web animation magazine WEBアニメスタイル

 
COLUMN
板垣伸のいきあたりバッタリ! 第131回
哲さんと食事、皆と飲み会へ

 8月6日(木)、いろいろな経緯で、なぜか出崎哲様とお食事しました。出崎哲さんと言えば、現在『COBRA THE ANIMATION』を制作してるマジックバスの社長で、出崎統監督の実のお兄様。哲さんとお会いするのは初めてです、もちろん。どーして、哲さんとお食事する事になったかはいちいち説明しません。白石(直子・嫁)に訊いてください、彼女が仕掛人ですから。……というわけで、



 ――な感じに。なんかヤケに楽しかったです。実は俺、マジックバスのファンでして。あれ? 言ってなかったっけ? つまり、自分がアニメにハマッた(アニメの仕事に興味をもった)のは、1988〜1991年あたりのOVAバブルの頃。その頃、出崎統監督のOVAや川尻善昭監督のOVAを楽しみに待つかたわら、追っかけて観たのが、

 出崎哲監督&マジックバス制作のOVA

 だったんです。

『RIKI-OH』とか『哭きの竜』とか『神州魑魅変』『MAD★BULL34』とか!

 特に『哭きの竜』などは自分的に『王立』や『トップ』『ナディア』などと並ぶガイナックスの代表作(『哭きの竜』は出崎哲監督でマジックバスとガイナックスの共同制作)だと思ってます。当時のマジックバスで制作してたOVAはTVでは放映困難な「大人のアニメ」ばかり。エロだ、ヤ○ザだ、バイオレンスだ、と。名古屋で高校生やってた時、『哭きの竜』を観て「東京にはオッカナイおじさんたちが麻雀ばっか打ってる歌舞伎町って怖い町がある」と知ったし、『RIKI-OH』を観て「カミソリを口の中に入れてタコ殴りにして、“痛さを楽しむ”エンターテイメントがある」事も知りました。東京に出てくるまでの18年間、ずっと姉とか妹との共同部屋だったため、エロ本やエロビデオをろくに観る事もできずに育った板垣が唯一、アニメビデオにかこつけてエロとか……つまり、「大人の世界」を垣間見る楽しみを知ったキッカケだったんです、レンタルビデオで借りて観てたマジックバス作品は。もちろん、激しいシーンとかは姉や妹がいない時に観たりしてました。ま、今となっては気を遣い過ぎだったとは思いますが(照笑)。
 出崎哲さんとの話題、

  • アニメ『哭きの竜』はなぜ続きを作ってくれないのか? 『B.B』も『修羅之介斬魔剣』も……。
  • 黒澤明監督作品「デルス・ウザーラ」を8回観た哲さん!
  • 『すごいよ!! マサルさん』(マジックバス制作)の主題歌にPENICILLINを推したのは哲さん!
  • 『キャプテン』『プレイボール』と原作者・ちばあきお先生が大好きな哲さん!
  • アート・フレッシュ(昔、杉井ギサブローさんが虫プロから独立して主宰してたスタジオ)時代の話。

 ――等々、話題はお店のラストオーダーの時間まで尽きず。人名もいろいろ出ましたが、中でも印象的だったのが大塚(康生)さんや小田部(羊一)先生の話。アニメ史的によく語られる「東映派」と「虫プロ派」の話。「お互いにいがみ合ってた」的に思われがちですが、意外に大塚さんや小田部先生本人に訊くと全然そんな事はなく、東映の人たちが平気で「『鉄腕アトム』を手伝ってたりしてた」って言ってました。  今回、哲さん方面から大塚さんや小田部・奥山先生の話が聞けて嬉しかったです。だって大塚さんが哲さん誘ってジープで○○○○○を○○○○したとかいう一歩間違うと犯罪寸前な話や、哲さんが小田部夫妻の息子さんを幼稚園に迎えに行ったりした、とかは初めて聞いた話でしたから。
 あと、なにより哲さんが素敵だなと思ったのが、あのお歳ながらいまだに

 笑って夢を語れる!

 って事。聞きました。哲さんが「死ぬまでに絶対やりたい企画」の話。それは誰もが知ってる原作だけど、一応タイトルは伏せときます。「こーゆー風に作りたい! あーゆー風に作りたい!」と熱く語っておられて感動しました。と同時に、

 自分はこの仕事をあと30年続けて、60過ぎてからも哲さんみたいに笑って夢を語れるだろうか?

 と真剣に考えたんです。アニメ誌の記者さんたちも、なんで出崎哲さんにもっと話を聞かないのでしょうか? 今度は是非お酒飲みに行きましょう、哲さん! 制作の有馬さんも。

 で、今週は短くてゴメンナサイ。今から阿部(恒)さんや(山本)沙代監督と飲み会行ってきます(ただ今、8月9日、日曜日)。



(09.08.13)

 
  ←BACK ↑PAGE TOP
 
   

編集・著作:スタジオ雄  協力: スタイル
Copyright(C) 2000 STUDIO YOU. All rights reserved.