色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]

第108回 昔々……(65) 女の子の服の色考えるのは大好きです!劇場版『セーラームーンR』

今週の月曜〜火曜で、またしても京都へ行って参りました(そのせいで火曜日、原稿落としました(汗))。某新作の気持ちの準備のため、自腹ロケハン。ま、前回のも似たようなモノでしたが(笑)。今回は監督から本編用の映像素材の撮影も頼まれまして、慣れぬムービーカメラ担いで格闘してまいりました。

今回は泊まりがけだったので、いろいろ京都の美味しいものも堪能してまいりましたよ。いやはや、美味しいです、京都(笑)。

先だっても書きましたが、京都って修学旅行で2回も行ってるわりに、考えたらろくなモノ食べてなかったなあ、とか思うんですね。基本食事は宿に戻ってから学年みんなでいっせいに宿のごはん。一応京都のものも食卓に並んでたんだろうけど、肉に飢えたガキの集団でしたから、なんかを味わって食べるなんてコトより、まずは量! だったような。

2泊で夕飯2食、そのうち1食はすきやきですから。もうね、当時は肉のことばっかり考えてた気が。高校の時の修学旅行なんか、女子が「太るから〜」とか言って食べないで残した肉を集めてきては自分らの鍋で食べてましたね。あるグループなんか、自由行動時に肉屋さんに寄って自分らで勝手に追加の牛肉買ってきてたり(笑)。

それから30数年経って、ようやくオトナな感じで京都の食を堪能できる、そんな歳になったのですな。

で、その「新作」、いよいよ情報公開となりました。『四畳半神話大系』、乞うご期待であります!

そして「海賊映画」こと『Strong World ONEPIECE FILM』がいよいよ明日、全国公開であります! 皆さん、お待たせいたしました! ……って、初日2日目全日全席完売とか、なんか大変なコトになってるようですが(汗)。みなさん頑張って観にいってくださいね!

さてさて。

『劇場版セーラームーンR』のお話の続きです。

原画が僕のところへ廻ってくる少し前くらいに、登場キャラクターの色味の決め込みをしました。いつもの作品のように、僕の方で預かったキャラクターを色見本セルにして、メインスタッフみんなでチェック、意見を出し合って決め込んでいきます。

今回は、監督の幾原氏をはじめ、助監督の五十嵐氏、美術の谷口淳一氏、そして僕と、比較的年齢の近い面々が集まってました。あ、プロデューサーの東氏も僕と同い年でしたね。そんな面々が集まって色見本をチェック。確かこの時、作画監督の只野さんはいらしてなかったんじゃないかなあ? 僕らである程度決め込んだモノをあとから見ていただいて、それでOKもらったように記憶してます。……が、あれ? 違ったかなあ?(←この辺、記憶がとっても曖昧(汗))

つい少し前まで『Coo 遠い海から来たクー』っていう大きな劇場作品をやってた僕ですが、TVシリーズの、しかもヒットしてる作品の映画化なんて、ずいぶん久しぶりのこと。そうそう『聖闘士星矢 真紅の少年伝説』以来でしょうか? なので多少、力が入ります(笑)。

とにかくヒットしちゃってるTVシリーズが元なので、当然観に来てくれるお客さんはTV観てくれてる方たちですね。しかも1本目の映画化なので「1本目制約」ってのとかもあって、基本の色はTVと大きく色を変えるということはしませんでした。あ、これは前にも書きましたね。

当時、結構コントラストがキツイ作品が多く、しかも流行ってたんですよね。実際、影を強めにしめた方が劇場のスクリーンに映す時に画面映えがするのです。でも正直、きつくなっちゃうのがあんまり好きじゃなかったのですね、僕が。

そりゃ戦闘シーンとかはバシッ! とカッコよく決めた方がいいし、光源がハッキリしてるシーンや、イメージを印象的に強く残したいシーンでは、かなり強めのコントラストで画面を作っていますが、それ以外のシーンでは、やはり柔らかい感じの方がいいかな、と考えたのです。確か監督ともそのことでいろいろ話合って、説得(?)したような気がします(笑)。

なので、多少、ホンのちょっとだけ、メインのコスチューム(セーラー戦士)の影色をいじってます。そのかわり、私服で登場する普通のホンワカしたシーンは、基本TVと変わらないバランスにしたのでした。

で、この私服。これが楽しいんですよ、色考えるの。そもそも『聖闘士星矢』ではセイントの色はいろいろ作ったけど、女の子なんか着た切り雀の沙織さんくらいだったし、ついこの直前までやってた劇場作品は、短パンにTシャツで海辺走ってるようなのだったし(笑)。いま流行ってそうな華やかでちょっとリアルな女の子たちの服装の配色は、もう楽しくって楽しくって嬉しいお仕事でありました(笑)。

それぞれのキャラの私服の設定に、それぞれの性格とか考えながら、硬軟2種類くらいの組み合わせセットを作って見てもらったと思います。少しの手直しが入ったくらいで、なかなかすんなりOKが出ました。

敵キャラのフィオレは、幾原監督にシッカリとイメージができていまして、なのでわりと監督の意向に沿った形で最初の色味を作って見せた記憶があります。あれ? 先に元ネタになった話がTVであったんだっけ? それとも、こっちを元にTVでやったんだっけ?(←この辺も、記憶がとっても曖昧(汗))

ちなみに「1本目制約」ってのはTVシリーズ作品を映画化する際の東映的お約束で、例えば最初の映画化の時はTVシリーズのオープニングをそのまま使うようにとか、そんな不文律な「キマリ」がいくつもあったのでした。最近はあんまりそういうこと言われなくなっていますが。っていうか、近年「まんがまつり」がなくなっちゃったので、TV作品の映画化自体が減ってますしね。

でも『劇場版セーラームーンR』では、TV版のオープニング、使ってないのですね。オープニング主題歌は使いましたが、そのバックは劇場本編の映像でありました。このあたりは幾原監督が譲らなかったのだと思います(←これも記憶が曖昧)。

■第109回へ続く

(09.12.11)