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COLUMN
第56回付録

魔法のプリンセス ミンキーモモ
第41話 お願いサンタクロース
仮題「サンタへの手紙」


脚本 首藤剛志

○ どこかの街・商店街
   クリスマスのイルミネーションに飾られた街
   小雪が降っている
   サンタクロースのぬいぐるみをつけた男が、いきかう人々にチラシを配っている
   ママとパパ、そしてモモがうきうきと買い物に歩いている
   モモ、ガラス張りの商店の中に飾られたモミの木のイルミネーションにみとれる
モモ「ワァ、きれい」
パパ「モモ、クリスマスのプレゼントは何がいい?」
モモ「クリスマスのプレゼント?」
パパ「うん、あれ」
   と、サンタクロースを指さす
モモ「ああ、サンタクロースのプレゼント? サンタクロースのプレゼントってクリスマスにするの?」
パパ「えっ?」
ママ「はあ……?」
モモ「そか、この街では、そーいうことになってんのか」
パパ「あれえ?」
ママ「ときどき、この子、変なことを云い出すのよね。クリスマスのプレゼント、当たり前でしょ」
モモ「ん? (ごまかして)うん、うん、当たり前」
パパ「で、なにがいいんだね」
モモ「プレゼントをパパにお願いしちゃ悪いわ。ちゃんとサンタクロースにお願いするから……うん……」
パパ「サンタクロースに?」
   パパとママ、困った顔でみつめ合う
   と、子供達の声がする
   三人の少年が云いあいをしながら来る
   ポールとジョンとオットーである
ポール「サンタクロースなんているものか」
   ン? となるモモ
ポール「サンタクロースなんているもんか」
ジョン「僕はいると思うな。だって毎年、プレゼントが届くもん」
ポール「あれは別の誰かがやっているのさ」
オットー「でも、僕、ずーっと昔に会ったことあるもん。僕が三つの時のクリスマスの夜にさ」

○ 回想・夜
   大きな屋敷である

○ 同・ベッド
   目を醒ますオットー
オットーの声「僕、夜中に目を醒まして、おトイレに行ったんだ」
   オットー、目をこすりながら廊下に出る
   廊下の電灯をつける
   と、白い袋を持った男がそろそろと廊下の窓から出ていこうとしている
オットー「おじさん……。何してるの……」
男(ルピン)「(後向きで)ん? ぼうや、ライトを消して……わたしの顔を見てはいけない……」
オットー「どうして……。あ、そうか、おじさん、サンタクロースなんだ」
男「サンタクロース……うん……まあ」
   オットー、電灯を消して
オットー「僕、おじさんの顔、見ないよ」
男「うん、いい子だ」
   男の持つライトがオットーの顔にあたる
男「この手袋を君にあげよう。毎年、クリスマスの夜に枕もとにおいておきなさい。素敵なプレゼントを、その手袋に入れておいてあげるからね」
オットー「ほんと?」
男「ウン……。ただし、この事は子供とサンタクロースの約束だ……大人に云ってはいけないよ」
オットー「うん」

