が、正式サービスを開始。有線ブロードワークスは『交響詩篇 エウレカセブン』をスポンサードするなど、積極的に動画配信事業に乗り出している。12月14日には登録者数が500万を突破したと発表された。12月19日にはヤフーが無料動画配信の大幅拡大を発表、2006年1月からはテレビ東京アニメ公式サイトが動画配信を予定しているなど、この分野も風雲急を告げている。
[5月]
▼出崎統6年ぶりのTVシリーズ『雪の女王』放映開始(22日)
1997〜1999年に放映された『白鯨伝説』以来、久々のTVシリーズを出崎統が手がける。先立つ2月には、監督を務めた美少女ゲーム原作の劇場版『AIR』も公開されている。
▼劇場版『機動戦士Zガンダム A New Translation 星を継ぐ者』公開(28日)
1985年に放映されたTVシリーズを再編集し、新作画を加えて3部構成としたものの、第1部。80館程度の公開で10億に迫る興収を上げる、スマッシュヒットとなった。第2部「恋人たち」は10月29日に公開、第3部「星の鼓動は愛」は2006年3月公開予定。
[6月]
▼『ファイトだ!! ピュー太』待望のDVD-BOX化(29日)
これまで26本中の1本のみがソフト化され、そのエピソードのクレイジーぶりが評判を呼んでいた伝説的カルトアニメが、ついに全話ソフト化された。
▼『かみちゅ!』放映開始(28日)
翌7月より放映の『ぺとぺとさん』『苺ましまろ』、春開始の『絶対少年』も含め、実在の地方をモデルにし、生活感を重視した美少女ものが次々放映された。
[7月]
▼「VIDEO LABO」が「DVD LABO」に(8日)
「アニメージュ」(徳間書店)イチの長期連載であった「VIDEO LABO」が8月号より、「DVD LABO」に衣替え。「VIDEO LABO」は7月号までで243回を数えていた。
▼「GUNDAM 来たるべき未来のために」開催(15日)
大阪サントリーミュージアムにて。現代アートの担い手達がガンダムをテーマに競作するという展覧会で、主催者によれば「ガンダム世代のキュレーター、アーティスト、クリエーターの感性を通じ、『機動戦士ガンダム』に描かれていた「戦争」、「進化」、「生命」、そして同アニメが巻き起こした「文化現象」をキーワードに、そこに内包されたメッセージを読み解く試み」という。東京でも11月8日より上野の森美術館にて開催され、盛況を呼ぶ。
▼『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』公開(23日)
TVシリーズの完全な後日談で、メインスタッフが引き続き参加。主に第1次世界大戦後のドイツを舞台に、濃密なドラマを展開した。
▼「アニメーション:RE」創刊(23日)
インデックス・マガジンズ(現・インデックス・コミュニケーションズ)より。親会社のインデックスは携帯向けコンテンツ事業を中心とする会社で、マッドハウスなどを子会社に持つ。他にも10月に「プロダクションI.Gマガジン」(日経BP社)、11月に「NewWORDS」(角川書店)、12月に「アニメトランス」(ワニブックス)、「アニメーションノート」(誠文堂新光社)など、ムックや増刊形式で、アニメーション関連の雑誌が各種創刊されている。
▼明治期のアニメーション発見(30日)
セーラー服の少年が振り向いて敬礼するという、35ミリのフィルムで50コマ程度のもの。京都の旧家が蔵を処分する際に見つかった映写機や古いフィルムを、映像史研究家の松本夏樹が入手、発見した。フィルム印刷の技法や映写機の年代から、1900年代、明治末期のものとみられる。従来は、記録上から、大正期のものが日本最古のアニメーションとして確認されていた。
[8月]
▼ネット音楽配信大手iTunes Music Store、日本上陸(4日)
▼『AQUARION』19話「―けがれなき悪戯―」放映(9日)
