005『獣兵衛忍風帖』(1993年・劇場)
テキスト担当/岡本敦史
【あらすじ】
諸国をさすらう「はぐれ忍び」牙神獣兵衛は、ある夜、謎の忍者軍団「鬼門八人衆」に襲われたくノ一・陽炎を偶然に助けた。その時から、獣兵衛もまた命を狙われる身となり、さらに公儀隠密・濁庵なる老人につきまとわれ始める。知らぬ間に毒を盛られた獣兵衛は、解毒剤を得るためにやむなく濁庵や陽炎らと行動を共にすることに。その目的は、鬼門八人衆を率いる「闇公方」の陰謀を阻止すること。妖術を駆使する敵との死闘のはてに待っていたのは、かつての宿敵との思いがけぬ再会であった。
【解説】
アニメーターとして活躍しながら『妖獣都市』などの監督作品でも才気を示した川尻善昭が、初めて自身の原案から作り上げた伝奇時代劇。山田風太郎の「忍法帖」ものに想を得て、フリーキーな忍者集団と凄腕のアウトロー忍者の壮絶な戦いをケレン味たっぷりに描きつつ、欠片も無駄のない語り口で一気にラストまで駆け抜ける。エクストリームな刺激に溢れながら同時に端正な娯楽作でもあるという、川尻監督独自のスタイルが極まった快作だ。実質的に制作を手がけたマッドハウスにとっても看板作品のひとつとなった。
岩のように硬い皮膚をもつ大男、毒蛇の群れを操る美女、首を斬られても生き返る不死者といった荒唐無稽なキャラクターたちが続々登場し、重量感も躍動感もダイナミックに増幅されたアクションが展開。アニメーションならではの魅力的な過剰さで楽しませながら、非情な世界に生きる男と女の儚いラブストーリーとしても胸を打つ。キャラクターデザイン・作画監督の箕輪豊を始め、川崎博嗣、小池健といった面子が腕を振るった作画も見応え十分。海外では日本以上の熱狂的人気を獲得し、ウォシャウスキー兄弟などの映画人たちにも多大な影響を与えた。
【スタッフ】
原作・監督・脚本・キャラクター原案/川尻善昭
キャラクターデザイン・作画監督/箕輪豊
美術監督/小倉宏昌
撮影監督/山口仁
音響監督/本田保則
音楽/和田薫
アニメーション制作/アニメイトフィルム
制作協力/マッドハウス
声の出演/山寺宏一、篠原恵美、青野武、阪脩、郷里大輔
006へつづく
(12.06.22)