○ 元の街路
   子供達――
ポール「うっそだーい。それ、きっと、ドロボーだよ」
オットー「違うよ。だって次の年から手袋にプレゼントがいつも入っているもん」
ジョン「僕んところは、靴下にだけど、毎年プレゼントが入っているもん」
ポール「だからそれは、他の誰かがやっているのさ」
   モモが口を出す
モモ「そんなことないわ、サンタクロースって本当にいるのよ。ねえ、パパ……ママ……」
パパ「ん? ん、まあ、そう、きっとそうだよ」
ポール「フン、大人なんか信じられないよ。よーし、よーし!」
   ポール、街角のサンタクロースに駆けていく
ポール「おじさん、おじさん」
おじさん「ん? なんだね」
ポール「おじさん、本当にサンタクロース? おじさん、本当に、僕らにプレゼントをくれる」
おじさん「ん? うん、困ったなあ……」
ジョン「よせよ。このおじさんは、お店の宣伝をしている普通のおじさんだよ、ねえ」
おじさん「ん? うん」
ポール「ほらみろ。サンタクロースなんていやしないんだ」
   おじさん、サンタクロースのヒゲをとり
おじさん「いや、わしは、確かに、お店の宣伝でビラ配りをしているものじゃ。……でも信じなさい。本物のサンタクロースは君のところにもやってくるからね」
   と云ってパパと笑い合う
パパ「うん、きっとね」
ポール「うそだ。よーし、それなら……これで確かめてやる」
   と、ポケットから、しわくちゃの手紙を出す
ポール「これ、サンタクロースへの手紙なんだ。プレゼントなんか欲しくないけど、サンタクロースが本当にいるのなら、せめて、せめて返事だけでも送ってくれる筈だろ」
ジョン「そういえば、そうだよね」
ポール「サンタクロースなんていないって証拠、みせてやる!」
   ポール、傍のポストに手紙を放り込む
モモ「ねえ、どうして、そんなにこだわっちゃうの? サンタクロース、いるに決まっているのに……」
ポール「いるもんか。だって、僕んち、一度だって、一度だってサンタクロースなんて来なかったもん。サンタなんているもんか……!」
   ダーッと走っていく
ママ「かわいそうに……」
パパ「ねえ、あの子、どこの子なんだい?」
オットー「ポールっていうんだ。パパとママに小さいとき死なれちゃって、今は知り合いの家に預けられているんだ」
おじさん「そうか。サンタクロースに不公平があっちゃいけないやな」
パパ「ほんとですね」
モモ「変だなあ……」
   と首をひねるモモ

○ ペットショップ・モモの部屋
   モモと三匹がいる
ピピル「ほんと変よね。その話が本当なら……」
モチャー「だいいち、サンタクロースがクリスマスイブにしか来ないなんて、誰が決めちゃったんだろう」
モモ「それに、プレゼントをもらえない子がいるなんて……。サンタクロースのおじさん、お仕事なまけているのかな?」
   と、シンドブックが悲鳴のような声をあげる
シンドブック「えええっ!!」
モモ「わっ! なに? どしたの?」
   シンドブックが百科事典を見ている
シンドブック「これがビックリせずにおられよか……。この百科事典によるとじゃなあ、サンタクロースは、セントニコルスというお坊さんが貧しい子供達にクリスマスプレゼントを贈ったのがはじまりだと書かれておるぞ」
モチャー「そんなアホな……。サンタクロースは十万年前から子供達にプレゼントを送っているフェナリナーサの戸別訪問サービス員の筈だよね」
シンドブック「少なくとも、わしらの知っているサンタクロースは、このサンタクロースではなさそうじゃな」
モチャー「どーして、こんなことになっちゃったんだろ」
モモ「こりゃ、サンタクロースのおじさんがどうなっちゃったのか、調べてみなきゃね」
ピピル「そーよね。それに、ポールっていう男の子の手紙、本当のサンタクロースのおじさんに届けてあげましょうよ」
モモ「そか……。そっちの話もあったわね」
ピピル「あら? そのつもりで調べるんじゃないの?」
モモ「ん、ウフ、だってわたしだってね、サンタのおじさんからプレゼントもらえないなんて、いやーじゃない」
   コケる三匹

○ どこかの街・郵便局の中
   郵便局員Aに、モモ達が聞いている
局員A「サンタクロースへの手紙?」
モモ「ええ、ポールって子が書いたんです」
局員A「探すのが大変なんだよね。だって、あれ、みんなサンタクロースへの手紙なんだよ」
   テーブルの上に山のような手紙
モモ「あれがみんな……」
局員A「ポールって子に云っておあげ。サンタクロースへの手紙は、責任持って届けてあげるからね」
モモ「でも……」
局員A「郵便局は手紙を届けるのが仕事だからね。まかしておおき。さ、こうやって袋に入れて……」
   手紙を郵便袋につめる
   そしてサンタクロースの顔のシールを貼る
局員A「サンタクロース行、郵便物と……ね」
   ニッコリと笑う

