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第41回付録
戦国魔神ゴーショーグン 16話「さらば青春の日々」
脚本 首藤剛志
登場人物
真田ケン太
北条真吾
レミー島田
キリー・ギャグレー
サバラス
OVA
ファザー
ブンドル
カットナル
ケルナグール
ネオネロス
シュミット
リリー
花屋の娘
コマンダー
司令官
会議員
声
その他
○ 瞬間移動を続けるグッドサンダー
○ ドイツ南部・ノイシュヴァンシュタイン城付近の湖(夜)
城をよぎってグッドサンダーが現れ湖底に消える
○ グッドサンダー内・リビングエリア
一同がいる
ファザーの声「瞬間移動地点、ドイツ南部……」
真吾「ドイツ南部か……」
OVA「ケン太君、お勉強しましょう。ドイツ南部最大の都市ミュンヘンの名物は……?」
キリー「もち、ビールさ。名物のソーセージをつまみにグビーッといきてえ」
OVA「キリーさんに聞いていません。……ケン太君、ミュンヘンは9月の終わりから10月になると……」
真吾「オクトーバー・フェスト……世界最大のビールの祭りがある……」
OVA「ちょっと真吾さん……ケン太君に聞いているんですよ」
ケン太「いいってこと。僕、ビールなんて、まだ興味ないもん」
真吾(遠くを見る目で)「オクトーバー・フェストか……」
サバラス「もう三年になるな……」
真吾「隊長……」
サバラス「行って来い。ただし、いつでも戻る準備はしておけよ」
真吾「了解……」
真吾、ダーッと出て行く
レミー「隊長、どういう事? あれ」
サバラス「誰にでも、それなりの過去がある。真吾には、真吾のな……」
○ キングアロー・コクピット
真吾の顔、遠くを見つめている
“ビヤ樽ポルカ”が聞こえて来る
○ オクトーバー・フェスト
広大な公園に巨大なテントがいくつも建てられ、何万人という人が、歌いかつ飲み、大変な騒ぎである
その喧騒の中、ひとり、ただよう様に歩く真吾
真吾「変わっていない。何もかも……」
その顔が、銃のフレームに入った
○ 公園の傍のホテル・窓際
シュミットが銃のスコープを見ている
シュミット「そう、何もかも変わっていない……」
傍にドクーガのコマンダーがいる
シュミット、銃を降ろす
コマンダー「なぜ撃たん。あの男が標的なんだぞ。今がチャンスではないか」
シュミット「殺しのやり方、そして時間は俺が決める」
コマンダー「何だと。ドクーガに逆らうつもりか? ドクーガは今度の仕事に一億ドルも払っているんだぞ」
シュミット「引き受けた仕事は果たす。……だが、俺はフリーのこわし屋だ。俺のやり方に口を出す奴はたとえドクーガでも……」
銃をコマンダーに向ける
コマンダー「……わ、わかった。……出すぎた事を言ってすまない」
シュミット「標的は確認した。さあ、俺の前から消えろ。目的を遂げるまで、口出しする奴は依頼主でも邪魔者として消す」
シュミット、ヒヤリと笑う
○ ドクーガ基地
シュミットの顔が写っている
ブンドル達がいる
ブンドル「通称ブルーシャーク、敵からも味方からも恐れられているプロのこわし屋……。我々ドクーガもかなりの軍事基地を壊されている」
カットナル「そんな危険な男をなぜ生かしておく」
ブンドル「彼は請け負った仕事は完全にやりとげるプロだ。その仕事に敵味方の区別はない……。ならば味方として使うよりないではないか」
ケルナグール「しかし、何とも生意気な奴だな」
カットナル「フン。この仕事が終われば消せばよい……」
ブンドル「それに今回はとっておきの趣向がある……」
カットナル「趣向?」
ブンドル「この戦い、隅から隅まで我々の映像装置、電波装置、集音装置が立体的に追いかけている。見ものだぞ……」
○ 墓地
遠くでポルカが聞こえる
真吾が来る
フト足を止める
