第227回
コンテ・演出とコンテのみ
まず、はじめに断っておきます。現在コンテを切ってる最中——つまりコンテ用紙の横にこの原稿を置き、コンテに疲れたら原稿を書く……というスタンスで今回取り組んでますので、いつも以上に取り留めのない話になり、オチすら見つからず「つづく!」になってしまう可能性大だという事をご承知ください!——ま、いつもの事かもしれませんが(苦笑)
監督作品を制作中のたびにこの連載で「コンテについて」いろいろ書いてきました。今もその楽しくも辛いコンテ作業の真っ最中。このコンテ(絵コンテあるいは画コンテ?)というやつ、昨今では書籍化されたりBD&DVDなどの特典で付いたりもするし、中には映像特典としてアングル切り替えでコンテ撮りバージョンが入ってる某いっぱいコレクションなどあったりしてファンの目に触れる事が多くなりました。でもできればそれを手にしたアニメファンの方々には、その「コンテの画が巧い・下手」よりも
このコンテの画を完成画面に仕上げたスタッフの力
の方に感動してほしいんです。コンテってのは前にも書いたとおり音楽に置き換えるならば「楽譜」にあたるわけで、その場合誰も「このト音記号、キレイに書けてんな〜!」とかに感動はしないでしょ? コンテも同じで「画が可愛いですね〜」とか言われても正直嬉しくもなんともないわけです。実際それで言うなら俺のコンテは1話と最終話では画が見る見る雑になっていきますし、『BLACK CAT』最終話のコンテを見た吉松(孝博)さんなどは「解読不能(笑)!」と言ってました。ただ、
丁寧に描こうと雑に描こうと、フィルムの面白さの7割を決めてしまう力がある!
のがこのコンテという作業なわけで、よってスケジュールの許す限りなるべくならコンテを多く切りたいと思うんです。ただ、誤解されてる方も多いと思うのでこの場を借りて言っておきますが、自分の場合、制作に入る際「俺、何本までコンテ切ってどこまでチェックした方がいいですか?」とその現場のプロデューサーないしデスクに訊く事にしてます。そこでその制作会社(スタジオ)側で仕事を繋いでいきたい演出さん・作監さんも何人か紹介していただくんですが、その際自分の唯一のお願い——
なるべく“コンテ・演出”を抱き合わせでやっていただける演出さんにコンテを振ってください
です。ま、あくまで「なるべく」なんですが。だーいぶ以前にも書いたとおり、コンテと演出が別の方だと、その1話分にコンテマンと演出(処理)と監督の3人の演出家がいる事になり「あとはどーせ監督が直すでしょ」ってコンテから「コンテがこう描かれてたからこうにしかならない」演出への無責任スパイラルに突入しがちなんです。だから制作さんから「この人は処理(演出)のみでお願いしようと思ってます」と言われたら、自分の場合すかさず「じゃ、その話数のコンテは俺が切る!」と進言するわけです。時間がない時は「ラフコンテまででも……!」と。つまり、自分のコンテならば隅々まではっきり演出さんに意図を伝えられるからです。以前、逆もありました。制作さんより「すみません、コンテマンが見つかりません」や「振ってたコンテマンに逃げられました」「○話のコンテマンがコケて(スケジュール破綻して)引き上げたい」と言われたんです(何本も!)。——もちろん、撒き直すスケジュールもなく、俺が全部拾わざるをえませんでした。あと、コンテを発注したはいいが2ヶ月以上かけてきた上(普通は3週とかが基本、その後監督チェックで1週間)、7〜8割直さなきゃならない場合などは「……これなら自分がゼロから描いた方が早かった」とも思ったりして——
まあ、やっぱり悲喜こもごも……いろいろですね、コンテは!
ちなみに今回のシリーズは制作さんの頑張りもあって、非常にスムースにコンテ・演出が振れてて大変感謝です!
そう言えば話は飛びますけどGAINAX制作の
『ダンタリアンの書架』が始まってますね!
実は板垣もコンテのみお手伝いさせてもらいました。そのうち放映されると思いますが、俺、このコンテはかなり楽しんで描いたんです! 去年の『パンスト』の後、白石制作Pから話があって「監督もあるから処理は無理だけどコンテのみなら」と軽い感じで受けたんですが、その時点で上がってた1〜5話のシナリオを読んで「結構面白そう」と思って、コンテ時はノリノリでした。まず「朗読」ってのがいい! あと登場人物が少なくて、1本1本のドラマが分かりやすいのもよいです。自分がコンテ切った話も登場人物は5人だけ。——何か自分が監督した『Devil May Cry』に雰囲気似てました。アクションのない『Devil May Cry』って言うか……。実際俺自身はこういう「しっとり感」な作品って好きなんですが、なかなかそういう仕事を振ってもらえないのが残念な話です。『ダンタリアンの書架』は美術も重厚で好きだし、何より美術監督が山賀(博之)さんってのがユニークすぎるでしょう(笑)。監督の上村(泰)君もキャリア的にはやや大抜擢気味な感じですが、こういうのもGAINAXっぽくていいんじゃないでしょうか。事実、朗読をはじめそこかしこに上村監督の拘りは生きてると思います。キャラデ・総作監の木野下澄江さんも『この醜くも美しい世界』第7話で可愛い原画をたくさん描いてくださった方で、今回も相当描きまくってるようです。ダリアンのデザイン、可憐でいいですよね……!
——てとこで時間切れ。スミマセン!
(11.07.28)