○ 郵便局の前
   モモたち出てくる
モモ「変だなあ……」
シンドブック「本当に変じゃなあ」
モチャー「なにがどうして変なの?」
モモ「あの手紙、本当に届くのかなあ」
モチャー「なぜ? 郵便屋さん、届けてくれるっていってたじゃん」
ピピル「おろかねえ……郵便屋さんが、サンタクロースの住所を知っていると思う?」
モチャー「あ、そか……」
シンドブック「(住所録を出して)わしの住所録によると、ま、千年前と同じ場所に住んでいるとしてじゃがね……」
   イメージ。氷山の中に、サンタクロースの工場が光っている
シンドブック「サンタクロースの秘密の工場は、人間のとても行けそうにない、北極の氷山の下の筈じゃよ」
ピピル「人間の郵便配達屋さんじゃ、無理かもね」
モモ「よーし、とことん追求、張り込んじゃお」

○ 郵便局・裏口
   物陰から顔を出すモモと三匹。なにやら張り込みの探偵風にサングラスをかけている
モモと三匹「ギロ、ジロ、ギラリ……」
ピピル「モモ、あれを……」
   郵便配達車が来る
   局員が、サンタクロースのシールのついた袋を車に載せる
   車、出ていく
   モモたち、グルメポッポに乗り込み
モモ「追跡あるのみ。グルメポッポ、テイクオフ!」
   グルメポッポ、車を追って浮上する

○ 配達車が、倉庫へ入っていく

○ グルメポッポ内部
モチャー「あれえ、変な倉庫へ入っていくわ」
ピピル「サンタのいる北極へ行くなら、飛行場か港にいく筈なのにね」
モモ「よーし、夜になったら忍び込んで様子をさぐっちゃお」

○ 倉庫の前、夜
   倉庫の中はこうこうと明かりがついている
   モモと三匹が来て
モモ「さあ、忍び込むわよ」
シンドブック「モモ、今回は何に変身じゃな?」
モモ「忍び込むなら泥棒が一番、なつかしの怪盗レッドキャットだもん」
   モモ呪文を唱える
   レッドキャットになるモモ
モモ「どうかね明智君……」
   モモ、ロープを倉庫の屋根に投げ、スルスルと登っていく

○ 倉庫の屋根(夜)
   モモ、天窓から倉庫の中へ忍び込む

○ 倉庫の中
   局員達がずらっと並んで机の前にすわり、クリスマスカードを書いている
局員A「サンタからよい子のみなさんへのお返事……(隣りの局員Bに)お前、何枚書いた」
局員B「これにて256枚目……。お前は?」
局員A「301枚……。サンタクロースの真似も楽じゃないよな」
局員B「いいってこと。この返事をもらった子供達の顔を思えばさ……」
   モモ、天井から、そんな局員達の姿を見降ろしている
モモ「そういうことか……。ファンシーだな、みんな……」
局員A「なになに? (手紙を読む)僕の名前はポール。サンタクロースさん、あなたは本当にいるんですか。僕はただの一度も、あなたからプレゼントをもらったことがありません」
モモ「ポールの手紙……」

○ 倉庫の外(夜)
   モモと三匹がいる
シンドブック「そうか、郵便局の人達がサンタクロースの代わりに返事を書いてくれているんじゃな」
ピピル「なんか、あったたかくなっちゃうわね……心が」
モモ「ええ、でも……。やっぱり、手紙は本当のサンタクロースが読むべきじゃない?」
モチャー「けど、誰が届けるんだい?」
モモ「決まっているじゃない。ミンキーモモ郵便局は地球のどこへでもお手紙をお届けします。モチャー、ピピル、シンドブック、手伝ってね」
三匹「了解……」

   ――CM――

○ 倉庫の中
   局員達、書き終えたクリスマスカードの山を整える
   局員A、のびをして
局員A「ああ、終わった……いよいよ明日はクリスマスイブだな」
局員B「忙しくなるよな」
   局員達、ゾロゾロと出ていく
   倉庫の電気が消える
   物陰からレッドキャットと泥棒姿の三匹が現れる
   机の上の手紙の山を袋に入れる
モモ「お手紙、盗むの悪いことかもしれないけれど」
ピピル「悪いと思わずやるしかないじゃん」
シンドブック「本当のあて先へ届けるんじゃからな」
モチャー「いいと信じてやっちゃうもん」
   手紙の袋を肩にかついで出ていく

