「PLUS MADHOUSE 04 りんたろう」(発行・キネマ旬報社/構成・編集・スタジオ雄)は凄くいい本です! 絶対お勧め!!
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いやあ、久しぶりに90年代アニメファンだった頃の魂が呼び覚まされました。以前にも言ったとおり、板垣は
です。どちらかというと東映系のアニメーター教育を受けたと自負してる俺が、こと「演出」となると「虫プロ、虫プロ」言ってました。テレコムではけっこう異端視されて、
と言われたりもしたものです。確かに東映の『ホルス』『長猫』『どうぶつ宝島』も好きです。丁寧に作画された被写体を自然にカメラが追って……動画枚数何万枚の大作ばかり。これらは間違いなく映画です。でも、動画枚数も制作期間も少なく作られたであろう、虫プロのTVシリーズ『佐武市』『どろろ』『ジョー』にも映画を――いや、あえて“にこそ”もっと映画を感じるのは俺だけですかね?
ケレン(外連味)――俗受けをねらったやり方。はったりやごまかしの意
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とは言うものの、それがなくて映画って作れるでしょうか? いや、逆に
ケレン味さえあれば少なくとも“映画に見せる”事はできる
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という事を証明してると思います、虫プロ作品って。そして、それが日本のアニメスタイルにどれだけ影響を及ぼしたかはもはや計りしれないでしょうし、何しろ理屈抜き、カッコイイですから。そのカッコイイ虫プロ系演出家(監督)の中で確実に誰よりも一番映像にこだわったのが
まるで一筆書きのような全話コンテで壮大な人間ドラマを描ききる出崎統監督作品も、1カット1カット高密度にコンテ描いて自ら画面処理の隅々までチェックして丁寧に丁寧に作るりんたろう監督作品も、同じ「アニメ」。いろいろな作り方があっていいし、その方が面白いですよね。そのりんたろう監督の創作の秘密に鋭く迫った本が「PLUS MADHOUSE 04 りんたろう」です。
「アニメスタイル」第2号のインタビューよりさらに濃い内容で、アニメ業界に入る前の話から東映動画入社、虫プロ入社、劇場『999』から角川映画、マッドハウスOVA時代から最新作『よなよなペンギン』まで、まさにりんたろう監督丸裸!
これは、りんたろうファンはもちろんの事、これから映像作りを志そうとしてる人たちにも是非手に取る事をお勧めします
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きっと、『鉄腕アトム』の話を読めばディレクターになるには下積みだけがすべてではないと思うだろうし、『グランプリの鷹』の項では画作りの面白さ、楽しさを知るでしょう。『幻魔大戦』『カムイの剣』『迷宮物語』では作品作りにおける人と人との出逢いの重要さ……そして最後には60を過ぎて衰えるどころかますます盛んなフロンティア精神に感動します!
自分もゲンナリする事が多かった2009年。人にもアニメにも失望しかけてた時に、
って気分になってきました、この本読んで。みなさん是非買いましょう。
そうそう。細田(守)監督の「『999』1作目よりも『さよなら』(2作目)だ!」のエッセイ、俺としてはまるっと同感! とは言いがたいですが、
ラストシーン、メーテルと別れた後、999車内で見せる鉄郎のカメラ目線
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は俺も最高だと思ってました、ずっと。それをハッキリ絶賛してくださってて嬉しかったです。
ちなみに俺が一番好きなりんたろう作品は
です。あの原作の物量をたった60分にまとめる事で、密度の高いりんたろう画面を短時間で味わえる上、ドラマ度もさらに高く感じられます。60分であのドラマは普通の映画のフォーマットよりもかなり短く、1カットの画作りで語る必要があるわけで、それこそりんたろう監督本領発揮! 何回も観られる本当によい意味でコンパクトな仕上がりで名作だと思います。その他、どの劇場作品でも、りんさんは出だしのツカミが、どれもスケールが大きく素晴らしい!
でも残念ながら、自分、さんざんマッドハウスに出入りしては学生の頃寮で同室だった事もある友人・山田勝哉君(『SPACE PIRATE CAPTAIN HERLOCK』メカデザイン、『48×61』作画)トコにしゃべりに行ってたりするのに、いまだりんさんと話した事がありません。ちょっとさびしい。
以上、2009年最後の原稿でした。この後の年内の予定はGAINAX忘年会とI.G忘年会……。
来年は各話コンテ・演出と各話監督。そして、次の準備をしたいです。