第260回
『ベン・トー』の話(16)
『ベン・トー』の各話解説もいよいよ大詰め!
#11は脚本/ヤスカワショウゴさんで、コンテ・演出/加藤敏幸さん。#7、#9とオリジナル話数をメインに書かれたヤスカワさんに最後は「原作に沿った話を!」と。巧い方は原作・オリジナル問わず何をやっても面白くまとめてくださいます。そもそも#11は
病で弱った槍水先輩の意外な可愛さ
に尽きるわけで、それはもう原作にある愛らしさが描かれてれば十分なんです。特にパジャマの槍水は自分もプロデューサーも「これは絶対外せないよね」と、それはもうシナリオに入る前から必須項目として挙げてたくらいでした。そして俺自身は#10と#12のアクション話数があったので、このシリーズにおける槍水の最大の見せ場であるこの話は、#03でも堅実な演出力を見せてくださった加藤敏幸さんにコンテ・演出をお任せしました。スーパーで駆けまわる幼少期の沢桔姉妹のくだりや病床の槍水と佐藤の掛け合いのくだりなどの可愛さは、加藤さんの誠実なカット割りがあったればこそのもので、自分などのとにかくケレン味優先なコンテではとても出せない「やさしい空気」に満ちてて、とても好きです。あとヤスカワさんの「徹夜ハイ状態」の白粉も弾けてて大笑いしました。あと、なんといっても#11は平田雄三さんの総作監でしょう。かどともあきさんの作監修正もただでさえしっかり入ってるのに、さらに平田さんの総作監修正がガッツリ——それこそ原画にまで入ってて(通常、総作監はレイアウト修正までです)凄い仕事でした。まさに「ここが最後の見せ場」と言わんばかりの槍水の健気な愛らしさが表現できてたのは平田さんの修正のおかげかと思います。あ、あとはCパートの薬局のお姉さんの指の動き、最高でしたね!
で、いよいよ最終の#12。もともと今回のシリーズは原作1〜3巻までと決まってたので、ラストはオルトロスとヘラクレスの棍棒になります。ただ、プロデューサーや編集者の方々と話し合って
- 1クールのシリーズに相応しい盛り上がりを作る!
- 槍水を立てる!
- シリーズとしては「佐藤の成長劇」として一貫する!
という命題が自分に課せられてました。ぶっちゃけラストに槍水が駆けつける案ってのも打ち合わせでは出た事あります。でもそうすると「佐藤の成長劇」にならなくなってしまうし、
槍水先輩の見せ場ってバトルだけではないんじゃない?
との某プロデューサーの言葉に「あ、なるほど」と思ったんです。つまり
成長した佐藤を「よくやった」と褒めてやるのも槍水にしかできない見せ場である
と。そこまでまとまったところで、実はこれは委員会の方々に説明するよりずっと前に、あのラストカット
アブラ神がニヤリとして退場し、閉まった扉に『ベン・トー』のタイトルがかぶって狼たちの咆哮!!
が先に思い浮かびました。あ、話は少し戻りますが、今作における「佐藤の成長」とは、あくまで内面(精神面)の部分であり、肉体的な——例えば「あいつの必殺技を打ち破る」ために筋トレする云々のスポ根的成長ではありません。それは原作にも逆らう事になるし、そういうスポ根的やりとりに尺を費やすとやけに汗くさい話になるので。
て、とこですいません!
(12.03.29)