第195回
『パンスト』と
今石作品への道(4)
先週書きとばしちゃった『DEAD LEAVES』の話。時系列的にはガイナックスに入る直前の事で、前回のラストのイラストの前くらい? この作品ってたしかその年たまたま珍しく行ったコミケ会場で、今石さん本人から「今度監督やるんだけど原画やらない?」と言われて「やる!」と答えたんだと思います。『アベノ橋』同様とてもリラックスして楽しく描いてた記憶があります。初めてのプロダクションI.G作品で、作業自体はI.Gではなくレイアウトまでをゴンゾ(たしか『GAD GUARD』やってた頃)、原画をマッドハウス(『獣兵衛忍風帖 龍宝玉篇』のコンテ・演出と『はじめの一歩 間柴vs木村 死刑執行』の原画やってた頃)でやったんだと思います。あちこちの作品かけもちの合間を縫って描いてたわけですね。『DEAD LEAVES』で思い出すのは、ゴンゾでレイアウト(ラフ原)を描いてパラパラめくってると、とある演出の方がブラブラ覗き込んできて、
いや〜、なかなかこうは描けないんだよお
(君に分かる? 的なニュアンスで)
と言われました。厳密に言うとこの演出の方とは一緒に仕事した事はないのですが自分より年下と見るや必ず上から目線のインテリタイプ(こういうのはどこにでもいます)な人でたまにイライラしてたんです。この時の話もどうやら俺の描いてた原画を今石さんの描いたものと勘違いしてたようでした。つまり今石さんの下で演出助手とかで原画チェックをやってると思ったんでしょうね。で、「君に今石さんみたいに描ける?」と。でも上から目線は気に入らなかったけど、この勘違いはちょっと嬉しかったのを憶えてます。ちなみに板垣は今石さんみたいに巧くは描けません。あの上から目線の方の目がフシ穴だったんです。
あと、のちに『DEAD LEAVES原画集』なるものをいただいた際、今石さんより、
ゴメン。板垣君のチン○ドリルのカット、載せようと思ってたのに何か手違いで気づいたら載ってなかった……(汗)
と謝られたのも憶えてます。こういう気遣いが今石さんの優しいトコですが、正直これは俺、ホッとしました。だって自分の描く原画はフィルムになった後掘り起こしてまで本に載っけるほど上質なモノではありませんから。
そしてここからが前回の続きの時系列。ガイナックスでは約束どおり、今石さんは『十兵衛ちゃん2』と『この醜くも美しい世界』の板垣コンテ・演出回の原画を手伝ってくださいました。やっぱり今石さんは原画職人としても超一級で、作打ちの時も一言うと十理解する素早さで、原画も一発で(レイアウト・ラフ原行程をスッ飛ばして)描いてきて
問題なければこのまま原画扱いにしちゃって〜
と去っていきます。そんでもちろん上がりは問題なく素晴らしいんです。同じアニメーターとして嫉妬せずにはいられないカッコイイ仕事っぷり! ずっと後の『ロザリオとバンパイア』でもこの一発原画に驚いた作監の平田雄三さんが今石さんにお礼を言いに行ったら、こう返されたそうです。
板垣君の欲しがってるものは分かってるからね(笑)
ま、話は戻って『この醜』の頃は逆に今石さんの『RE:キューティーハニー』の原画をやったりもしました。あ、そーいえば『DEAD LEAVES』と『RE:キューティーハニー』、両作とも自分の担当したシーンは巨匠・渡部圭祐様の後(隣り合わせ)ってのも偶然とはいえ、何か技の差がハッキリ出ててヘコみました。ちなみに渡部さんにはまだお会いした事がありませんが、原画集は何冊か買いました。
とにかく『この醜』をきっかけに席を置いたガイナックスでは周りが刺激だらけで色々面白かったです。『この醜』では佐伯(昭志)さんや高村(和宏)さんと一緒に仕事ができて、『RE:キューティーハニー』では今石さんや摩砂雪さん、『トップをねらえ2!』では鶴巻(和哉)さんにもお世話になり、柴田(由香)さんの『まかせてイルカ!』もお手伝いして本当に充実してた頃、『砂ぼうず』をやりにゴンゾに行く話が持ち上がったのでした!(今考えると、この短期間メチャクチャ仕事やってたんだなあ〜)
(10.12.02)