第48回 『無敵ロボ トライダーG7』
『機動戦士ガンダム』の後番組が『無敵ロボ トライダーG7』だった。『ガンダム』と同じく日本サンライズ(現・サンライズ)の作品で、監督は佐々木勝利、シリーズ構成は星山博之。キャラクターデザインが佐々門信芳で、作画監督チーフが金山明博。同じサンライズの『未来ロボ ダルタニアス』チームによる作品だった。放映開始は1980年2月2日で全50回。『ガンダム』はターゲットを青年層まで引き上げていたが、それに対して『トライダーG7』はコメディタッチの、子供向け作品だった。
『ガンダム』以降、同傾向のハイターゲットなロボットアニメも作られているのだが、その一方で、子供向けのロボットアニメが増えた。僕の印象としては、アニメブーム以前よりも増えている。1980年には『トライダーG7』があり、『鉄人28号[新]』があった。翌1981年には『Gライタン』や『最強ロボ ダイオージャ』が始まる。それらの企画は、ロボットアニメの対象年齢が上がってしまった事の反動で生まれたものでもあるのだろう。
主人公の竹尾ワッ太は、小学6年生でありながら、竹尾ゼネラルカンパニーの社長だ。竹尾ゼネラルカンパニーは、ワッ太を含めて5人しか社員がいない零細企業だが、高性能の巨大ロボットであるトライダーG7とシャトルを所有している。彼らは、防衛省や大手企業の依頼を受けて、謎のロボットと戦うのだった。こう書くとメチャクチャな作品のようだが、ワッ太が社長になった経緯についても、竹尾ゼネラルカンパニーがトライダーG7を所有している理由も、作中で説明されている。また、今回の原稿を書くにあたって観返して、無茶な設定を視聴者に無茶と感じさせないところが、この作品の作りの巧さだったのだと思った。バランスがいいのだ。
本作品の新味は、ひとつにはワッ太が「小学生で社長であり、しかも、ロボットのパイロットである」という事。もうひとつが、オープニングの歌詞にもあるように、ワッ太達が正義のためや地球の平和を守るためではなく、会社の仕事として、つまり、社員の給料のために戦っている点だった。個々のエピソードは生活に密着したものばかりだ。ワッ太が通っている学校も、主な舞台のひとつだった。会社ものでありつつ、学園ものでもあった。
竹尾ゼネラルカンパニーは万年経営不振であり、会社ものとしては、なかなかシビアだった。今回DVDで観返した話には、竹尾ゼネラルカンパニーが取引のある会社への支払いができず、女子社員の郁絵が電話相手に「お支払いには明日にはなんとか……」と頭を下げるという描写があった。あるいは、社員の1人である木下が、給料が安いために就業中に内職をしていたり(しかも、専務に大目に見てもらっている)とか。そういった細かいギャグは、本放送時にはなんとも思わなかったのだけど、大人になってから観ると、あまりにも現実的で苦笑いしてしまう。
トライダーG7は、普段は公園の下に格納されており、待機中も頭部が公園に露出している。郁絵が「毎度お騒がせして申し訳ございません。ただ今より、トライダー発進致します。危険ですから白線の外までお下がりください」とアナウンスし、ワッ太が「安全確認!」と叫んでから、トライダーが発進するのがお馴染みのパターンで、ロボットアニメファンの間で、ユニークな発進シーンとして語り草になっている(最初からこのアナウンスがあったわけではない。シリーズ途中から定番になったようだ)。また、食事シーンが多い作品で、目的地までのシャトルの中で、郁絵が用意したおやつを、皆で食べる場面がよくあった。かつてなく、地に足がついたロボットアニメだった。いわゆるリアルロボットものではないのだが、それまでにない発想で、現実的なものとして「ロボットがいる社会」や「ロボットの活躍」を描いた作品だった。
この作品の放映開始前に、僕は「『ガンダム』の後に、随分と子供っぽい作品が始まるんだな」と思っていた。だが、放送が始まってからは『ガンダム』とはまるで違ったものと納得して、それなりに楽しんだ。むしろ、『ガンダム』の後番組が、中途半端にティーンの視聴者を意識したものであったら、きっと反発していだろうと思う。「小学生で社長」の設定や、地に足がついたロボットものである事を、それまでのロボットアニメのパロディのように感じて、ちょっとニヤニヤして観ていた。
第49回へつづく
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(09.01.20)