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COLUMN
アニメ様の七転八倒[小黒祐一郎]

第84回 続・『合体劇場版!!』を観た

 総集編を観て、改めて『トップをねらえ!』の凄さを感じた。特に第五話は、4対3のスタンダードサイズで制作されているにも関わらず、スクリーンに耐える部分が沢山あった。元々、亜シネスコで作られた最終話がスクリーン映えするのは言うまでもない。
 最終話のラストシーンまできたところで、それまでに、全26話以上に相当するドラマの積み重ねがあったように感じさせるところが、『トップ!』というOVAの持つ魔力である。ノリコ、カズミ、ユングと旅をずっと付き合ってきて、最終的にあのラストに至ったように思う。だけど、実際には『トップ!』は全6話しかないのだ。CD「トップをねらえ! ウルトラ音楽大全集〜田中公平の世界」は、実は『トップをねらえ!』が全26話のTVシリーズであり、リリースされているOVAはそのうちの6本だという設定で作られたものだ。その冗談を信じてしまったファンが少なからずいたのだが、それも『トップ!』に、残り20本の存在を感じさせるだけのものがあったのだろう。
 ドラマがよくできている事もあるのだろうし、第四話と第五話の間、第五話と最終話の間で月日が流れている構成も、その魔力を生んだ原因のひとつだろう。これも皆さんがご存知のとおり、『トップ!』は過去の様々なマンガ、アニメ、特撮映画等の作品をコラージュするかたちで作られている。個々のエピソードも、キャラクターの造形もそうだ。そういった『トップ!』の内容と、僕らの物語的な記憶(『トップ!』的に言えばオタク的な記憶)が触れ合って、化学変化を起こし、全6話以上のドラマを脳内に作り出していたという事もあるはずだ。
 今回の総集編で残念だったのは、その魔力が失われていた事だ。それは、30分単位で分断されていた第四話、第五話、最終話のドラマを、ひとつにまとめたためでもあるのだろう。あるいは魔力を発揮させるためには、やはり30分×6話の物量が必要だったと言うべきかもしれない。だからと言って、総集編を物足りなく思ったわけではない。最初に言ったように、むしろ、オリジナル版の凄さに改めて感じ入ったという事だ。

 『トップ2!』はどこか分かりづらいところのある作品だ。それは鶴巻和哉&榎戸洋司コンビのアジでもあるのだろうし、何度も視聴できるような作品にするという意図もあるのだろう。今回の総集編では、物語をラルクとノノの関係に絞り込み、主に説明のための新作パートを数分加えたために、かなり話の見通しがよくなった。サブテーマであるトップレスの“あがり”については薄味になってしまったがそれは仕方あるまい。
 随所に『トップ!』へのオマージュととれる箇所がある。それ自体はいいのだが、クライマックスで、ラルクがノリコと同じコスチュームを着る展開は、『トップ!』と続けて観ると過剰なサービスと思えた。勿論、それが嬉しかったファンもいたはずだが。また、『トップ!』と『トップ2!』では作品のテイストが随分違うのだが、両者を90分にまとめなおす事で、その差は小さいものとなったように思う。
 感心したのは、『トップ2!』全編がスクリーンの大きさに充分耐えるものになっているという点。ビスタサイズで作られたからというのもあるのだが、それだけでなく、丁寧に作り込まれている。そして、画面作りに関して、『トップ!』と対照的である事を改めて確認した。アニメーションに対する美意識がまるで違う。特に両者の第五話(第5話)、最終話においてそれが顕著だ。
 『トップ!』も『トップ2!』も、シリーズのクライマックスで、超々サイズの宇宙船、ロボット、宇宙怪獣が戦闘をする。文字どおり宇宙スケールで物語が進むわけだ。『トップ!』は特撮映画的、邦画的なエッセンスを取り入れ、また、止めるところは徹底的に止め、その代わりに描き込みを増やしている。最終話に関しては亜シネスコにモノクロという仕掛けに加えて、ゆったりとしたカット割りと、あまりカメラを振らない事で映画的な風格を出している。つまり、宇宙スケールの物語を、色をつけない、動かさないといった消極的な手法で描き、絶大な効果を上げたわけだ。
 それに対して『トップ2!』はアニメとしては正攻法の画面構成で、しかも、積極的に動かしている。地球よりも少し小さいくらいのサイズのダイバスター、それとほぼ同サイズの人型ドゥーズミーユ、さらにそれらよりも巨大な宇宙怪獣との闘いを、極彩色の画面で動かしまくった。『トップ!』に比べると、リスクの大きな作り方だ。それができたのは『トップ!』から16年経って、アニメの技術が、GAINAXの技術が、進歩した事の証明である。『合体劇場版!!』で、その事がよく分かった。

■第85回 「奇跡は起きます。起こしてみせます!」に続く

●公式サイト
http://www.top2.jp/movie.html

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【DATA BASE】『トップを ねらえ! GunBuster』

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BCBA-2786/カラー(一部モノクロ)/(予)345分(本編DISC1:約95分+本編DISC2:約95分+特典DISC1:約95分+特典DISC2:約60分)
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(06.11.28)

 
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