アニメ様365日[小黒祐一郎]

第153回 『キン肉マン』

 僕と同い年のアニメファンで、『キン肉マン』を観ている人は少ないはずだ。アニメの放映が始まった時に19歳。第1期が終わる頃には22歳になっていた。どう考えても『キン肉マン』のターゲットからは外れている。僕は最初の1年間は、ほとんど観ていない。内容が子ども向けだったためもあるけれど、放映されていたのが、日本テレビの日曜朝10時からという視聴習慣のない枠だったためでもある。
 作品の概略について説明しておくと、『キン肉マン』は、ゆでたまごの同名ヒーロープロレスマンガを原作にしたTVシリーズ。キン消しと呼ばれるキャラクター人形の消しゴムのヒットもあり、子ども達の人気を集めた。第1期が放映されたのが1983年4月3日から1986年10月1日。しばらくのインターバルをおいて、1991年10月6日から1992年9月27日に第2期が放映されている。主役のキン肉マンを演じたのは神谷明だ。おどけた言動が多い役で、ハッチャけた芝居が印象的だった。徐々に二枚目半や三枚目の役が増えていた彼の、ターニングポイントになった仕事だろう。
 僕が『キン肉マン』を観るようになったきっかけのひとつが、1984年4月に土曜夜の枠で放映された、TVスペシャル『キン肉マン 決戦!!7人の正義超人VS宇宙野武士』だった。正義超人が宇宙の彼方のラッカ星で活躍するエピソードで、大筋が「七人の侍」のパロディになっていた。原画で、カナメプロダクションの佐野浩敏や山崎理が参加しており、金田系のアクション作画もあった。後の劇場版シリーズを含めた長編『キン肉マン』の中で、一、二を争う面白さだった。
 友達が「『キン肉マン』のレコードがいい!」と熱く勧めてくれて、それを聴くようになったのもきっかけだ。『キン肉マン』のレコードは各超人のイメージソング集となっており、個々の曲は、各キャラクターが名乗りを上げて自己紹介をしてから、歌が始まるという構成だった。『キン肉マン』のレコードは何枚も作られ、主人公側の正義超人だけでなく、敵側の悪魔超人や完璧超人の歌も作られた。これが傑作で、セリフもよければ、歌もよかった。本編よりも上手にキャラクターの魅力を表現しているのではないかと思ったくらいだ。僕はあまりキャラクターソングは聴かないのだけれど、キャラソン史上燦然と輝く傑作だろうと思う。好きな曲は沢山あるが、あえて選ぶならば、ウォーズマンのテーマ「悲しみのベアー・クロー」、プラネットマンのテーマ「恐怖の惑星バルカン」、ザ・ニンジャのテーマ「ジャパニーズ・マジック」といったところだ。
 僕が『キン肉マン』を観るようになったのは2年目に入ってから。「7人の悪魔超人編」の途中からだ。その次の「黄金のマスク編」以降は毎週録画していた。ギャグが多い作品ではあったけれど、僕は、後の『聖闘士星矢』や『幽★遊★白書』のような、正統的なヒーローアクションものとして観ていた。結構ハマっていた。どのくらいハマっていたかというと、後に「TVアニメ25年史」「劇場アニメ70年史」の編集に参加した時、最初に『キン肉マン』の全TVと劇場版のあらすじ、解説の執筆を志願したくらいだ(全『ルパン三世』の執筆も志願した)。気に入っていたのは「黄金のマスク編」と「夢の超人タッグ編」。その後のオリジナルや、キャストが変更になった第2期「キン肉星王位争奪編」は今ひとつノレなかった。
 『キン肉マン』を制作したのは、東映動画(現・東映アニメーション)だ。映像的には大味であり、演出も超ベタだった。全体として野暮ったかった。それがよかった。笑わせるところは、徹底してハシャいで、盛り上げるところは、力いっぱい盛り上げる。老舗の東映動画らしい作りだったと思う。

第154回へつづく

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(09.06.24)