ふかかいクロネコのラクガキ帳[本郷みつる]

第1回 始まりの口上

 はてさて、今回からしばらくの間お世話になります。名前は本郷みつる。職業はアニメの演出です。アニメーションの世界でやってきた仕事は主に脚本、絵コンテ、演出、監督になります。才能はともかく、運だけは抜群によかった気がします。お蔭様で25年ほど、この仕事で生活しています。この場を借りて大いに語る! ……予定なのですが、生憎、大して語りたい事が実はないので、「どうでもいい話」をさせてもらいたいなあ〜、なんて思っています。
 ここまで書いて自分で思い出したのですが、中学生の時に修学旅行の思い出を作文にする課題が出た時に、「作文は簡潔に書くのがよいとされていますが、僕はだらだらと意味なく長い、起こった事象をつなげただけのつまらない作文を書きたいと思います」と冒頭に記して、作文を書いた事を思い出しました。全く人間の本質的な部分は早い時期に作られているのかもしれません。

 ここまで読んで「なんだこれ、つまらない!」と思った方。どうぞこのコラム読み飛ばしてください。時間は有限です。もっと面白いコラムが世の中には沢山あるはずです。この情報があふれかえる現代において遠慮は無用です! 短い間でしたが、さようなら、ありがとうございました。また縁がありましたら、どこかでお会いしましょう。

 そう言えば、僕は以前、とある情報誌でアルバイトをしていました。アニメの専門学校は出たものの、ろくに就職活動をしなかったので、仕事もなく、田舎に帰るはずが、なんとか情報誌の編集アルバイトの募集に引っかかり、なんとか食いつないでいたものの、ぎりぎり暮らしていけるだけの状況で、将来の不安を抱えていました。
 もし可能なら、アニメの演出の仕事がしたいとボンヤリと思っていた時に、バイト仲間のイラストレーターの志望の人と将来の話をしていて、「お前はどうして、自分の希望を熱く語らないんだ!」と発破をかけられた事があります。当時の僕としては、まだアニメ業界の片隅にもいない自分が、でっかい夢を他人に語るというのは、どうにも居心地の悪い行為だったのです(アニメーションの演出を仕事にしている人間にも当然色んなタイプがいると思いますが、僕はいまだに自分の能力にそんなに自信がないのです。まあ、そのお蔭で今でも何とか仕事をやれている訳です)。
 この時の「気分」は今でもよく覚えています。言うなれば、あの時偉そうな事言わなかったからこそ、たまたま演出の仕事が来て、たまたま監督になって、今に至る道が開けたのだと(気のせいかも知れませんが……)。そして、その結果幸せになれたかどうかはまた別問題ですが(笑)。

 ちなみに、イラストレーター志望だった人はネットで検索したら名前に「カルロス」が増えていました(笑)。月日は人を変えてしまうものですねえ。

第2回へつづく

(10.08.03)