第208回
アニメ『ウルヴァリン』と
実写「あしたのジョー」
こないだ放映された
アニメ『ウルヴァリン(MARVEL WOLVARINE)』
第9話のコンテ・原画
の話。これは以前『Devil May Cry』でご一緒したキャラデ・総作監の阿部恒さんより「やらない?」と声をかけていただいたのが経緯です。実際『Devil May Cry』の後、マッドハウスで阿部さんと一緒に進めてたとある企画が諸事情で凍結(シナリオ8〜9本、コンテ1話脱稿して2話の途中、キャラはメインが終わり1・2話ゲストのラフまでで中断)してしまったため、今回は久々の阿部さん&マッドハウス作品への参加となるので、話をもらった時は嬉しかったです! でも、ぶっちゃけ「『戦国BASARA弐』と『パンスト』との同時進行がかなりキツかった!」。だってしょうがない、
全部やりたかったんだもん!
この連載を読んでる方ならなんとなくご存知かと思いますが、板垣は「スケジュール的にどーしても無理!」って場合を除き、大概の仕事は引き受けさせていただきます。手を抜かなきゃならなくなるくらいなら最初から受けないし、逆に受けたからには手は抜きません。
というわけで『ウルヴァリン』9話では、
制作様を大変振り回してしましました! 本当に申し訳ありません!!
何しろ、朝9時頃起きて昼1〜2時まで『ウルヴァリン』のコンテ。それで上がった分(10ページ前後)を制作さんに渡し、その足で三鷹・プロダクションI.Gへ『戦国BASARA弐』の原画チェックに向かい、終電(もしくはガイナックスの制作さんの車)で東小金井・ガイナックスへ『パンスト』の原画チェックで朝3〜4時頃まで。で寝てまた朝9時起き、の繰り返しの日々でした。各制作会社さんにも相当なご迷惑をおかけしました。スミマセン。
「目が回る忙しさだった」の話は以前も書いたのでこのくらいにして、とりあえずコンテ打ちの話まで時間を戻します。『ウルヴァリン』の監督の青山弘様は初顔合わせなんですが、自分がテレコムに在籍してた頃1〜2回遠くから見かけた事がありました。なぜなら青山さんも俺が入る前までずっとテレコム在籍で、OVA『おざなり ダンジョン』(1991年)とかの監督をされていて……つまり早い話テレコムの先輩でした(今回コンテ打ち後の雑談で分かったのですが、ちょうど青山さんがテレコムを出たすぐ後、俺がテレコムに入社した事になるようです)。「1〜2回お見かけした事があった」ってのもご本人いわく「テレコム辞めた後に何回か遊びに行った」のだそうでした。そんなわけでとても温厚な感じの青山監督との打ち合わせはと言うと、いつもどおりの板垣の雑談が7割を占めるとても充実した内容でスンナリ終わりました。要は、
カッコよくて派手ならそれでよしっ!
——と。しかも『Devil May Cry』同様のシャープかつスタイリッシュな阿部さんのキャラクター。別に手慣れという意味ではなくても自分にとっては一種描きやすい素材ではありました。特に雪緒などはいかにも阿部さんならではのクールさでとても楽しく描けました。……でも、バイクはちょっと面倒臭かったか。あ、一応、
ほとんどまるまるシナリオに準じてコンテ切りました、今回は!
前後であまりにも続きものなストーリーなので、自分の話数のみ勝手なプレーはあえて避けたわけです。あ、でもアクションはちょこちょこ足してるかも。あくまで追加です! 変更はしてません! あと俺の前の第8話はあの川尻善昭様! もーそれだけで感激と緊張でした。
まあ、コンテに関してはそんな感じで演出(処理)は人任せとなりました。これは自分が忙しかったって事ももちろんなんですが、制作会社のイマジンさんの方で先に演出のローテーションが決まってたようで、こちらが「処理までやりたい」と言っても困らせるだけなので、大人しく原画の方を27カット描かせてもらいました。観てない方は分からないと思いますが、
前半、矢の大群がローガンと雪緒(とバイク)に襲いかかるところからバイクが爆発するところまでの中で、レイアウトが難しいカットと原画が大変と思われる個所を歯抜けで計27カット!
です。阿部さんから「バイクシーンをゴッソリ持ってほしい」と言われたのですが、スケジュール的にそこ全部は取る事ができず、「難しそうなところのみ自己申告的」に描く事としたわけです。よってバイクシーンを観ても全部が自分の原画ではなく、ところどころ他の方の原画が混在しております(やっぱり全部描きたかったな)。とは言いつつもやっぱり原画の方も制作さんに多大なご迷惑をおかけしたのも事実で、あまり無茶しなくて正解でしたかね。原画の時は自分の次の監督作品(来月発表されます)の準備と同時進行でしたから。無事(?)完成してなによりです。
また阿部さんとマッドハウス作品でご一緒できたらなあーと思いました!
そして、話は飛んでついに観てきました。
実写版
「あしたのジョー」!!
こりゃあもう、俺が観ないわけにはいかないでしょう。なにせどんな姿にせよ「そこに『あしたのジョー』がある!」んですからね。前もって断っておきますが、自分は1ミリの改変も許さないという意味での原作ファンではなく、
優れた原作はどんなに変更しても大事な部分は絶対揺らがない! と信じてジッと見ている型の熱狂的ファン
なので、この「『あしたのジョー』実写映画化!!」の告知が発表された際も、方々から聞こえてきた「絶対やめて!」とか「文化の破壊だ!」的な声は上げる事なく
「あしたのジョー」という原作の力を信じてました!
で、信じてたとおり、やっぱり「ジョー」の原作の力を再認識したような映画でした。つまり——
(11.03.10)