日仏合作『よなよなペンギン』製作報告会見
「アーティストはボーダレスで通じ合う」
7月13日、東京日仏学院で12月公開の劇場アニメ『よなよなペンギン』の製作記者会見が行われた。『よなよなペンギン』は、日本のマッドハウスとフランスのデニス・フリードマン・プロダクションが共同製作し、シンガポールのメディア・コープも製作に参加した国際色豊かな長編3DCGアニメ。ペンギンコートを着て夜な夜な散歩する少女ココが、不思議な異世界で冒険を繰り広げるアドベンチャーファンタジーだ。原案・監督を務めるのは名匠りんたろう。日仏合作の長編アニメとしては今までにない規模の大作であり、りん監督とマッドハウスにとっては初のフル3DCG長編となる。キャラクターデザインを人気イラストレーターの寺田克也が手がけ、すでに世界16ヶ国での公開が決定しているなど、完成前から話題に事欠かない作品だ。
記者会見の会場は、夜のムードからもペンギンの涼しげなイメージからもかけ離れた、夏の日差しきらめく屋外ステージ。まずは、丸田順吾マッドハウス社長、フランス側の共同製作者デニス・フリードマン、そして駐日フランス大使フィリップ・フォール氏が壇上で挨拶。日本とフランスの優秀なスタッフが協力し、かつてないプロジェクトが実現できた誇りと喜びを、三者三様にコメントした。
続いてスタッフ、キャストがステージ上に登場。りんたろう監督を始め、ヒロイン・ココ役の森迫永依、彼女と仲良くなるゴブリン・チャリー役の田中麗奈、ひねくれ者の少年ザミー役の太田光(爆笑問題)、そしてゴブリン村を支配しようと企む闇の帝王ブッカ・ブー役の田中裕二(爆笑問題)が勢揃いした。
りん監督曰く、本作は「世界一可愛くて、おブスな映画」。キャスト陣もそれぞれ演じた役柄について、時に笑いも交えながら語った。
森迫 ココはとても明るく元気な女の子です。純粋で、素直で、友達を助けるために一所懸命に頑張る思いやりもある。その優しさは見習いたいと思いました。
麗奈 今回、なかなか演じる機会のない男の子役をやらせていただいて、とても嬉しかったです。チャリーはどちらかというと、男らしいというより気弱でオドオドしたキャラクターなので、そのあたりの可愛らしさを出せればと思いました。ただ、「キャッ!」とか「ワア!」とか、突発的なリアクションがどうしても女の子っぽくなってしまって、「そこは少年っぽく」とダメ出しされて、収録はなかなか難しかったです(苦笑)。
爆笑・太田 今回、ポニョ役を演じました太田です(笑)。ザミーのへそ曲がりなところは僕によく似ていると言われますね。まず僕が先にキャラクターを演じて、そこからアニメができたという作り方だったので(笑)。一種ドキュメンタリーに近いと思います。僕と森迫さん、田中麗奈さんの3人は、この映画のために1年間ペンギンと一緒に生活したんですけど(笑)、それも結構つらかったですね。
爆笑・田中 僕が演じたのは闇の帝王ブッカ・ブーという、キャラ的には対極にある役柄です。凄く怖い役で、ホントならデーモン小暮さんとかが演じる役だと思うんですけど(笑)。自分とは全く正反対のキャラクターなので、難しかったですね。
このあと、フィリップ・フォール大使と共に、辻口博啓シェフによる特製ペンギン・ケーキを囲んだフォトセッションが行われ(ページトップ写真)、少し時間を置いてから記者会見がスタート。和やかなムードの中、爆笑問題の2人が繰り出すギャグが会場を沸かせ、トークは楽しく進んだ。
(自分の演じたキャラクターの好きなところや、自分との共通点は? という質問に対して)
森迫 明るく元気なところ、友達思いの優しさも好きです。大好きなお父さんをなくした悲しみをこらえる強さにも憧れます。自分と似ているところは、諦めないところ。「ペンギンは空を飛べる」と信じ続けるココは、自分と重なると思いました。私も何かを諦めてしまうことが嫌なので。
麗奈 普段は臆病なんだけど、友達のために自分自身で変わろうとする、男らしくなろうとするチャリーのひたむきさが好きですね。
爆笑・太田 ザミーはヒネクレ者ですが、ヒネクレていながら、みんなと一緒に頑張ろうとする健気なところは自分と似てます。でも、本当は森迫ちゃんのやったココの方が好きなんですけど(笑)。なんでココ役の話が来なかったのかなあ?
