第409回 『超神伝説 うろつき童子』
今回から数回かけて『超神伝説 うろつき童子』を取り上げる。これはアダルト作品であり、一連の原稿では露骨な事も書く。そういった話題が苦手な方は、遠慮してもらった方がいいかもしれない。
『超神伝説 うろつき童子』は、前田俊夫の同名劇画を原作としたオリジナルビデオシリーズだ。海外でも人気が高く、数多くの続編が作られている。今回以降で取り上げるのは、第1作『超神伝説 うろつき童子 —超神誕生編—』(1987年1月21日リリース)、第2作『超神伝説 うろつき童子2 —超神呪殺篇—』(1988年3月21日)、第3作『超神伝説 うろつき童子3 —完結地獄篇—』(1989年4月10日)の3本だ。この3部作で『うろつき童子』シリーズは一度完結している。「アニメ様365日」では、この3本を「初期3部作」と呼ぶ事にする。
この世には「人間界」「獣人界」「魔界」というみっつの世界がある。そのみっつの世界に関する伝説があった。3000年に一度、超神が蘇り、みっつの世界を統一して、永遠の国を作るのだという。獣人の天邪鬼は超神を探して、300年も人間界を彷徨っていた。彼が目をつけたのは、南雲辰夫という名の学生だった。南雲は本当に超神なのか? そして、超神とはいったい何なのか?——というのが物語の大筋である。それにセックス、SFチックなバトル、モンスター、スプラッタ描写が絡み、展開していく。設定や大きな流れは原作を活かしているが、個々の展開は大胆にアレンジ。キャラクターデザインはまるで違うものになっている。
初見時に「西崎さんと『宇宙戦艦ヤマト』のスタッフが作ったアダルトアニメか。どんなものだろう」と思った記憶がある。制作は「宇宙戦艦ヤマト」シリーズでお馴染みのウエスト・ケープ・コーポレーションだ(『1』では制作スタジオはクレジットされていない。また、『2』ではウエスト・ケープ・コーポレーションと連名で制作として、『3』では制作協力として、プロジェクトチーム・ムーがクレジットされている)。西崎義展プロデューサーは『1』からこのシリーズを手がけているはずだが、少なくとも初期3部作では名前を出していない。初期3部作を再編集した劇場版では、企画の役職でクレジットされている。
プロデューサーは山木泰人、監督は高山秀樹、音楽は天野正道。脚本は『1』と『2』が三陽五郎で、『3』が会川昇(現・會川昇)。ただし、三陽五郎は會川昇のペンネームであり、これは名前を本名に戻しただけだ。キャラクターデザイナーや作画監督として、大勢の人気アニメーターが腕を振るっており、それも紹介したいところだが、大半がペンネームでの参加なので、ここでは割愛。次回で少しだけ触れるが、声優も豪華なメンバーが揃っている。しかし、初期3部作のキャストは、変名どころか、そもそもクレジットされていない。
アダルトアニメにありがちな安っぽさは微塵もなかった。物語も、映像も、音響も豪華であり、スケールが大きかった。SF伝奇アクションとして観ても、同時期の一般作OVAよりも見応えがあったくらいだ。作画も見応えがあった。特に『2』における、若手アニメーター達の活きのいい仕事が素晴らしい。
そして、なによりもセックスに関する描写が強烈だった。本作で描かれた性行為は、それまでの美少女アニメにあったようなソフトなものではなく、劇画的な激しいものだった。魔物や、魔物と化した人間が女性と交わる描写が続出。中でも、よく話題になるのが触手である。モンスターの身体から伸びた触手が女性を犯す。僕はそちらの方面には明るくないのだが、『うろつき童子』が後の「触手もの」に与えた影響は多大なのだそうだ。性器の描写にしても、こんなに見せてしまって大丈夫なのだろうか? と不思議に思うくらいはっきりと描かれていた(確認していないが、現在リリースされているDVDソフトでは修正がキツくなっているらしい)。
作品全体が脂っこい感じで、ギトギトしていた。主人公の1人である南雲からして、女子更衣室をのぞいて、自慰行為に励んでしまうような男だった(しかも、それが彼が初登場した場面なのだ)。『1』のラストで、南雲が超神と化す(後に、それが本当に超神なのかどうかが問題になるのだが、それについてはここでは触れない)。超神の姿はまるで悪魔のようだ。場所は病院である。超神となった南雲の身体から無数の巨大なペニスが伸びて、病院を破壊し、ペニスが病院にいた人々を吸収していく。凄まじいイメージだった。マッチョ思想の究極のような光景だった。
グロテスクなモンスターとポルノをひとつにまとめたのが新しかったし、それが表現の過激さ、ドラマのテンションと相俟って、かつてない作品となっていた。「これは一線を越えた」と思った。
第410回へつづく
超神伝説 うろつき童子
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(10.07.15)