web animation magazine WEBアニメスタイル

 
COLUMN
板垣伸のいきあたりバッタリ! 第14回
コラム2クール目突入のあいさつ
〜アニメ界の40代

 なんとなく始めたこのコラムの連載も、今制作中の『デビル メイ クライ』全12話を越えて2クール目突入! もう少し頑張って『砂ぼうず』か『BLACK CAT』くらい続けたいと思っておりますのでよろしくお願いします。
 で、特に内容が変わる事もなく、ダラダラ思いつくよしなし事をそこはかとなく書(描)きつづっていこうと思うのですが……何にしよう? うーん、最近……でもないか……ここ数年、ふと気をゆるすと考えてしまう――

 忍び寄る、そして確実に来る40代!

 ――ていう、たまには暗い話はどうでしょう……?
 いや、自分もアニメ歴12〜13年とかになると当然、自分が20代の頃に知り合った当時30代の大先輩たち(このコラム第3回の話題ともカブる)も、もう40代。はじめに断っておきますが、俺のまわりには『将来ああなりたい!』て感じの素敵な40代はたくさんいます(安心してください吉松さん!)。ですが、それに対して、

 「ああ〜、あの○○さんあんなんなっちゃって〜」

 て、ガッカリするくらい醜い40代がいるのも事実です。別に“太った”だとか、“ハゲた”なんて容姿の醜さではありません。“金(ギャラ)”です、“金(ギャラ)”!
 アニメ業界人の方々は御存知だと思いますが、アニメーターってTVシリーズで大体、1カット3500円から高いので5500円とか、劇場だと1万円から数万円(?)とかのいわゆる“出来高制”っていうのが大半です。ところがその一方で、毎月、かなりの高額(どのくらい高額かというと、月収が動画マンの年収ぐらい)を会社(スタジオ)から貰っているアニメーターがいます――そう、“拘束”ってヤツですね。
 ……また断っておきますが拘束全般を否定しているわけではありませんから。だって、手が遅くても激上手な人や、長年その会社(スタジオ)の作品に貢献した人たち、ヒット作の生みの親などはいいのですよ、会社がくれるって額を貰ってれば。ところが、最悪なのは……

 ・原画描かせりゃ、TVシリーズで月20〜30カットが限界!(なぜ、家や車が買える……!?)
 ・会社(スタジオ)から振られる仕事をより好みする!(文句言うな!)
 ・自分にいい仕事(キャラデザや監督)がくるのがあたり前だと思ってる!
 ・その会社(スタジオ)について行けば(寄生していれば)一生安泰だとカン違いしている!(アニメ会社はどんな老舗でも簡単に傾きます!)
 ・もちろん、ヒット作もない!

 ――ていう立派な“拘束エスパー”や“超拘束ガルビオン”の存在ですよ。これを読んで『ムカッ』とした人は、身に覚えがあるのでしょう。……ごめんなさい。でも、自分には不思議でならないのです。ここ1〜2年でプロデューサーさんの口からよく、

 「アニメ(のDVD)って、本ッ当ーに売れなくなったんですよ〜」

 と泣き言を聞くようになりました。数千どころか、数“百”本しか売れないだとか……、はたまた(DVD)BOXの予約が数“十”件しか入んなかった悲惨なアニメがあるんですよ。不思議でしょ……? 小心者の俺には考えられません。

 そこまで売れなくなったアニメを仕事にしてるアニメーターが、売れる売れないに関わらずたいして量も描かず左ウチワ……

 その“報酬と成果が不つりあいなアニメーター”が何年も何年も大会社に寄生して、カン違いして、醜い40代になるんですよ。……そして醜い40代は大抵、“ギャラ分の仕事を積む”と、

 「自分は自分にしか描けないもの、量より質で勝負してる!(『俺は作家だ!』)」

 という態度で要求された量をこなす気すらまったくなく、じゃ“会社の商売のために何か企画でも立ちあげるのか?”といえば、

 「自分はアニメーターだから……(『俺は絵描き職人だ!』)」

 て感じなんです。……ああ醜い。
 ――以下は、板垣が実際に聞いた、醜い40代の名台詞です。

 「俺を拘束するなら、最低70万は必要だからさ〜」(あるキャラクターデザイナー。……ヒット作と呼べるモノは……なかったような?)
 「俺の原画は1カット5万だからさ!」(……んな馬鹿な! あっ、ちなみにTVシリーズね)
 「いいかげん(アニメ作る)本数減らせよな〜」(……はい、本数減ったら真っ先に仕事がなくなって困るのはアンタでしょ!)

 こういう醜い40代はアニメに対しての夢をちっとも語ろうとしません。
 近頃、さらにイヤなのは、自分の同年代や考えたくない事に20代の若手までもが、一度劇場の作監をやったとかで月数十万の収入が続いたりすると、次の仕事がTVシリーズ(注・制作費がまったく違うって!)でも同じ額とかそれ以上の額を要求したりって話を聞くようになった事です。確かにアニメ業界全体が今までソフトがいくら売れてもアニメーターに還元されるシステムにしてこなかったのがマズかったんでしょうが、あまり聞きたくないですよね、夢を語らない醜い40代予備軍の話は……。

 ――ひょっとして俺もその予備軍なのかな〜?

 若いアニメーターたち……、君たちぐらい巧ければ普通に描いてても収入なんて自然と増えるんだから、「いつかこんな作品を作りたい!」って夢を語って楽しくアニメ作りましょうよ!

 俺もアニメの夢を語れる40代になりたいと思ってます!

 んで、アニメの夢が語れなくなったら、俺は――

 ……やっぱ陶芸か。



(07.04.19)

 
  ←BACK ↑PAGE TOP
 
   

編集・著作:スタジオ雄  協力: スタイル
Copyright(C) 2000 STUDIO YOU. All rights reserved.