花売り馬車の屋台がある
花屋の娘に
真吾「白いユリの花をありったけくれないか……」
娘は一本のユリの花を出す
娘「すいません。これだけしか残っていないんです。先刻(さっき)来たお客さんが、殆ど買ってしまって……」
真吾「先刻(さっき)来た客……?」
○ とある墓の前
真吾、ユリを持って来る
墓の前にユリの花束が飾られている
突然、銃声がして、真吾の持ったユリの花が吹っ飛ぶ
シュミットが出て来る
シュミット「お前に花をたむける資格はない」
真吾「シュミット……」
シュミット「お前はリリーを殺した。俺の恋人であり、しかも自分の婚約者でもある女をな……」
真吾「……」
○ 回想
フィールドで破壊訓練をするシュミットと真吾
機銃掃射の中、目標を爆破して土壕に飛び込むシュミットと真吾
真吾「シュミットと俺とは親友だった。そして国連平和部隊の破壊工作員として一・二を争う腕前だった」
壁から出る標的を、転げ回りながら撃ち終わるシュミット、見つめる真吾に指でやったぜとばかり合図する
真吾が標的を撃ち始める
全弾命中する
合図する真吾
肩をすくめるシュミット
○ 酒場(回想)
ポルカが流れる
真吾のN「そして俺達は身寄りのないリリーという一人の娘を愛した」
大ジョッキを前に、ボケーッと二人が一人の娘リリーを見つめている
ビールをジョッキに次々についで行くリリー
ボーイが真吾たちの前に通りかかる
ボーイを呼び止めた真吾、目の前のビールをリリーへ指さす
ボーイ、OKをし、手を出す
真吾、懐を探る。お金がない
シュミットと真吾、またボンヤリとリリーを見る
ボーイがリリーの側に来て、何ごとか告げる
リリー、ニッコリ笑い、大ジョッキにビールを注ぐ。そして、真吾とシュミットにジョッキで会釈する
シュミットと真吾、やったとばかりに立ちあがり、ジョッキで会釈する
リリー、楽団たちに合図する
ビヤ樽ポルカがかかる
リリー、一気に飲みだす
シュミットと真吾も一気に飲みだす
「ヤレ、ヤレ!」と酒場の一同も拍手で煽りたてる
リリー、一気に飲み終える
赤らんだホホにさわる
シュミットと真吾も飲みほし、会釈する
リリー、さーッと走って来て、シュミットと真吾に軽くキスをする
シュミットと真吾顔を見合わせ、やったと親指で合図し、次の瞬間目をまわしダウンする
ビヤ樽ポルカ、ロマンチックなクラシックに変わって
○ イメージ・茶色の写真
ビアホールでかしこまって写っている三人
軍服を着た真吾たちと、軍帽をかぶったリリー
三人で自転車に乗る写真
(注)みんなコチコチで写っている写真であり、それがかえって、三人の関係を表現している――すなわち、公平な愛情……どの写真もCMのイメージのようなイージーな恋愛ムードはない
真吾のN「そして、リリーも俺達二人を愛してくれた……多分……俺達と同じように……」
○ 墓場(現実)
真吾とシュミットがいる
真吾「確かにリリーを殺したのは俺かもしれない。だが俺は今、死ぬ訳にはいかない……」
シュミット「だろうな。俺にとっても、これが最後の仕事のつもりだ」
真吾「どうしてもやるのか?」
シュミット、いきなり真吾の足元に銃を撃つ
続いて連射される銃弾
真吾「!!」
ころげまわり、墓石の陰に隠れる真吾
シュミットも墓石に隠れる
シュミット、カートリッジを取り替える
シュミット「ケリをつける時さ」
○ ドクーガ基地
ビジョンを見つめるブンドル達
ブンドル「いよいよ始まったな。楽しもうではないか」
ケルナグール「まるで西部劇の決闘だな。くだらん」
ブンドル「これがブルーシャーク、シュミットの戦いの美学だ。それより、美学の分からん輩(やから)は今の内にグッドサンダー攻撃の用意をしたらどうだ?」
ケルナグール「よーし、ゴーショーグンさえ動けなければ、ビムラー融合炉を傷つけずに手に入れる方法などいくらでもある」