○ グルメポッポの中
   手紙の山でうまっている
モモ「では、では、北極めざし、テイクオフ!」

○ グルメポッポ、飛んでいく
   やわらかい月の光がグルメポッポを照らしている

○ 北極(夜)
   上空を飛ぶグルメポッポ

○ グルメポッポの中
モモ「あたりはほとんど北極……。ねえ、サンタクロースの秘密工場って、どのあたり?」
シンドブック「月の光で虹色に光る氷山の中って、わしの住所録には書いてあるのう」
モチャー「あっ、あれ!」
ピピル「グレートにファンタステック!」
   虹色に輝く氷山がある
モモ「OK、あそこね」

○ グルメポッポ、降下していく

○ 氷山
   グルメポッポ、着陸する
   氷山に巨大な割れ目があり、洞穴のように奥へ広がっている
   モモと三匹、降りる
ピピル「なんか寒々したところね」
モモ「北極だもん、寒いの当然。いこ、いこ」
   と割れ目の中へ入っていく

○ 割れ目の中
   キラキラと氷の光るクリスタルのような世界
モモ「サンタクロースさん、サンタクロースさん」
   シーンと静まりかえっている
モモ「変ね、お留守かしら」
モチャー「あっ、あれ見て……」
   ほこりや、くもの巣にまみれた巨大な機械が横たわっている
モチャー「なんだろ、これ」
シンドブック「ほこりだらけじゃな」
   フーッとほこりをふく
   ブワーッとほこりが舞い上がり、咳き込むモモたち
ピピル「ちょっと、何か、書いてあるわ」
シンドブック「なになに? メイドイン・フェナリナーサ……」
一同「えーっ?」
シンドブック「フェナリナーサ製のメカじゃ」
   と、背後から老人の声がする
老人「そう。そのメカは、子供達へのプレゼントを作る機械じゃ」
   振り向くモモ達の前にボロボロの服(しかしそれは確かにサンタクロースの服である)を着た老人が立っている
モモ「おじいさんは……。あ、もしかして、もしかしなくても、サンタクロースのおじいさん?」
老人(サンタ)「いかにも、してからに、そういうお前は?」
モモ「ハーイ、ミンキーモモです」
サンタ「ミンキーモモ、ハテ、どこかで聞いたような……。もしかして、フェナリナーサ関係かえ……」
ピピル「もしかしてじゃなくて、もろ、フェナリナーサのプリンセスなのよ、モモは……」
サンタ「ほう、この子がなあ……」
モモ「らしくなくてごめんなさい」
サンタ「そうか、フェナリナーサは千年の眠りから目覚めたのか……」

○ フェナリナーサの城

○ 同・王の間
   ビジョンを見ている王様と王妃
王様「目覚めとる、目覚めとるダバ、とっくにお目々パッチリダバ。サンタのおっちゃん、わしにもプレゼント送ってダバさ」
王妃「なんです! 年がいもなく……。みっとも恥ずかしい。それにしても久し振りのサンタクロース、なんだか顔色が冴えませんねえ」
王様「ダバ?」