爆笑・田中 来るわけねえだろ! 僕の役は、正直あんまり好きになれるところがない……(苦笑)。他のみんなはそれぞれ魅力的なキャラクターだと思うんですけど。高橋ジョージさんがやったココのお父さんとかね。共通点も、どちらかというと太田の演じたザミーの方が、僕の見た目と近いですし。ただ、ブッカ・ブーは凄くデカいという設定なので、それはちょっと嬉しかったです(笑)。森迫さんとは前に実写版「ちびまる子ちゃん」で共演していて、あの時はちっちゃかったのに、今はもう僕と同じくらいの身長になっていてショックでした。
(フランスのアニメに持つイメージ、また今回の現場で感じた日仏の違いは? という監督への質問に対して)
りん フランスのアニメは、それこそTVアニメから劇場作品から、いろんな種類のものがあります。ただ、僕個人の事で言うと、アニメというより(実写)映画のイメージが強い。僕は中学生の時からフランス映画を観続けてきましたから。合作の現場では、作品の作り方はもちろん、言語や文化など、いろんな違いが表れてきます。でも、アーティストというのはボーダレスで通じ合うところがある。なかなか面白い仕事ができたと思っています。
(爆笑問題のお2人はフランスに対して何か思い入れは? という質問に対して)
爆笑・田中 大雑把な質問ですねえ(笑)。
爆笑・太田 エッフェル塔とか好きですよ。東京タワーみたいで。
爆笑・田中 エッフェル塔の真似して作ったのが東京タワーなんだよ!
爆笑・太田 あと、さっき監督もフランス映画がお好きだとおっしゃってましたけど、僕も「天井桟敷の人々」のジャン=ルイ・バローに憧れたりして、それが芸人を目指すきっかけになったりしてるんですよね。だからフランスにはちょっと片思い的な感情があって、今回、日仏合作のアニメに声優として参加できたのも嬉しくて……あ、でもこれ、フランスで公開される時はフランス語吹き替えになるから、僕の声が向こうで聞かれることはないんですよね?
りん そうですね。
爆笑・太田 なんだ、やってられねえよ!(笑) まあ、それはともかく、僕もりん監督のアニメを観て育ってきた世代ですから、収録の合間にいろいろとお話させていただいたりしました。ずっと宮崎駿監督の悪口ばっかり言ってましたけど(笑)。今回の映画は、絵本みたいなファンタジー世界だけど、日本文化もちょっとずつ入ってるんですよね。そのあたりの演出をフランスのお客さんがどう思うのか、興味があります。
(特に思い入れのあるシーン、苦労した場面などはありますか? という監督への質問に対して)
りん よくそういう質問を受けるのですが、特に「ここが苦労した」とか「ここは思い入れがある」ということはなく、全カット・全シーンに精魂を傾けて作っています。3DCGアニメという分野では、アメリカのピクサーが断トツで優れたものを作っていますが、そこに僕らが追従しても決して敵うわけがない。だから今回の『よなよなペンギン』では、今まで僕らが50年間培ってきた2Dアニメのノウハウ、そのDNAを組み込んで、ピクサーとは全く違う新しいフルCGアニメを作ろうという意図がありました。「絵本が動き出す」というコンセプトを実現させるため、背景美術に相当な力を入れています。これがかなり大変でした。そこにキャラクター等をマッチさせるという苦労もある。だから全カットに思い入れがありますね。
最後に、スタッフ・キャストがそれぞれに日仏交流のマニフェストを発表。りん監督は「France & Japon 世界の子供たちへ」とし、下段には自転車好きの監督らしく、ツール・ド・フランス出場を果たした日本人選手2人へのエールも書き添えられていた。夏の強い日差しも忘れるほど、終始明るく和やかで、爽やかな記者会見だった。
『よなよなペンギン』
12月、全国劇場にてロードショー
●キャスト
ココ/森迫永依
チャリー/田中麗奈
ザミー/太田光(爆笑問題)
ブッカ・ブー/田中裕二(爆笑問題)
長老/永井一郎
チャリーの父親/田中秀幸
チャリーの母親/皆口裕子
ココの母親/小山茉美
ムルムル/山口勝平
猫のチャビスケ/TARAKO
おじさんたち/野沢那智、内海賢二
デビル・リーダー/松本梨香
双子のフェアリー/田中れいな(モーニング娘。)、リンリン(モーニング娘。)
悪ガキ三人組/くまいもとこ、桑島法子、朴■美(■=王へんに路)
スパイダー/本多俊之(友情出演)
大天使/山寺宏一(友情出演)
ココの父親/高橋ジョージ
パラケケ/藤村俊二
じい/柄本明
●スタッフ
原案・監督/りんたろう
キャラクターデザイン/寺田克也
脚本/金春智子
制作/マッドハウス、DFP
●公式サイト
http://www.yonapen.jp/
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