ネオネロス「ビムラーが爆発すれば我々もろとも太陽系が吹き飛ぶ事を忘れるな……」
ケルナグール「ハッ!」
ケルナグール出ていく
ブンドル、ビジョンに写るリリーの写真を見る
ブンドル「リリー・レーン……しかしこの女、死してなお二人の男を闘いにかりたてる……それ程の魅力があるというのか……」
○ 墓地
シュミットと真吾の激しい銃撃戦
墓石の間を駈けまわる二人
真吾のN「どうしてこんな事に……」
真吾撃つ
真吾のN「そう……そうだった。あの日から全てが変わっていったんだ」
○ 国連平和軍指令部(回想)
真吾とシュミットを前に指令官が立っている。
指令の声(エコー)「北条真吾、ならびにシュミット・ヘンケン……転属を命ずる。北条真吾は、ヨーロッパ地区部隊情報センターに、シュミット・ヘンケンは、アフリカ動乱地区の戦闘隊長に命ずる」
シュミット「戦闘隊長……?」
真吾「シュミット……」
○ イザール川のほとり(回想)
真吾とシュミットがいる
シュミット「真吾、リリーを頼む……」
真吾「シュミット……」
シュミット「俺は戦場に行く……帰る見込みは殆どあるまい……。その前にリリーの幸福(しあわせ)を見届けたい。お前ならリリーを幸福にできる。真吾、リリーと結婚してくれ」
真吾「しかし、リリーの気持ちは……」
シュミット「昨日、リリーには別れを告げた……真吾、お前は誰よりもリリーを愛している筈だ」
真吾「……シュミット」
シュミット「そしてこの俺も、誰よりもあいつを愛しているつもりだ……畜生!」
シュミット、いきなり真吾を殴る
吹っ飛ぶ真吾
シュミット「諦めたよ……ただしリリーを不幸福(ふしあわせ)にしたら殺してやるからな」
シュミット、倒れた真吾に握手を求める
シュミット「さあ、もうすぐビール祭りだ……婚約発表は派手にやろうぜ!」
真吾「シュミット……」
ニッと笑いかえすシュミット
○ 墓場
真吾の隠れている墓石を弾がかすめる
我に返る真吾
銃弾をかいくぐり、墓場の外に飛び出す真吾
荒い息である
真吾のN「そう、俺は誰よりもリリーを幸福にするつもりだった……だが……」
○ 国連平和部隊指令部(回想)
真吾と指令官
真吾「なんですって、ミュンヘンのニューネロスの情報を探れ?」
指令官「世界平和にとってニューネロスの台頭は由々しき問題だ……」
真吾「お断りします……断れぬとあれば、軍を辞職致します」
指令官「秘密を知った以上、この仕事だけはやって貰わねばならん。君はもうすぐ結婚すると聞いている。奥さんに悲しい思いをさせたくなければ、やることだな」
真吾「指令官……あなたって人は」
指令官「平和を守るのは、やさしい事ではない。この仕事が終われば、後は自由にしろ」
真吾「……」
○ 街路(回想・夜)
バーン!
鉄の扉を突破する車
車を追って数人の男達が銃を撃つ
たちまち、男達にサーチライトが当てられ、軍隊が男達を取り囲んでいる
車が止まる
車の中で目を閉じている真吾
指令官が近づいて来る
指令官「よくやった……」
真吾(書類を出す)「これでいいんですね」
指令官「ああ、終わったよこれで……。君は自由だ」
頷く真吾
真吾のN「だが、それは何の終わりでもなかった。いや、全ての始まりだと言えた」
○ 街路
走る真吾
追うシュミット
祭に酔う人々の間をひたすら走る二人
○ ビール祭りの会場
真吾、入ってくる
真吾のN「そう、あれは三年前の今日……この会場だった」
真吾、フーッと前のテーブルを見る
○ 同(回想)
二人を中心にして知り合い一同が肩をゆすって歌っている
一人が立ちあがる
不気味にセコンドの音が聞こえる
知り合い「それでは、北条真吾、リリー・レーンの婚約発表を行います。国際結婚ではありますが、お二人とも身寄りのない一人ぼっち……二人の愛があれば何ら問題もありません。それでは皆さん、乾杯!
