アニメ様365日[小黒祐一郎]

第218回 『GU-GUガンモ』その4 45話B

 シリーズ終盤における、井上俊之とスタジオジュニオ担当回の傑作は、45話B「ヤマトなでしこ VS じゃじゃ馬娘!!」(作画監督/井上俊之、演出/永丘昭典)だ。7話B、26話Bと並ぶエピソードで、作画だけでなく、話もいい。
 今回はリンダ、あゆみが主人公の話で、半平太はほとんど登場しない。ガンモの方がまだ出番が多いが、ほとんどストーリーには絡まない。リンダのお転婆ぶりに手を焼いた彼女の母親は、リンダをあるお屋敷に下宿させ、そこでおしとやかにしつけてもらう事にした。そのお屋敷というのが、なんとあゆみの家だった。あゆみの家ではばあやが、リンダと一緒に暮らす事で、あゆみに生きた英会話を学ばせようと考えていたのだ。中盤までは、同居を始めた2人のドタバタを、後半は、あゆみがリンダのローラーブーツを持ち出した事から起きる騒ぎを描く。あゆみはローラースケートがまるでできないので、ガンモに紐で引っ張ってもらって、街を疾走していたのだが、紐が切れた事により暴走。そこに追いついたリンダが(主には、ローラーブーツを持ち出されたのを怒ったために)背中を押して、さらにあゆみを加速させる。悲鳴を上げていたあゆみは、逆襲に転じて、リンダに抱きつく。リンダも身動きが取れないまま、2人は疾走を続けるが、その先に急な坂道が待っていた……というのが粗筋。
 この話でも、井上俊之は作画監督だけでなく、大量の原画を担当。アクションシーンは全て描いている。26話Bの作画をAプロダクション調と言ってよいのかどうかは悩ましいところだが、45話Bは、26話Bにあったようなコミカルな調子もあり、リアル作画系を取り入れたところもあり、美麗な美少女作画あり。非常に見応えがあり、井上俊之作画による『GU-GUガンモ』の完成形だった。
 冒頭のサッカーシーンは、リンダの走りだけでも、その巧さに惚れ惚れとする。回転するボールの処理も格好よすぎだ。中盤のラジオ体操のシーンは、あゆみとリンダのケンカが可愛らしい。ここまでの回にも上手なアクションつなぎがあったが、この話ではあゆみがローラーブーツを履いた直後に転ぶ箇所のつなぎが抜群にいい。
 そして、やはり見どころは、あゆみがローラーブーツで走り出してからの展開だ。印象としては26話Bよりもよく動いている。やはり、枚数制限の限界に挑んだ話だった。オバケを効果的に使ったコミカルなアクションもいい。この場面はややシリアス寄りであり、それは演出の力でもあるのだが、ギャグアニメである『GU-GUガンモ』としては、かなり緊張感のある場面になっている。また、井上俊之が手がけたエピソードは、頻繁に背景動画が入るが、この場面でも背景動画が効果的に使われている。
 このシークエンスの終盤で、坂道を疾走していたあゆみが、道の端に寄ってしまう。壁面にぶつかりそうになり、焦ってドタバタした挙げ句、勢いあまって壁面を走り出すのだった。理屈で考えると、無理のある段取りだが、アイデアは面白いし、無理な段取りを作画で説得力あるものにしようとする心意気が素晴らしかった。今の目で観ると、そのカットについて「もう数枚、枚数がほしい」と思ってしまうのだが、当時の僕にとっては拍手喝采ものだった。
 傷ついたあゆみをリンダが背負って家路につく場面が、この話のエピローグだ。意地を張りながらも、ここで2人は和解する。気絶していたあゆみが目を醒ますカットは、おそらくは井上俊之作画史上において空前の美少女作画。真っ赤な夕焼けが、情感を豊かなものにしている。
 観返していて気がついたのだけど、僕が『GU-GUガンモ』が好きなのは、基本的に各回2本立てで、1パートで話が完結する形式だったからでもあるのだろう。1パートで話が完結するため、演出や作画について、ひとつのトーンで作りきる事ができる。何本かある傑作は、その形式のために、まとまりのいいフィルムになっている。また、45話Bについて言えば、原作3週分の内容を1パートに詰め込んでいる。話がギュッと詰まっているところもいい。
 それから、前にも書いたように、僕は『GU-GUガンモ』のキャラクターだと、リンダが好きだった。これも今回観返して気がついたのだけど、僕がリンダが好きだったのは、井上俊之が手がけた傑作が、リンダがメインの話ばかりだったからかもしれない。

第219回へつづく

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(09.09.29)