第130回 昔々……74 1994年その8 劇場版『セーラームーンS』の憂鬱
最近、再び朝型生活に戻りました。
夜は早めに寝て、朝4時くらいから始動。いま、自分で色彩設計から色指定・仕上げ検査まで担当してるお仕事があって、起きて即仕事部屋に入ってセル検査開始。制作進行さんが作画監督の上がりを回収するのが毎朝7時頃になってて、その足で僕の自宅に寄ってくれるのが朝9時前。そこで仕上げ検査済みを手渡して、代わりに動画上がりを受け取って即色指定。で、それをそのまま持ち帰ってもらって、朝10時から仕上げさんに渡して彩色作業。で、その上がりをまた翌朝持ってきてもらう、って流れの生活中です。
で、だいたい午前中はそんな感じで自宅作業。午後からは打ち合わせに外出したり、あるいはちょっとお昼寝したり、と。なかなか健康的な生活であります。
そういえば、小中高の学生さんたちは、ちょうど夏休みに入られたところですね。僕はなかなか早起きが苦手な子供でしたが、いま思えば、ちゃんと早起きできてたら、もっといろいろできたのになあ、と。4時とは言わないけど、朝5時くらいから起きて行動してると、いやホント、1日が実に長く使えるんですよね。もう5時前にはフツウに明るいしね。
欧米のように「夏時間」導入を、とかは言いませんが、夏こそ早起きがオススメです。
さてさて。
僕の1994年下半期の2本のお仕事のうちのまず1本目は劇場版『美少女戦士セーラームーンS』でありました。監督:芝田浩樹、作画監督:香川久、美術監督:窪田忠雄。僕にとって2作目の『セーラームーン』劇場作品です。
猫のルナが自分を助けてくれた人間の男性に恋しちゃう。そこへ45億年ぶりに地球に接近してきた彗星と共に現れた雪と氷の女王プリンセス・スノー・カグヤが地球侵略に襲ってくる。その彗星をいち早く見つけたのが、ルナが恋した男性で……というお話。
今回のお話、実は原作者の武内直子氏の書き下ろし。「映画のために!」と書き下ろされたエピソードで、映画公開に合わせておんなじお話を描いたモノを連載誌上に掲載する、という企画つきであります。
前に書きましたが、ちょうど前年のほぼ同じ時期に幾原君監督の劇場版『セーラームーンR』に参加してました。とにかく時間がなくって、何が何でもまにあわせて作らなきゃならなくって、それでもすごく集中して楽しく作れた劇場版でありました。
で、それから1年。この間、表だっては『セーラームーン』には関わっていなかった僕なのですが、今だから明かしちゃいますが、実は密かに「新キャラ」たちのカラーデザインに参加しておりました。ウラヌスやネプチューンたちの色味、とりわけチェック柄の制服姿とかは僕が出した色でした。当時のCDだった幾原くんやキャラデの伊藤郁子さんと3人で、夜、密かに大泉スタジオの彩色の部屋でセル塗って、色見本作って決め込みやってたのであります。
あ、ちなみにヴァージョンアップしちゃったセーラームーンについては、あれ、ぼくじゃないです。たしかあらかじめ決められてたような。講談社編集部からかバンダイからかな? 「これで!」ってデザインが来てましたね。
で、今作。う〜む、前作に比べて確かにスケジュール、とりあえず作業インは早かったですが、いろいろと面倒な状況があって、なかなか前に進まなかったような記憶が。 何が気に入らなかったんだか、もはやわかんなくなっちゃってるんですが、当時僕はこのお話がどうにも気に入らなかったんですよね。なんだろう? いかにも「少女漫画的」な設定とか、たぶんそんなのが気に入らなかったんだろう、と。「個人であんなデッカイ天文台にしかも自宅として住んでるのはおかしいだろ」とか「あんな市街地に天文台は造らんだろ」とか。そんなところから始まって(笑)。ルナの悲恋は最初っからわかってるんだけど、それにしても、もうちょっとなんとかならんかったのか? とか(笑)。 一応、原作者が「これで!」って出してきたお話なので、僕らアニメーション側も勝手にいろいろ設定とか変えるわけにもいきません。で、当然、いろいろ原作者チェックも入るワケで、監督も作画監督もいろいろ大変だったようでした。 公開は12月第1週。そのためには11月半ばには完成させなくてはなりません。雪や氷の舞う真冬のお話の作業がいよいよ本格的になっていくのは、残暑まっただ中、8月の終わりのことでありました。
第131回へつづく
(10.07.21)