アニメ様365日[小黒祐一郎]

第191回 『地球物語 —テレパス2500—』

 一度も観る機会がなく、ずっと気になっているタイトルが数本ある。『地球物語 —テレパス2500—』もその1本だ。「劇場アニメ70年史」に掲載されているこの作品の解説には「劇場版として初の完全オリジナルに挑戦したタツノコによるファンタジックなSF作品」とある。タツノコプロは、これまでTVシリーズから派生した劇場作品は作ってきたが、劇場用のオリジナル作品は、これが初めてだという事だったのだろう。公開されたのは1984年8月4日。監督は実写映画の山根成之、キャラクターデザインは天野喜孝、作画監修は宮本貞雄だ。
 当時、観に行った友達から「作画はよかった」という感想を聞かせてもらった。「なかむらたかしも作画をやっていた」とも教えてもらった気がする。だが、僕は劇場には行かなかった。行かなかったのは、たまたまアニメ雑誌で見かけたスチルが、あまりにも地味だったせいかもしれない。「劇場アニメ70年史」には、同時上映が「エリマキトカゲ物語」だったとある(ただし、他の資料をチェックしてみたところ、同時上映のデータがない)。1984年当時、爬虫類のエリマキトカゲが大人気だったのだ。そんな、いかにも色物っぽい映画を観るのが、嫌だったのかもしれない。その後、レンタルショップで、この作品のビデオソフトを見かけた事もあったが、手に取りはしなかった。観るきっかけがなかったのだ。
 『地球物語』公開から25年経った。この四半世紀の間に、何度か「観てみたいな」と思った。「ひょっとして、凄い傑作だったらどうしよう」なんて思った事もあった。だが、『地球物語』のビデオは、とっくにレンタルショップで見かけなくなっていた。DVDにもなっていないし、僕が知る限り、CS等でも放映されていない。そして、この「アニメ様365日」の連載が1984年の話題に突入した。1984年のラインナップを見ると、そこに『地球物語』のタイトルがある。これは、この作品を観るいい機会かもしれない。ひとつ観てみるか。Amazonで検索してみたら、すぐに中古のVHSが見つかった。値段は激安。送料込みで、たったの692円。クリックした。すると、1週間もかからずにビデオソフトが届いた。凄いぞ、インターネット。
 かくして、ずっと気になっていた『地球物語』のビデオソフトが手元に届いた。そして、早速観てみた。感想を一言で言えば、SFものとしてはパッとしない作品だった。何を書いても悪口になってしまうので、具体的には書かないが、世界観もストーリーも古めかしい。物語のテンポもよくない。1980年代半ばに作られたとは思えない。同じタツノコプロが10年以上前に作った『科学忍者隊ガッチャマン』の方がずっとシャープなくらいだ。考えてみれば、当時観に行った友達も「作画はよかった」とは言っていたが、「面白かった」とは言っていなかった。
 だけど、僕は満足している。25年も気になっていた『地球物語』がどんな作品か、確認できたのだ。確かに、なかむらたかしの作画はあったし、そこは見応えがあった。二宮常雄の原画もよかった。それも確認できた。それから、ロードショー時に劇場に行かなくてよかったなと、ちょっとだけ思った。

第192回へつづく

地球物語 —テレパス2500—

カラー/105分/
価格/
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(09.08.18)