アニメ様365日[小黒祐一郎]

第268回 『蒼き流星 SPTレイズナー』

 『蒼き流星 SPTレイズナー』は高橋良輔監督によるロボットアニメだ。原作として伊東恒久、高橋良輔の2人がクレジットされており、キャラクターデザインは谷口守泰、メカニックデザインは大河原邦男。製作は日本サンライズ(現・サンライズ)で、放映されたのは1985年10月3日から1986年6月26日まで。高橋良輔監督のロボットアニメとしては『太陽の牙 ダグラム』『装甲騎兵 ボトムズ』『機甲界 ガリアン』に続く、第4作となる。タイトルになっているSPTとは、この作品に登場する戦闘ロボットの名称であり、機動性の高さが特徴だった。
 主人公のアルバトロ・ナル・エイジ・アスカは、地球人とグラドス人の混血であり、地球に危機が迫っている事を伝えるために火星に現れた。第1部ではエイジが、アンナ・ステファニーをはじめとする少年少女達とともに、グラドス軍と戦いながら地球を目指す。正直言えば、メカのコンセプトにしても、話の概略にしても、あまり新しさは感じなかった。エイジの姉のフィアンセであり、彼の先輩であるゲイルが敵として立ちふさがる展開なんて、ちょっと古くさいと感じたくらいだ。
 ではあるが『レイズナー』は魅力的な作品だった。作劇も戦闘シーンも、ハードなものだった。ドライなタッチのキャラクターデザインも、ハードな印象を強めていた。オープニングの途中に、その話数の印象的な場面(=印象的なセリフ)を挿入するという仕掛けがあり、それが演出的にシャープで、たまらなくかっこよかった。『レイズナー』には、ハードなだけでなく、シャープな作品という印象もある。
 「リアルロボットもの」としての『レイズナー』にも触れておこう。「リアルロボットもの」には、メカ描写や戦闘シーンのリアルさが必須であるはずだ。それから、これは僕の思い入れだが「リアルロボットもの」はシリアスであってほしい。シリアスでない「リアルロボットもの」があっても構わないのだが、シリアスな方が「らしい」と思う。『レイズナー』における戦闘シーンのリアルさは、それまでのTVのロボットアニメの中でも、トップクラスのものであった。内容についても、少なくとも第1部はどシリアスだった。それゆえに、本作がサンライズの「リアルロボットもの」の集大成だと思っている。ジャンルとしての「リアルロボットもの」の作品は、この後にも『機動戦士 ガンダムZZ』と『機甲戦記ドラグナー』があるが、僕の中では『レイズナー』で「リアルロボットもの」は一度終わっている。あくまで印象の話だが。
 キャラクターデザインの谷口守泰は『装甲騎兵 ボトムズ』に各話作監として参加し、主人公のキリコをワイルドな外見の男として描き、ファンの人気を集めていた。また、谷口が代表を務めるアニメアールは、エキスパートチームとして、高橋良輔監督の歴代ロボットアニメに参加。『レイズナー』は、そんな谷口とアニメアールの代表作となったタイトルだ。各話で谷口守泰、村中博美、貴志夫美子、吉田徹の4人が作画監督として立ち(吉田徹はメカニカル作監)、全話数の半分以上に参加。吉田徹、黄瀬和哉、逢坂浩司、沖浦啓之といった若手が競い合うように描いたメカアクションは、目を瞠るほどのクオリティだった。また、アニメアール回以外も作画的な見どころは多く、その意味でも『レイズナー』はマニアにとって、実に嬉しいシリーズだった。
 『レイズナー』は2度、ファンを驚かせた。最初の驚きは第2部の内容だった。24話「光になったエイジ」で第1部が完結。総集編である25話を挟んで、26話「時は流れた!」から、第2部がスタートした。24話は地球に侵攻したグラドス軍に、エイジがレイズナーで突っ込んでいくところで終わっており、26話はその3年後から始まる。地球は戦いに負け、グラドスの占領下におかれていた。エイジを含むレギュラーの少年少女達は成長し、それぞれの立場で、グラドスとレジスタンスの戦いに参加する。
 いきなり3年の月日が経ったのも意外だったが、作品の雰囲気が変わったのにも驚いた。エイジは逞しく成長し、トンファーを手にして肉弾戦をするようになる。まるで当時人気があった『北斗の拳』の登場人物にでもなったかのようだった。また、第2部には敵陣営に、死鬼隊と呼ばれるチームが登場する。残虐を好む異形の男達であり、彼らも『北斗の拳』に登場しそうなキャラクターだった。特に、死鬼隊のリーダー格であったゴステロの奇天烈とさえいえる言動は、インパクト抜群。「脳が〜、脳が痛てぇ〜!」をはじめ、数々の名セリフを残している。
 2度目の驚きは、放映の打ち切りだった。「アニメージュ」1986年7月号の記事によれば、当初は全52話でストーリーが構成されていたが、始まってすぐに47話に短縮。そして、放映中の1986年4月はじめに、38話で放映を終える事が決定した。その段階で37話までの作業が進んでおり、そこまでの内容を大きく変えるのは不可能だった。そのため37話までは予定していた内容を放映し、38話を最終回風のものとする事になった。放映された38話「歪む宇宙」は、予定していた38話からラストまでの内容を、ダイジェスト風にまとめたものだった。
 最終回放映前に、打ち切りがアニメ雑誌で報じられてたため、僕達は最終回が中途半端なものになる事は知っていた。だから、最終回の唐突な展開にも、37話と話が繋がっていない事にも驚きはしなかった。ではあるが、力作だった『レイズナー』が、グダグダな最終回を迎えたのは残念だった。TVシリーズでカットされた部分は、後に、OVA『蒼き流星 SPTレイズナー ACT-III 刻印2000』として制作されるのだが、なんだか釈然としないものを抱えてそれを観た。
 前述の記事によると、打ち切りの理由は、玩具の売れ行き不振によるスポンサーの撤退だった。日本テレビのプロデューサーのコメントには、夕方枠の番組としては、むしろ視聴率的に健闘していたとある。それまでも僕達は、アニメファンに人気の作品が途中で打ち切られるのを何度も観てきたが、視聴率がとれているのに打ち切られるという話は、聞いた事がなかったはずだ。釈然としないものを感じていたのは、そのあたりに理由があったのだろう。
 『レイズナー』が最終回を迎えた1986年6月には、すでに「TVアニメ冬の時代」が始まっていた。今になって思えば、この打ち切りは「冬の時代」の到来を象徴するものだった。

第269回へつづく

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(09.12.11)