幸福そうな真吾、リリー。そして少し離れてシュミット……そのそれぞれのカットショット
セコンドの音――
次の瞬間、大爆発が起こる
悲鳴、怒号
会場は一瞬の内に地獄になる
シュミットがよろけながら来る
シュミット「リリー……リリー……」
真吾が血まみれで倒れている
その手に握られたリリーの手
シュミット「!!」
リリーは巨大な柱の下敷きになっている
真吾「リリー……リリーは……」
シュミット(かぶりを振る)
真吾、ガックリと頭をたれる
○ 暗闇
遠ざかっていくリリーの面影……
真吾のN「それは俺一人に復讐する為のニューネロスの無差別爆弾攻撃だった。リリーを含め54人が死んだ」
○ 病院・手術室(回想)
包帯だらけの真吾が運ばれて来る
シュミットが駆け寄る
シュミット「真吾……リリーを殺したのはお前だ。なぜ結婚を前にしてニューネロスなんかと係わった。なぜ危険な仕事をしたんだ。俺はお前を殺してやる……」
真吾の包帯だらけの目から涙が落ちる
真吾のN「そう……俺がリリーを殺したのかもしれない……。そして53人の無実の人の命も……」
○ 倉庫(夜)
○ ニューネロス会議場
ニューネロスが会議している
会議員「平和部隊への報復措置は死者54名の大成果を収めました。これで政府も軍隊も震えあがる事でしょう」
一同、挙手して「ニューネロス万才、ニューネロス万才!」
突然、電灯がが消える
会議員「な、何事だ」
と、マイクからシュミットの声がする
シュミットの声「大成果はこれからだぜ、ニューネロスの諸君……俺はお前達の攻撃の巻き添えをくって、最愛の人を殺された男だ……。死んで貰う」
○ 倉庫を見降ろす丘の上(回想・夜)
シュミットが、手に持った起爆装置のスイッチを入れる
吹っ飛ぶ倉庫
シュミット「次は真吾だ……」
表情を変えない
○ 病院・病室(回想)
真吾が横たわっている
ツカツカと靴音がする
目を開く真吾
サバラスである
サバラス「昨日、君の友人は、たった一人でニューネロスに大打撃を与えた……。今、その生死は不明だがな……」
真吾「シュミットが……」
サバラス「ウム。だが、ニューネロスは所詮悪の組織のほんの一角にすぎない……」
真吾「ほんの一角……?」
サバラス「本当の敵は、別にいる。共に戦わないか?」
真吾「……」
真吾のN「俺はグッドサンダーのファイターになり、そしてシュミットは……」
○ ビール祭り会場(現実)
ハッとなる真吾
真吾の首すじに銃が突きつけられる
シュミット「プロの壊し屋、ブルーシャークという訳さ……外に出ろ! リリーの死んだ所でお前を殺したくない」
真吾、いきなりテーブルの上のビールを後ろむきにシュミットにかけると、シュミットをテーブルの上に背負い投げにする
シュミット、真吾のズボンのポケットにマイクの様なものを投げ入れる
真吾、会場から飛び出して行く
胸のポケットから通信機が鳴る
真吾、取り出す
サバラスの声「敵の攻撃が始まった」
○ 湖
浮上したグッドサンダーの前方に、ケルナグール軍団がうんかの様にいる
○ グッドサンダー・指令部
サバラス「「真吾……急げ!」
○ 公園
真吾「了解!」
祭りのテントからシュミットが現れ、銃で撃つ
茂みに転がり込む真吾
真吾「キングアロー、GO!」
銃を構え、茂みに近づくシュミットの目の前からキングアローが飛び出す
シュミット「!!」
○ キングアロー・コクピット
真吾「シュミット、勝負は預けたぞ」
○ 広場
シュミット、ヒヤリと笑い駆け去る
○ ドクーガ基地
カットナル「なんたる事、これでは結局、ゴーショーグンを引き止められんではないか……」
ブンドル「まあ見ておれ、クライマックスはこれからだ。世界一の壊し屋の真価が見られるぞ」
○ 上空
宙を飛ぶキングアロー
突然、猛スピードでキングアローを追い抜いて行くスマートな物体がある
○ キングアロー・コクピット
真吾「何だ、あれは!」
ビジョンにシュミットが割り込む
シュミット「これが俺のブルーシャーク……一匹狼の壊し屋が生きて行くには、この程度のものが最低必要でな……。いくぞ真吾!」
○ 上空
キングアローに襲いかかるブルーシャーク
もつれる様に、切り裂く様に、自在に飛び攻撃しあう二機
○ ドクーガ基地
ブンドル「美しい。これぞ戦いの極地……」
○ グッドサンダーと戦うケルナグール軍団にキングアローとブルーシャークが闘いながら近づいて行く
○ グッドサンダー指令部
ファザー「キングアロー、接近中!」
サバラス「よし、ゴーショーグン、用意!」
キリー、レミー「了解!」
二人を乗せた座席が降りて行く
○ グッドサンダーからゴーショーグンが現れる
しかし、ブルーシャークの攻撃でキングアローはなかなか合身できない
○ ケルナグール母艦
ケルナグール「キングアローをゴーショーグンと合身させるな。攻撃開始……」
○ ケルナグール軍団、キングアローに襲いかかる