うつのみや理が絵コンテ、作画監督を担当(絵コンテはこでらかつゆきと、作監は高橋裕一と共同)。エピソードの性格上、キャラクターや画面作りなど、うつのみや理のテイストを前面に押し出した展開で視聴者に強い印象を残し、公式サイトにも様々な声が寄せられた。
▼島津冴子がフォウ役交替についてコメント(18日)
劇場版『機動戦士Zガンダム』のフォウ・ムラサメ役の配役交替について、TV版のフォウ役であった島津冴子が自身のサイトにコメントを寄せ、一部のファンが騒然となった。
▼楠部大吉郎逝去(27日)
享年70歳。シンエイ動画会長。東映動画を経て、Aプロダクションを設立。『巨人の星』の作画監督などを務める。後、Aプロダクションをシンエイ動画に改組し、社長として『ドラえもん』などを製作した。
[9月]
▼アニメーション関連の教養書続々(12日)
津堅信之『アニメーション学入門』が平凡社新書の1冊として刊行。他にも秋田孝宏『「コマ」から「フィルム」へ』(NTT出版、7月刊)、大塚英志『「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか』(角川oneテーマ21、11月刊)なども。個々の内容はともかく、作品や作家ではなく、アニメーション全体を扱った、専門書でなく一般向けの教養書・新書の出版が相次いだ点は注目される。
▼劇場新作『北斗の拳』発表(15日)
2006年3月全国東宝系で公開予定。3年間にわたり全5部作の構想という。映画ファンド形式により、制作資金を集める事も発表され、その著作権とファンド管理のためノース・スターズ・ピクチャーズが設立されている。
▼『ミルモでポン!』シリーズ大団円(27日)
『わがままフェアリー ミルモでポン! ちゃあみんぐ』が「みんないっしょにミルモでポン!」で最終回となった。2002年4月より3年間4シリーズ続き、通算172話を数える人気作だった。
[10月]
▼『機動戦士ガンダムSDESTINY』放映終了(1日)
爆発的な人気となった『ガンダムSDESTINY』が第50話「FINAL PHASE 最後の力」にて最終回を迎える。当日は、東京国際フォーラムに5000人のファンを集め、「『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』から『BLOOD+』へ」と題した、『ガンダムSDESTINY』最終回のリアルタイム上映+「BLOOD+」の試写上映というイベントも、毎日放送主催で開かれた。
▼第10回アニメーション神戸開催(2日)
アニメーション神戸賞の表彰が行われた。個人賞に吉田健一、作品賞・劇場部門に『機動戦士Zガンダム A New Translation 星を継ぐ者』、同テレビ部門に『巌窟王』、同パッケージ部門に『トップをねらえ2!』が選ばれている。
▼“移民惑星もの”放映相次ぐ(7日)
この日始まった『舞―乙HiME』をはじめ、『甲虫王者 ムシキング 森の民の伝説』『交響詩篇 エウレカセブン』『ガン×ソード』『ARIA The ANIMATION』と移民惑星を舞台にした作品がなぜかこの年重なってTV放映された。
▼ジャンプアニメ花盛り(7日)
『BLACK CAT』が放映開始。この年放映されていた「週刊少年ジャンプ」関連のアニメは『ONE PIECE』『テニスの王子様』『NARUTO』『ボボボーボ・ ボーボボ』『BLEACH』『アイシールド21』『いちご100%』、そして『プレイボール』で、80年代後半のジャンプアニメ全盛期を彷彿させる活況ぶり。
▼『まんが 日本昔ばなし』再放映スタート(19日)
かつてのお化けタイトルがデジタルでリニューアルの上、ゴールデンタイムでの再放映が始まった。
[11月]
▼『BLACK CAT』がアニメ誌の表紙に登場(10日)
「アニメージュ」12月号の表紙が『BLACK CAT』に。「週刊少年ジャンプ」掲載のマンガがアニメ誌の表紙を飾るのは異例の事。同誌では次号予告で「ジャンプアニメがアニメ誌の表紙に初登場!!」とわざわざ謳っていた。『BLACK CAT』は翌月の「アニメディア」(学習研究社)1月号の表紙にもなっている。
