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広島に虫プロ出身5大監督集結!
広島国際アニメーションフェスティバル2008


 2年に1度、広島で開かれる国際アニメーションフェスティバル。今年も、8月7日〜11日まで、無事に開催された。原爆記念日の翌日からという日程で、宿の確保に苦労した人も多かったようだ。
 ご存知の方にはいまさらの説明だけれども、このイベントは、日本で唯一、ASIFA(国際アニメーションフィルム協会)公認の映画祭である。インディペンデントのフィルムメーカー、アニメーション作家を中心に、様々なアニメーションが上映される。ちなみに、日本のアニメも4℃の短編やI.GのCMなどが上映されていた。
 中でも大きな2本柱が、特集テーマごとの上映と、各国の作家からの応募作を公開審査するコンペティションだ。
 コンペでグランプリを受賞したのは、公式サイト等で既報のとおり、山村浩二の『カフカ 田舎医者』。続く大きな賞であるヒロシマ賞と観客賞をダブル受賞したのが、加藤久仁生の『つみきのいえ』。『田舎医者』はカフカの不条理な短編をアニメーションにしたもの、『つみきのいえ』は海に浮かぶ家に住む男性の日常をノスタルジックに描いた作品だ。『田舎医者』は昨年のオタワで短編部門のグランプリ、一方『つみきのいえ』はすでに今年のアヌシーの短編部門のグランプリと、すでに高評価を得ている日本人の2作品が広島も制するかたちとなった。

▲画面の歪みが不安感をあおる『カフカ 田舎医者』


▲海にたたずむ家の秘密とは……『つみきのいえ』


 『田舎医者』は松竹製作、『つみきのいえ』は「ALWAYS 三丁目の夕日」などで知られるROBOT製作と、両作ともメジャー資本に支えられているところが面白い。日本において、短編アニメーションがビジネス的に一種のブームになっているのを象徴するようだ。
 ただ、これが日本のアニメーションの実力を反映したものだ、と見るのは早合点だろう。というのも、今回コンペや特集上映も含めて目立ったのは、フランス語圏の作品だったからだ。フランス、ベルギー、あるいはカナダに大変印象的な作品が多かった。コンペ応募数も、日本、韓国についでフランスが179作品と3番目に多く、『マダム・トゥトゥリ―プトゥリ』(カナダ)、『オクタポディ』『ア・リトル・ファーザー』『ザ・ハート・イズ・ア・メトロノーム』『ミナスキュル 』(以上フランス)と受賞作の多数を占めた。聞けば、フランスでは長編の制作が大変盛んになっているとか。フランス語圏アニメーションの行方には要注目だ。


▲3DCGのタコが見せる逃亡劇『オクタポディ』

▲生々しい表現が異色の人形アニメ『マダム・トゥトゥリ―プトゥリ』

 特集上映に目を転じれば、フィンランド特集が大変なボリュームだった。1960年代のCMから最新長編まで種々雑多な作品が11プログラムも用意された。1プログラムはだいたい2時間前後なので、その規模が分かるだろう。
 企画が目白押しな中、アニメスタイルにとって大注目だった特集が、手塚治虫回顧上映。中でもすごかったのが、「オサムとアトムとアニメの日々」と題する、虫プロ作品にかかわった演出家のトークだ。出席者が、杉井ギサブロー、りんたろう、出崎統、高橋良輔、富野由悠季(虫プロ入社順)と、都内でも一堂に会する事など、ほぼありえないメンバーだ。
 1時間弱という短い時間、しかも通訳を間に挟みながらとあって、さほどたっぷりしたものではなかったが、それでも5人5様の個性のぶつかりあいは、それだけで十分に面白いものだった。例えば、「手塚治虫は優しかったか厳しかったか」という質問に対して、富野「優しかった。それは映画観の違いからきていて、手塚先生のそれは自分と比べて甘いのではないかと思っていた」、高橋「最初にコンテを描いた時、(手塚の作業部屋のある)2階から絵コンテが降ってきて、描き直してと言われた。厳しかった」、出崎「そうなんだ。こちらは一部に手を入れてくれたよ(笑)。人間だから、厳しいのも優しいのも両方あるよね」、りん「とにかく人使いが荒かった(笑)」、杉井「こちらを作家として扱ってくれた。その意味で虫プロは作家集団だった」と、手塚治虫の個性ばかりか、それぞれの監督の個性すらうかがえる答えが返ってくるという具合。高橋、富野両監督を、「話が長い」とたしなめるりん監督などという場面が見られただけでも、観客は大喜びだった。トークの最後に、呼ばれれば今後とも広島に来ます、と富野監督が断言していたので、次回以降の登壇にも期待したい。
 和洋長短を問わず、アニメーションのシャワーを浴びることができる5日間。2年後の開催が今から楽しみだ。(文・小川びい)



●公式サイト
広島国際アニメーションフェスティバル
http://hiroanim.org/ja/


(08.08.26)

 
 
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