え? 何をしてるか……って?
……見りゃ、わかるでしょ!? コンテきって(描いて)るんですよ、コンテ!
今日、明日中には『ロザリオ〜』のコンテ上げて、別の作品のコンテに入んなきゃなんないんですから……。そしてその2本のコンテを処理(演出)しつつ、3分程のPVのコンテ・作画やって新年を迎える事になります。
って冷やかしの声がよく飛んでくるんですが、仕方ないでしょ。こちとら、
「僕、企画持ってます。今はその監督作品の準備中〜!」
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つって、数年何の成果もなくても月ン十万の給料で食っていけてる超一流・スーパー・グレート・ジーニアス・社員・クリエイター(TISGGSC……長っ!)じゃないんですから〜(失笑)!
アニメ業界人でない方々、または業界にいるいないに関わらず演出家志望の方々に説明しますと、TVシリーズのコンテ・月1本じゃあハッキリ言って、
……いや、正確に言うとゼータク言わなきゃ食っていけますよ。でも、33にもなった男が、自分1人が食っていけるだけの稼ぎしかないと、
なので、演出で食っていこうと思うと、少なくとも常時コンテ2本と処理(演出)か、コンテ1本ならば処理(演出)の方を2本……とかをこなせるようにならないと将来的に家族なんて持てないでしょう。そーしなくても家族が食っていけるのは、それこそ“TISGGSC”――つまり選ばれし者たちだけなんです。
そこで、ごくごく平凡な一演出家の板垣こそが書(描)けるシリーズを開始するとします! 演出家希望の方々の参考にでもなると幸いなんですが……。
板垣的・アニメ演出家への道(1)
前述のように、もともと演出家志望で業界入りした俺ですが、さらに前述のような理由でテレコムを辞めて晴れてフリーとなってから、数ヶ月後には、元テレコムの制作・近藤光様(現・ufotable社長)からの誘いで、当時まだできたばかりのufotableの企画に参加しました。その時の仕事内容は、イメージ・ボード兼アクション・アニメーターって事で関わってました。ところがその企画は、イメージ・ボード数十枚とパイロット・フィルム1本の時点で、諸般の事情により中断する事になって自分はユーフォーを出る事になった訳です。その作品の監督様から言われた言葉は今でも忘れません。“板垣にはアクション原画をやってもらいたい”と思ってたその監督様と一緒にラーメンを食ってた時、俺は、
「板垣君は監督とか演出にはなれないと思うんだよお〜」
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……と言われました。まあ、その監督様の真意は今もってよく分かりませんが、あれから7年後の現在、その彼の監督作品こそあまりお目にかからなくなったところをみると、本当、キビシイ世界なんだなあと思います。
そんなわけで“俺、やっぱり演出にはなれないのかなあ〜?”と思いつつ、ユーフォーを出、自宅で『はじめの一歩』の原画を描いてた時、学生時分からの友人、平井義通様より電話がありました。当時の平井様は(有)アゼータ・ピクチャーズという会社で制作デスクをしていたのです。その彼が言いました――。
「タックから『グラップラー刃牙』ってシリーズのグロスを受けたんだけど、君、演出やんない?」
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それに対して、俺……。
――こうして、板垣は演出家になれました。
板垣的・アニメ演出家への道――