板垣伸のいきあたりバッタリ!

第225回
『ベン・トー』制作中!

 『ジャンプSQ』などで発表されたとおり、現在鋭意制作中なのは

アサウラ先生原作の『ベン・トー』!

です。スーパーの半額弁当を奪取しようとする若者たちのバトルもので、原作の煽り文句は「庶民派シリアス・ギャグアクション」というわけ。去年やった『迷い猫オーバーラン!』と同じスーパーダッシュ文庫の原作で、事の始まりも『迷い猫』制作中(たしか2009年末)にアニメ制作会社david productionの梶田(浩司)プロデューサーより電話をいただいたのに端を発します。

ウチと一緒に何かやりましょうよ!

と。でもその時の自分、『戦国BASARA』(1期の第13話)と『迷い猫』(第1話)をやっててすぐ何かお引き受けできる状況ではなくそのまま年を越し、奇しくも(?)『迷い猫』(第1話)が放映された2010年4月……梶田Pの手により目の前に置かれたのが『ベン・トー』というラノベでした。

『ベン・ハー』ではなく『ベン・トー』ってだけでそこそこ笑って、1〜3巻を持ち帰り、読んでみたら(ウィリアム・)ワイラー監督の『ベン・ハー』とはまったく関係なくて大笑いしました。アニメ化の企画でライトノベルを読む機会が増えた昨今ですが、今まで読んだラノベと一味違った面白さがあったのがこの『ベン・トー』です。なんと言うか、

物語の大筋以外の部分ほど異様に濃いんです!

まず弁当やどん兵衛などをはじめとする食べ物描写に凄く熱がこもってて、読むとツバが大量発生してお腹が減ります。その食欲という人間の生理の上に「美少女」要素が乗っかって、これでもかってくらい生理的に訴えてきて、しかもその上ギャグも効いて笑える。これにアニメならではの気持ちのいいアクションを加えて「面白くならないはずがない!」というか自分自身が

これをアニメで観たい!

と思ったもので、1巻読んで即梶田Pに電話しました。

って。早い話です、こーなると。実はこの時期、別の会社からもお話(企画)をいただいてたんですが「今回は『ベン・トー』1本に絞ろう」とその話をお断りしたくらい原作が気に入りました。ま、もう少し正確に言うと、俺の場合は仕事が掛け持ちになる際は必ず先方に許諾を得るんですが、今作は梶田Pの「1本に絞ってほしい」との要望で他社の方をお断りする事にした、というのもあります。何しろ普通「この企画ならこの監督」でお話が来るところ、企画より先に「ウチと何かやりましょう」って言ってくださったのが梶田Pなわけで、それはやっぱり自分にとっては冥利に尽きるんで「分かりました、じゃこれ1本でやります」と。実際「ウチと〜」と言ってきた時期がいちばん早かったのが梶田Pだし、「2011年はコレ!」と決めて悔いのない原作だし——いろいろですね。
 でもまあ、梶田Pとのお付き合いも結果長くなりました。何しろ初めてお会いしたのはGONZO版『Hellsing』(2001年)の時なんですから。『Hellsing』は演出処理のみ、しかも監督のコンテチェックが難航し、自分のところにコンテが下りてきたのが放映日の3週前(!)という極悪スケジュールなところ、必死でレイアウトに修正入れまくった2〜3週間だったので、梶田Pと顔を合わせたのも1〜2回。その時は「いやあ、たくさん画入れてくださってありがとうございます!」とお礼を言われたくらいしか記憶になく、『GAD GUARD』(2003年)の時も同じく1〜2回言葉を交わした程度。『砂ぼうず』(2004年)、『BLACK CAT』(2005年)の時は梶田P自身の肩書きが「制作管理」であるせいか『BLACK CAT』が高視聴率(深夜なりのですが)を獲得した時「やりましたね、監督!」と声をかけられたくらい……とそれまでは非常に淡白なお付き合いだったのですが、今作『ベン・トー』では凄く濃厚なお付き合いをさせていただいているわけです!

あ、アサウラ先生の「ベン・トー」、まだ未読の方は是非読む事をおすすめします。いい大人が十分楽しめるライトノベルですよ!

(11.07.14)