第179回
直感人生
何回やってもワクワクしてしょーがないのが、ラッシュチェックです!
業界人でない方でも想像はつくと思いますが、ラッシュチェックとは撮影から上がってきたフィルムを観る事を言います。これはその時の仕事が監督だとか各話演出……はたまた一原画マンだったとしても役職関係なく興奮します。そりゃそーでしょ? だって自分が頭に思い描いたモンが色が着いて動くわけですから。特に俺、クイックチェッカー(原画や動画を線画のまま簡易再生する機械——今はパソコン)を使わない主義なので、アニメ制作中で動く画を観るのはラッシュチェックの時が初めてなわけ。前回の職人話の続きになるかもしれないけど、自宅でコンテ切ってるだけじゃ味わえない楽しみがこのラッシュチェックです。つまり
——な作業を黙々と300カット前後やって
はれてラッシュチェックとなるのです!!
この連載におつきあいくださってる方はもうご存知かと思いますけど、だいたい板垣は
直感もしくは勘を頼りに生きてます!
ことアニメに関して言えば、クイックチェッカーで確認してからタイムシートをおこす若手アニメーターを非難・否定する気は毛頭ありませんが、俺は勘を頼りにタイムシートをつけて(使ってもストップウォッチまで)あとは仕上がった画面を観て、よほどヒドイものはやり直し(リテイクし)、まわりの人が気づかない程度のミスは心の中で反省して身体に刻み込むようにしてます。だって人間の身体は大したモノで、本当に「あー失敗した〜!」と反省した事は必ず覚えるようにできてるでしょ? 子どもは転んで地面の痛さを覚えるし、親に怒られて物事の良し悪しを覚えるんですから。なのになぜか大人になると「恥をかかないために勉強する」事が最優先になって無駄に悩み考える時間だけがドンドン長くなってゆく気がするんです。でも普段から直感を主にして生きてれば身体が感じで覚え、また次の直感に役立つんじゃないでしょうか? 少なくとも自分はそう思ってます。だから俺は普段まわりの人にこう言うんです、
直感はそれまでの人生の統計学だ!
と。アニメ制作も失敗しない事を主に確認ばかりしてたら、その時その時は丁寧で美しい作品ができるでしょうが、身体で感じる能力を退化させていく事は必至。それよりまわりのスタッフが気づかない——つまり自分の思ったとおりになってない程度の事は心の中の反省点としてその作品に刻んでおいた方が、次にもっと鋭い作品ができると思いつつ……ラッシュチェックしてます。
……今回も何か散漫な感じ。でも、これも心の中の反省となるでしょう。次に期待して提出します、アニメ様!
(10.08.05)