○ 氷の割れ目
   サンタクロースが、さびついたメカの前にたたずんでいる
サンタ「フェナリナーサが千年前、眠りについた後も、わしゃ起き続けて子供達にプレゼントを贈り続けてきた。思い出すのう、あの頃を……。子供達へのプレゼントを、この機械がフル回転して作りあげていたあの頃を……」
   さびついていたメカが光り、稼動し、フル回転して、プレゼントの包みを次々に送り出していく(回想)
サンタ「ところが、そんな日も長くは続かなかった。人々が夢や希望を失い始めると、地球から遠ざかっていったフェナリナーサと同じように、わしの機械のパワーも、おとろえていった」
   機械のパワーがおち、ネジやバネがとび、サビついていく
サンタ「今、動いているのは、わずかに、あそこの部分だけじゃ……」
   巨大な機械の片隅が、わずかに光っている
   コトン、コトンと小さなプレゼントが生み出されていく
モチャー「これっぽっち……」
ピピル「これじゃ、とても世界中の子供に行きわたらないわね」
サンタ「おまけに、いつの間にか誰かが、サンタのプレゼントは12月24日にしろと決めてしもた。一日で世界中はとてもまわりきれん」
シンドブック「せまい地球も考えようじゃ広い」
サンタ「夢や希望を信じない今の世では、もうすぐわしも失業じゃ」
モモ「そんなことはない! ない! ちっとも! だって、おじいさんのこと信じている子、いっぱいいるもん」
サンタ「ん?」
モモ「こっち、来て!」
   モモ、サンタの手をとる
モモ「早く!」
   モモ、サンタをひきずるようにして、グルメポッポのそばに来る
   グルメポッポの後部ドアを開ける
   ドーッとこぼれるサンタへの手紙
サンタ「こ、これは……」
モモ「これ、みんな、おじいさんへの手紙……」
サンタ「これがみんな」
モモ「みんな、おじいさんを信じてるの……」
サンタ「わしを信じている……」
モモ「どこかの街だけでこれだけあるんですもの、世界中だったら、もっと、もっと、一杯に決まってる」
サンタ「わしを信じている子がこんなに……」
モモ「ね、ね、だから頑張って!」
サンタ「ウウウ……。わしゃやるぞー! これだけの手紙、これだけの夢……。機械のパワーも戻るかもしれん」
   サンタ、機械によじのぼる
サンタ「さあ、よみがえれ、夢の機械」
   ガチャ、ガチャとメカを動かす
   機械から光がほとばしり、手紙の山をすいあげる
サンタ「世界中のワシへの手紙よ、ここに集まれ」
   光の渦、氷山の頂上からほとばしり

○ 光、地球をまわる
   光にさそわれるように、世界中のサンタへの手紙が浮かびあがり、北極へとんでいく
   中には日本人の手紙もある

○ 機械にすい込まれる手紙
   次の瞬間、機械は光の渦に包まれ、もとのパワーあふれるメカに戻り、プレゼントを作り始める
一同「やった!」
   トナカイのソリに乗ったピッカピカの服を着たサンタが次々に分身する
サンタ「パワー全開、これだけいても、世界中の子供に届けられんだろうが、やるだけやるんじゃ」
シンドブック「サンタパワー、分身の術じゃな!」
サンタ「さあ行くぞ! 子供達へのプレゼント……。ハイヨー、トナカイ!」
   ダダーッと飛び出していく
ピピル「サンタの復活……」
モチャー「すごい」
モモ「さ、私達も手伝いましょ」
一同「えーっ?」
モモ「だって、プレゼント受けとれない子、いっぱいいるもん。せめて私の街のどこかの街ぐらい手伝っちゃお」
シンドブック「こんどはサンタクロースに変身じゃな」
モモ「うん。アダルトタッチで……あん?」
   イメージ、ヒゲをつけたモモのサンタ
モモ「やーめた」
   コケる三匹
シンドブック「どしてまた……」
モモ「だって、おひげをつけたおじいちゃんでしょ。女の子むきじゃないもん」
   と、ウインク

○ 飛ぶグルメポッポ(夜)
モモのN「そして、どこかの街にクリスマス・イブの夜が来ました」

○ 同・中(夜)
   レッドキャットのモモと三匹
シンドブック「で、もって、なんで怪盗レッドキャットに変身なんじゃ……?」
モモ「だって、サンタのおじさんも、泥棒も、おうちにこっそり入るのは同じでしょ」
モチャー「なんだか変だなあ」
モモ「これでいいのだ……。さて、まずは……。昔、サンタクロースを見たっていう例の子の家だわ」