○ ドクーガ基地
ブンドル「馬鹿! 余計な事はするな」
○ ブルーシャーク・コクピット
シュミット「よせ! 真吾を倒すのはこの俺だ! くそ! 邪魔をするな!」
○ ブルーシャーク、ケルナグール軍団を落とす
そのすきに、ゴーショーグンに合身するキングアロー
○ ゴーショーグン・コクピット
真吾「ファイアーフラッシャー、GO!」
忽ち撃ち落とされるケルナグール軍団
ブルーシャーク、猛速でファイアーフラッシャーを回避する
○ ケルナグール母艦
ケルナグール「ブルーシャークめ……何をするか!」
ビジョンに以下が写る
シュミット「俺の邪魔をする奴は消す……」
ブンドル「ケルナグール、プロの美学を知らぬあさはかな奴。お前が余計な事をしなければ、ブルーシャークはキングアローを倒していたかもしれぬぞ」
ケルナグール「ムム、ケルーナ!」
おずおずと出て来るケルーナ
ケルナグール、ケルーナを叩く
ブンドル「おぞましい奴。だがブルーシャーク、これは失敗には違いない」
シュミット「どうせ成功しても俺を殺す気だろう。だが約束は果たす……。真吾、答えろここまで来て逃げる気か?」
○ ゴーショーグン・コクピット
真吾「やるよりなさそうだな……」
レミー「真吾、馬鹿な事はやめて……あなたが死んだらゴーショーグンはどうなるの」
真吾「男はけじめが必要だ」
キリー「日本人って奴は……! 俺あ、もう知らん」
○ ゴーショーグンからキングアローが飛び出して行く
○ 湖上
対峙するキングアローとブルーシャーク
その上に立つ、銃を持つ真吾とシュミット
シュミット「お互い、100キロのスピードですれ違い……すれ違いざまに五発撃つ。分かったな」
真吾「了解……」
シュミット「リリーの後を追わしてやる」
真吾「生きるも地獄、それもいいかもな」
○ ドクーガ基地
ブンドル「この私さえが赤面するキザな台詞……。こうまで言わせるリリーという娘は……」
声「リリー・レーンの調査結果が入りました」
ブンドル「なに?」
ビジョンにリリーの写真が映る
声「リリー・レーンの生まれ、年令、本名不明。ただ、不幸な境遇から八年前、父親の知れぬ子供を生み、北条真吾やシュミット・ヘンケンをはじめとして周りにはひたかくしにしていました」
カットナル「子供がいた? なんてこった。ではあの二人、その娘に騙されていたんだな」
ブンドル「いたましい……。子を持った若い娘が、あの二人の愛にすがろうとした気持ち、分かるような気がする……」
カットナル「しかし馬鹿な奴らだ。女に騙されているのも知らずに命を賭けているとはな」
ブンドル「言うな。人それぞれ愛のかたちはある……。それより二人の勝負を見つめよう」
○ 湖上
頷き合う真吾とシュミット
キングアローとブルーシャー走り出す
○ かたずを飲むレミー、キリー、OVA、ケン太、サバラス
銃を構える二人
すれ違う二機
真吾、撃つ! 五発!
シュミット、撃つ! 五発!
真吾の肩から血!
シュミット、銃を落としコクピットに倒れる
ブルーシャーク、そのまま崖に激突。大爆発を起こす
真吾、無言――
○ ドクーガ基地
ブンドル「終わった……悲劇は……幕をひけ……」
カットナル「しかし、一億ドルは惜しいのう……」
ブンドル「言うな。我々を悩ませたブルーシャークがいなくなっただけでもよしとせねばな……」
○ 墓地
老人(シュミットの変装)が花売り娘に話している
シュミットは生きていたのである
老人(シュミット)「あそこが、お前さんのお母さんが眠っている所さ。でもこれは内緒……。いいかい毎年、ビール祭りの頃になったら、あのお墓に一杯ユリの花を飾ってあげるんだよ」
娘「うん。でもおじいさん、ずーっといてくれるんでしょ」
老人(シュミット)「勿論さ。君が大人になる日までね」
老人、墓の前に来る
ユリの花が美しい……
老人、ポケットマイクを出す
老人(シュミット)「(シュミットの声)ドクーガからまきあげた一億ドルはあの子の為に必ず役立てる。それでいいね真吾」
○ グッドサンダー基地
真吾、ポケットマイクに
真吾「その子の為に君が作った芝居だ。リリーの子供はまかせるよ、シュミット」
○ 墓場
老人「(シュミットの声)もう会う事もないだろう……。さよなら」
老人(シュミット)、ポケットマイクを落とし踏む
○ グッドサンダー基地
真吾もポケットマイクを落とし踏む
真吾「そう、会わない方がいい……」
サバラスが来る
サバラス「真吾、出発だ」
真吾「了解!」
立ちあがる真吾
○ グッドサンダー、瞬間移動を開始する
〈完〉
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編集・著作:
スタジオ雄
協力:
スタイル
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