▼『ガイキング』約30年ぶりの復活(12日)
『ガイキング LEGEND OF DAIKU-MARYU』が放映開始。1976年放映の『大空魔竜 ガイキング』と内容に直接の関係はないが、大空魔竜やガイキングのデザインはオリジナルを踏襲したものとなっている。
▼紀宮の結婚式でのドレスが話題に(15日)
天皇家の長女・紀宮(黒田清子)が結婚。式の衣装が「『ルパン三世 カリオストロの城』のクラリスのドレスを模したものではないか」と一部で報道される。
▼山下毅雄逝去(21日)
脳血栓のため。享年75歳。アニメでは『ルパン三世[第1作]』『ガンバの冒険』等の作曲を手がける。
▼「フジ・IG・ラボ・フォー・ムービーズ」開設を発表(25日)
フジテレビジョンとプロダクションI.Gは共同で、デジタル・ポストプロダクション・スタジオ「フジ・IG・ラボ・フォー・ムービーズ(FILM)」の開設を発表。
▼有澤孝紀逝去(26日)
膀胱がんにより。享年54歳。『美少女戦士セーラームーン』や『デジモンアドベンチャー』シリーズなど、数多くのアニメの音楽を手がけた作曲家。
▼『機動戦士ガンダムSDESTINY』累計出荷数100万枚突破(28日)
『機動戦士ガンダムSDESTINY』のセルDVDの10巻までの累計出荷数が100万枚を超えた、とバンダイビジュアルが発表。
▼WAO大学院大学の設立を断念(28日)
株式会社ワオ・コーポレーションが、デジタルアニメの制作者らを養成する目的で設立を目指していた「WAO大学院大学」に対して、教育研究活動に専念できる教員がほとんどいないと文部科学省から指摘され、認可が下りず、同社は設立を断念した。この大学院は、杉並区が支援、株式会社立、初のアニメに特化した大学院という構想が3月に発表され、注目されていた。
▼バンダイと葦プロの資本提携解消(29日)
バンダイは、保有する葦プロダクションの全株式を同社社長に売却、両者は資本提携を解消した。
[12月]
▼「アニメージュ」編集長が松下俊也に(10日)
本日発売の1月号より。同誌編集長を2度以上務めるのは、松下が初めて。
▼スタジオジブリの新作は『ゲド戦記』(13日)
東宝とスタジオジブリが、アーシュラ・K・ル=グウィンの名作ファンタジー「ゲド戦記」を製作、来夏公開すると発表。宮崎駿の長男で、ジブリ美術館館長の吾朗が初監督を務める。
▼今年の邦画興収ベスト10、アニメが1位2位に(13日)
2004年から引き続き公開のものも含み、今年公開の日本映画の興行収入ベスト10が明らかになった。1位は『ハウルの動く城』(196億、2004年公開)、2位は『ポケットモンスター アドバンス ジェネレーション ミュウと波導の勇者 ルカリオ』(43億)とワンツーフィニッシュ。洋画を含めた国内全興行でも、『ハウル』が1位、『ポケモン』は6位を占めた。
▼富野由悠季最新作『リーンの翼』がネット配信で公開(10日)
富野由悠季の完全新作『リーンの翼』が、ネット配信アニメとしてスタート。正式配信は16日からだが、この日、時間限定で無料先行公開された。
▼第9回文化庁メディア芸術祭受賞作決定(17日)
アニメーション部門の大賞は榊原澄人の『浮楼』。優秀賞に『死者の書』『かみちゅ!』『flowery』『年をとった鰐』『seasons』が選ばれた。
▼プロダクションI.GがJASDAQ上場(21日)
上場発表は11月16日。売り出し初日は価格がつかず、翌日、公開価格51万円の3.5倍となる180万円の初値がついた。
▼『銀盤 カレイドスコープ』最終回にAlan Smi Theeが参加(25日)
最終回(12話)「シンデレラ」の演出としてAlan Smi Theeなる名前がクレジットされた。Alan Smitheeとの関係は不明。アラン・スミシーについてご存じない方はネットを検索の事。
(05.12.28)
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