○ オットーの家の上空(夜)
   グルメポッポから、はしごが降りて、プレゼントを持ったレッドキャットが降りてくる

○ オットー家の廊下
   忍び込んで来るレッドキャット
   と、その肩をつかむ手
   ハッと振りかえるレッドキャット
   サンタクロースが立っている
モモ「サンタクロース!」
サンタ(実はルピン)「まだ盗みをしているのか? レッドキャット」
モモ「(身がまえる)えっ? 私の名前を知っている、お前は」
サンタ「見忘れたか、この私を」
   サッとサンタの服を脱ぐとルピンが立っている
モモ「怪盗ルピン! あなたこそ、まだ盗みを……」
ルピン「盗みはやめた……。ただ、昔、この家に忍び込んだとき、この家の子にサンタクロースに間違えられ、プレゼントの約束をしてしまったのだ」
モモ「じゃあ、この家の子が見たサンタというのは、あなたなのね」
ルピン「うむ、子供との約束は守らねばならぬ」
モモ「ルピン……。実は私も……」
   と、プレゼントを出す
ルピン「ん?」
   その時、
   「誰? 誰なの」
   オットーの声がする
   ルピン、サッとサンタに変身
   電灯がつく
   オットーが立っている
オットー「あっ、サンタのおじさん。僕、おじさんを待っていたんだ。あれ、その人は……?」
モモ「え、あの、サンタレディなんちゃって……。はい、プレゼント」
オットー「ありがとう。でも僕、今年はいらない」
ルピン「ん? どうしてかね」
オットー「僕の代わりにプレゼントしてほしい子がいるんだ。まだ一度もプレゼントもらったことないんだ。お願い! その子にあげて……ね」
ルピン「その子の名は?」
オットー「ポール」
モモ「サンタに手紙を出した子ね」
ルピン「えっ?」
モモ「いえいえ、こちらのこと……」

○ 古びた家の前(夜)
   サンタの格好をしたルピンとモモ(キャット)が来る
ルピン「この家の子か……」
モモ「ええ、でも、ここの子には私がプレゼントするわ」
ルピン「いや、たのまれたのは、この私だ」
   と、裏口から出て来た男とぶつかる
ルピン「ん? 何者!」
   サンタである(宣伝マン)
モモ「サンタのおじさん?」
   と、頭上から雪とともに落ちてきて、目の前で倒れる男。これもサンタである
パパサンタ「あたたた!」
ルピン「サンタクロース?」
   と、自転車に乗ったサンタクロースが目の前を通りすぎていく
   呆然となる一同
   サンタクロース、自転車から降り、クリスマスカードとプレゼントをおき、ふと、呆然となって立っている一同を見て、ギョッとなる
モモ「サンタが四人……」
   と、屋根の上から声がする
   本物のサンタである
サンタ「なにをしとるのかね、仲間達。この家の子のプレゼントはもう終わったぞい。プレゼントを貰えない子は多い。他へまわりんしゃい。では、さらば」
   サンタ、ポーンと飛び降りる
   家の角からトナカイのソリに乗ったサンタが、一同の目の前を通りすぎる
   やがて、ソリは宙に浮かびあがる
   呆然の一同
宣伝員サンタ「こんな……」
   ひげをとる
モモ「ビラ配りのおじさん……」
局員Aサンタ「信じられない」
   ひげをとる
モモ「郵便屋さん……」
パパサンタ「しかし、みなさん、どうして」
   ひげをとる
モモ「パパ……(と云って口をおさえる)」
宣伝員サンタ「いえ、この家の子が、まだ一度もプレゼントをもらったことがないと聞いたものでね」
パパ「実は私も」
   郵便局員もうなずく
局員A「でも、本当にいたんですね、サンタクロース」
ルピン「サンタクロースは何人いても、いいもんです」
宣伝員サンタ「本当、お互いに……」
パパ「そういえば、子供のころ私もサンタを見たおぼえがあるような……」
モモ「今日、おくりもののない子も一年に一回は、どこかでサンタのおくりものを受けるはずだわ」
   一同、頷き空を見上げる
   突っ走るサンタのソリ

○ モモのペンダントが光る

○ 王宮の王冠にトルコ石が入る
王様「やっタバ、やっタバ、12月の誕生石、トルコ石ダバ」
王妃「意味は成功のしるし……」
王様「ということは、フェナリナーサは、地球に戻れるちゅう予言ダバ?」
王妃「さあ。でも、きっとこの宝石は、モモとサンタクロースが贈ってくれた、すてきなプレゼントなのかも知れません」
王様「ダバナァー!」

○ 夜空を光の粉をまき散らしながら、トナカイに乗ったサンタクロースが飛んでいく
サンタ「わしは贈りつづける。一年中、世界中の子供たちに……。わしのおくりものはクリスマスだけではない……」

   ーーつづくーー

 
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編集・著作:スタジオ雄  協力: スタイル
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